2012年6月8日金曜日

地方自治体職員の身分

地方自治体の職員の多くは、どんな部署でも対応できるゼネラリストだと一般的に考えられている。

しかし、実際には博物館の学芸員から林業試験場や水産試験場の職員まで、研究職として採用され、活躍されている人が少なくない。給与体系も独自のものが用意されている。

では、こうした身分的に明確に規定されている職員以外の職員(つまり一般事務吏員)に専門性は無いかと問われれば、その答えは半分が正解で、残り半分は不正解である。

前者の「正解」とする理由は、辞令一つでどんな部署にも配属され、結果的に広く浅く業務を担当することにある。

一方、後者の「不正解」とする理由は、一見関連のない部署間で人事異動が行われているようで、実際には類似した知識や経験、技術が応用できる部署間での異動が少なくないことにある。

例えば、農業政策としての土地改良事業担当部署と都市政策としての区画整理事業担当部署との間での人事交流がそれである。それぞれを規定する法律は異なるし、対象が農地なのか、宅地なのかといった本質的な違いはあるものの、業務上ではノウハウや発想を応用することが可能である。

では、文化行政関連の部署の場合はどうか。
文化ホールの場合、自治体から出向した職員が文化行政に対する理解が無かったり、それまでの行政経験から行政の論理を文化ホール経営に当てはめようとしたりして、職場から浮き上がってしまい、結果としてその職員自身が文化行政の阻害要因になってしまうという笑えない話も耳にする。背景として、行政経験と文化ホールでの業務内容に互換性が無いということが度々指摘される。

ここで必ず出てくる議論が、文化行政の担当職員育成論(もしくは採用論)である。これはこれで問題への直接的な対処方法としては確かに間違っていない。

しかし、文化ホールが多面的な業務の総体であることを考えるならば、多様な出自を持つ行政職員が文化ホールの業務に関わることは、必ずしも文化政策上のマイナス要因とはならないはずだ。重要なことは、その職員の専門性と携わる業務内容との適合性の見極めであろう。業務内容の互換性で問題をかたづける前に、立ち止まって見る必要がある。

ただし、文化行政に限らず、自治体職員の人事異動は、ミスマッチがとかく多いのだが…。

(ま)


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