2014年7月31日木曜日

今晩成田を発つ前に

香港の演劇について書くと言いながらすっかり時間が過ぎてしまいましたが、これからはワルシャワで頭がいっぱいになると思うので忘れないうちに投稿です。

6月下旬から7月中旬までの三週間強で観た作品は6つ(東京でも行われている、ロンドンNational Theatre Liveの映画館上映を含めると7つ)でした。ここでは券購入に関して書きます。
日本ではネットあるいは電話でチケットを予約して、コンビニなり劇場なりで受け取るのが一般的です。短い滞在期間で知る限り、香港でもURBTIXと呼ばれるインターネットサービスで予約しますが、受け取りは郵送のようです(実際にはもっと選択肢があるのでしょうが、少なくともコンビニ受け取りはできません)。そこで香港市内に点在する直接購入可の窓口に行きました。


 その中の一つ、Jockey Club Creative Arts Centreは庶民的な区域の一角にあります。初めて訪れた夕暮れ時には隣接する運動場で多数のおじちゃんが新聞を広げ、果たしてここが目的地なのかと一瞬不安に。中に入れば八階建ての吹き抜けがあり、子どもたちによる工作が並べられていました。涼しいのでここでも近所のおじいちゃん・おばあちゃんがくつろいでいます。
ここは社宅を改装した建物で100を超えるアーティストや団体が作品制作に利用しているようです。エレベーターホールに多くの教室案内が貼られ、市民にとっては公民館といったところでしょうか。
別の日に行った際にはアートセラピーにまつわる展覧会が開かれ、パブリックアートや患者の手による作品を見ることができました。
現地デザイナーによるお土産店やカフェもあります。スコーンやサンドイッチを提供するカフェと中国茶の喫茶室が向かい合っていたのが象徴的でした。

ここにはさらにBlack Box Theatreという小劇場があり、残念ながら私は予定が合わずここでの観劇はしていませんが、香港の大学に勤めている知人によると、この劇場にはしょっちゅう足を運ぶとのこと。実験的な作品を上演しながらも、やはり地元との交流を大事にしているようです。過去には『走れメロス』公演も行われたそうです(私も福岡から招聘された劇団の公演案内を目にしました)。

最後にお値段に関して。海外の学生であれ学割が適応されるのでほとんどの作品が正規の半額、100HKD1300円)ほどで観劇できます。とはいえ正規の値段からして3000円以下と日本に比べればお手頃です。これは美術館料金でも感じたことで、香港芸術館香港歴史博物館は見どころが多いにもかかわらず、どちらも300円以下で入場できました。さすがは英国と縁の深い場所。

(N.N.)

夏休み8000字の課題

文化資源学M1に課される8000字の課題、まだ書き始めていませんが、苦しんでいます(笑)
関心を持っていることはあるのですが、それを自分がうまく扱えるのか、それを取り上げて研究になるのか、さっぱり分かっていません。

文化資源学に進学してから、私の意識の内に顕在化し、引っ掛かっていることがあります。
それは「言葉の侵略性」ということです。
響きは無駄にかっこよさげですが、たとえばこういうことです。

・私自身、上京してから標準語に染まってしまった。心を許せる(私が標準語で話すからって、心を許せないわけではないですからね笑)人には山口弁で話せるけれど、普通は頼まれたって話さない。地元の友人や家族と、東京の公の場で方言丸出しで会話するのは恥ずかしく感じる時すらある。標準語が私自身の語り方の自由を侵略している。被害妄想?
・上記と類似するが、やはり言葉の権力関係。私は中高6年間、地元山口県からお隣の広島県に通学していた。個人的には、山口弁と広島弁はかなり違う。学校では広島弁で友達と話す。それはよいとして、自宅でも、山口弁を話す両親に対して敢えて広島弁で応答する。そうした場面における私の心境は、(思春期ということも多分に影響したはずだが)間違いなく誇らしいものであったし、広島弁のほうが上位であると感じていた。言葉の隠れた(あるいは明瞭な)権力構造への問題意識。
・主に民放バラエティ番組に関して、外国人の発言に対して為される吹き替えの声色選択に、少なからぬ民族イメージの反映が感じられる。例としては、英国紳士の発言にあてられるのは低く落ち着いた男性の声である一方で、東南アジアの同年代の男性の発言には多少品のない印象を喚起する声があてられる、など。そのことの是非はともかくとして、マスメディアによる吹き替え音声の声色選択が、視聴者の話者集団に対するイメージを誘導するものとなりうることは間違いないだろう。私は常々この気持ち悪さに違和感を感じていた。放送の中立性を確保することの限界という論点。
もちろん声色だけではない。私の引っ掛かっていることを拡張すれば、語彙の選択(性別の違いだけでなく、職業的な違いや、社会的地位の違いを反映した選択)もその話者が属する集団に対するイメージを反映するものであり、かつ視聴者の聞き方を一定方向に差し向ける危険性を孕む。
・日本が戦時中、韓国などに対して行った日本語教育。言葉の侵略そのもの。

以上、非常に漠然としていますが、私が「なんだかなぁ」と思っている事柄です。
言語政策に関心を持っているといっても、行政レベルの施策というより、もっと偏在する個人レベルの言語政策に注目しています。
特にやってみたいと思っているのは上の箇条書きの3つめ「吹き替え音声の声色選択」です。
ただ、どのテレビ局のどの時期のどの番組を調査するか、ということもベストな選択をできていません。
さらに、研究を通して明らかにしたいことも、ある程度私の中に存在しているような気はするのですが、ぼんやりとして見つけられていません。
吹き替えにおける語彙や接尾辞について、古巣のやり方ではなく、文化資源学的なアプローチは取れないものかと思案しております。

上に書いたこととはまた異なりますが、「公共文化施設への評価制度」も、院試の際にぶち当たった問題とつながり、関心を持っています。
私の文章を読んでくださった方からのアドバイスや叱咤激励などいただければと思います。

2014年7月29日火曜日

イベントのご案内:「コミュニティ・ワークショップ:第3回 多文化アートプラットフォーム」

「コミュニティ・ワークショップ:第3回 多文化アートプラットフォーム」が8月9日に、小金井アートスポットシャトー2Fで開催されます。
先日、6月8日に開催された第2回では、「多文化とメディア」の問題に焦点を当て、参加者が意見を交わしたそうです。
第3回のテーマは、「多文化・メディアの構想」です。講師であるアーティストのリュウ・ルーシャンさんによるアート活動家TOBI AYEDADJOUさんへのインタビュー(Skype)が予定され、参加者同士の意見交換や情報共有だけではなく、メディアの持つ可能性について考えていく機会になると思います。

ご興味のある方は、下記リンクにて詳細をご確認いただき、申し込みください。

〔詳細〕
コミュニティ・ワークショップ:第3回 多文化アートプラットフォーム
日時:2014年8月9日(土)14時~18時
場所:小金井アートスポットシャトー2F
   〒184-0004 小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2階


(tantaka)

2014年7月28日月曜日

光の国からぼくらのために、

来たぞわれらの須賀川市!
という勢いで早朝飛び乗った高速バスで現地調査に行ってまいりました。
pugrinです。

アイフォーンからPCへ写真を移動することが現状出来ないため、
写真なしでお送りいたします、すみません。

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わたしの修士論文の事例に選んだ福島県須賀川市は
「特撮の神様」円谷英二氏の出生地で、
福島空港を擁し郡山市と白河市の間にある、人口7万人の都市です。

主要産業は農業(きゅうり、モモ、梨、リンゴ)で
東日本大震災の時には内陸部の中では比較的大きな被害を受けました。

そんな須賀川市は2013年からウルトラマンの出身である「M78星雲 光の国」と
姉妹提携をしているのです。

どのようにしてそんな新しい企画が行政を巻き込んで進行しているのか、
そのあたりを是非現地の方々に伺いたく、突撃してまいりました。

まずわかったことは、以下の3つです。
・誰一人「ウルトラマン」のマニアではないこと
・まだまだイメージアップ戦略(ウルトラマン活用プロジェクトの名前)は道半ばであること
・お会いした人々が全員とにかく前向きであること

駅前にウルトラマンのモニュメントが立っているとはいえ、
バス亭は駅から遠い場所にあるので「ウルトラマン」色はほとんど無く、
空港も大々的に飾り付けられているものの
そこから須賀川市街地に出るにはタクシーで4000円ほどかかり、
その市街地と駅前は車でさらに10分ほどかかる場所にある、という状態です。
(駅は昔、機関車時代に作られたものだったため、
すすけるのを恐れて商店が発達せずに住宅地になったようです)

ただし、市街地を歩くと、路の脇に並んでいる電源ボックスに
一つ一つ異なる怪獣のシルエットが描かれていたり、
朝夕にはウルトラマンのテーマ曲が防災無線で流れてきたりします。

イメージアップ戦略の開始から1年ちょっと、まだ外から来る人にとっては、
観光目的とすれば物足りないと思われるでしょう。

しかし円谷英二が歩いたであろう釈迦堂川の川べりや、
見上げたであろう空の景色を感じられたのは非常に素晴らしい体験で、
お話を聞いた方々は皆さん、偉人「円谷英二」と
その人の生んだ「特撮」のキャラクターをきっかけにして
「須賀川」という歴史ある場所を感じ取ってほしい(それは市民も外の人も)
という情熱にあふれていました。
これからもっともっとやっていくから!と皆さん意気込んでいたところが
一過性の企画ではなく、「イメージアップ戦略」として肝の据わっている証拠でしょう。

特にシュワッちの代表である山田さんは、すでに約20年間
ヒーローショーを誘致する活動をしてきていますが、
ここからがスタートだとおっしゃっていました。

須賀川上野郵便局の渡辺さんは、風景印の発行のために
通常業務以上の業務をこなしていたことを、おおらかな笑顔で語ってくださいました。


懐かしい田舎の景色と、震災のために舗装し直されたであろう
新しく白い道路の延びる市街地のコントラストを見て、
「これまでだ」ではなく「これからだ」と切り替えて走り出した須賀川市が
とても好きになりました。
「馬の背」と言われるほど起伏の多い土地柄ですが、
レンタサイクルで登りきった坂を駆け下りていくのは、
周囲に人がいないことも相まって本当に爽快です。

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細かな点やデータについては、台湾のゼミ合宿で発表する予定ですが、
これからどう料理していこうかと、元気をもらえる調査旅行でした!

ここから私は一度富山県に帰り、さらに東京にもどってから8月1日から大町市に入ります。
富山から大町に抜けるルートでは観光時間のためみなさんと行動を共にできなくなるので・・・

やっと来た夏本番、ますます頑張りたいと思います^^

2014年7月15日火曜日

内モンゴル自治区移動文化芸術団体――「ウランムチラ」


ブログへの投稿になぜか積極的になれないBSです。

去年一昨年と比べて国際進出が多い今年のゼミ活動では、台湾での夏合宿、ドイツでの学会、おまけに来年の合宿まで韓国になりそうだということです。素直に楽しみにしたいのですが、なぜか複雑な心境です。

私は何より、夏合宿が自国で行われるゼミの留学生がうらやましくてたまらないです。合宿を通じて研究室の皆さんに自国の文化や文化政策を紹介できれば、現場の課題についても一緒に議論できる貴重な機会になると思います。

ということで、いつか来る内モンゴル合宿を期待して事前準備?アピール?として内モンゴル文化、文化施設、文化政策について紹介したいと思います。初回は50年代の中国の文化政策によって作られた、内モンゴルの芸術文化団体――「ウランムチラ」(Olaan-Muchir)を紹介します。


 


ウランムチラという言葉はモンゴル語で「赤いつぼみ、紅い小枝」という意味で、中国語で「乌兰牧骑」(ウランムチ)と音訳されています。その意味は、中国語で「紅い文化活動団体」と訳されてもいます。「ウランムチラ」は一つの団体の名称ではなく、内モンゴル各地のすべての移動芸術団体の総称です。                   

1957年、内モンゴル自治区のスニト右旗で、最初の「ウランムチラ」は4つの楽器と9名の構成員と一台の馬車の上で誕生しました。総合的な移動文化活動団体として牧地で文化活動を展開する目的で作られました。「ウランムチラ」の特徴は、ある特定の文化施設を拠点に活動するのではなく、内モンゴルの草原、牧地、半農半牧地を中心に活動する移動的な芸術団体だという点です。当時の主な移動手段は遊牧民と同じく馬車でした。

             (第四回ウランムチラ文化祭会場


  ウランムチラは、中央政府の指針、思想、政策の伝達、教育普及のための重要な機関としての役割を果たしてきました。当時マスメディアがまだ発達しておらず、中国語が普及していない、中央政府から遠く離れた地域で、「ウランムチラ」は現地の言語で現地の芸術表現(演劇、歌、舞踊)を通じて各時代の政府の指針、思想、政策を伝達してきました。中国では文化政策実施の成功例として評価されています。             

当然のことながら、ウランムチラは文化芸術団体としても活躍しています。多様な芸術創作活動、現地のアーティストの教育・育成の機関としての役割も果たし、モンゴル文化の伝承・発展には欠かせない重要な機関だと考えられます。ウランムチラの多くは中小規模で総合的な芸術団体です。多様な演目を持ち、演劇、舞踊、歌謡、演奏、演説等を行っています。その構成員の多くは現地の遊牧民、若者であり、一人のアーティストが幾つかの芸を担当していることが多くあります。

1992年、ウランムチラの誕生35周年を祝い、内モンゴル自治区の首府、呼和浩特市(フフホト)で自治区各地から24のウランムチラが集まり、第1回ウランムチラ文化祭が開催されました。1997年に第2回目、2005年に第3回目を行い、以降は2年に一度開催されるようになりました。今年は8月下旬に第6回目のウランムチラ文化祭が開催される予定です。

 

 

2014年7月14日月曜日

オランダに行きたい

開催地ブラジルを制しワールドカップ第4位に輝いた国、オランダ。
今までどうしても苦手意識を持っていましたが、
その戦況が文化を反映したものかもね、というゼミでの会話に惹かれて
少しだけサッカーに興味を持ち始めました、pugrinです。

さてそのオランダですが、
ゼミで読んでいる"Balancing act :twenty-one strategic dilemmas in cultural policy"
にたびたび登場しています。

文化政策の決定に市民はどのように関わるか(5章)、
また文化の問題について政府はどこまで介入するか(6章)において
オランダは0か100かではない、折衷的な方策をとっているということでした。

そもそもオランダといえば、ぼんやりと知っている限りでも
大麻が許容され、同性婚ができ、安楽死すら認められている国です。
アムステルダムではそうとうハードな性愛博物館が観光名所になっています。

風車と木靴とチューリップのような、ほんわかとしたイメージからは
かけ離れたどぎつい印象すら受けますが、
オランダ大使館の「国際文化政策」のページにはこのように書かれています。


オランダは、国の施策のひとつである「国際文化政策」によって
選定された国や地域との関係を深め、国際的な文化の振興に努めています。
国際文化政策は単にいくつかの地域に焦点を集めるだけでなく、
系統立てた目標を設定しています。
· 芸術の世界でオランダの役割を広範囲に周知させること
· 海外における オランダの 有形、無形文化遺産の保全
· オランダの国がさまざまな文化価値を認める国であることを極める
オランダ政府はこの国際文化政策のために多くの助成金を国の財源から充ててきました。
国際文化政策における関心のひとつは、オランダの外交政策の再検討であり、
これによっ てHGIS-Cultureという基金が創設されました。
HGIS- Cultureはオランダ外務省とオランダ教育・科学・文化省によって共同で運営されています。この両省は国際文化政策の施行に責任を負っています。

http://japan-jp.nlembassy.org/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E5%9B%BD/%E6%96%87%E5%8C%96%E3%81%A8%E8%8A%B8%E8%A1%93/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%96%87%E5%8C%96%E6%94%BF%E7%AD%96%E3%81%A8%E6%94%AF%E6%8F%B4%E5%88%B6%E5%BA%A6.html

ここでわかることは、まずオランダにとって文化政策は外交政策と一体のものであること。
そして文化多様性を認める国であることです。

また、教育については憲法で「教育の自由」が制定されています。
これは権利義務ではなく、「3つの自由」があるということです。

 設立の自由    200人の子どもを集められれば,自分たちで学校を作ってもよい。
 理念の自由    宗教色を出しても,他のことで特徴を出しても良い。
 教育方法の自由  教育内容,教材の裁量権が自由。

http://crie.u-gakugei.ac.jp/report/pdf33/33_51.pdf

また、イエナプランというメソッドを取り入れ、
一方的な「学習」ではなく、「教えあう」という双方向的な
グループワーキングを中心にした「教育」を行っているようです。
http://study.japanjenaplan.org/

Wikiで単純検索をしたときにもこのようなことが書かれています。
オランダは、他国で思想・信条を理由として迫害された人々を受け入れることで繁栄してきたという自負があるため、何ごとに対しても寛容であることが最大の特徴といえる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80

ほんとかよ、と目を疑いたくなる記載です。
文化政策や地域に関して調査・研究をしていると、これが一番難しいことのように感じています。

なぜそのようなことがオランダで出来ているんだろう?
想像するだにハッピーすぎるオランダについてもっと知りたい。

もう少し下調べをし、9月のドイツでの国際学会の時に、
実際にアムステルダムくらいまで行ってみることが出来たらなあ、
と計画を計画中のわたしです。

文化資源学会とプリミティブへの目覚め

先日12日(土)、文化資源学会に参加してきました。
文化資源学会デビューですが少し遅刻して突入しました(笑)

研究発表では、研究ってこういうことなのかとしみじみ学ばせていただきました。
内容は勿論専門的ながら、知識のない者にもその面白さが届くところなど今後見習いたいです。

そして今回の学会で最もウエイトを占めていたのは神田明神の話題。
特に印象的だったのは、神田明神の神輿に関して
木下先生が「つくりもの」に言及なさったことです。

私は無意識に「つくりもの」を否定的に捉える向きがあるようです。
昔から存在していた伝統的なものこそが「正当」であり、
新しく創作された文化は文化と言えるものではなく、
「まがいもの」「如何わしいもの」だと考えていたのです。
そもそも文化はいつから伝統になるのかという問題もあるのですが。

ですから先生が「つくりもの」感溢れる神輿を取り上げられたことは衝撃でもあり、
自分の凝り固まった頭をもっと解していく訓練が必要だと痛感しました。

なんだか讃えてばかりのブログになっちゃいそうなのでちょっと切り替えます()

タイトルにも書いたように、プリミティブへの目覚め(?)もひとつの大きな収穫でした。
目覚めというと語弊があり、正確には、目覚めの発見と言った方が良いかもしれません。
いずれにしても「原始的なるもの」「一般に受け入れられにくいもの」「奇妙なもの」「関わるとなんかヤバそうなもの」、それでいて人間にとって「根源的なもの」 を自分が面白がっていることに気付きました。

荒俣先生が、崇徳上皇や平将門の怨霊のために神社や天皇までもが心を砕いたというお話をされたのが、おそらくひとつのきっかけでした。
現代の私たちが科学的に見れば、笑い飛ばせるようなことかもしれませんが、当時は国家レベルで大真面目にそのようなことをやっていたのです。
当時としてはそれが当たり前の対応であり、さらに天皇は天災が起これば自身の徳でもって防げなかったことを国民に謝罪したのです。

しかしそこには、現代の科学的論理と同等に敬意を払うべき、まったく別のロジックが存在するのだと思います。
このような一種原始的な発想というのは、否定して退けるべきものではなく、より人間存在の核の部分を発露したものです。
そういう意味で、いくら合理的な論理が地球上を席巻しても、現代の私たちの中に迷信じみたものはある程度存在するもので、これは否定されるべきものではないと思います。
今年度の文化資源学フォーラムのテーマ案で惜しくも選択されなかった「妖怪」でも、こうした部分に光を当てており、私の中で科学的論理とは異なるロジックという視点が活性化されていたのかもしれません。

さて、「原始的なるもの」といえば大町の原始感覚美術祭ですが()
アーティストがイニシアチブを取って始めた美術祭であり、その場として大町が選ばれた、ということだけでなく、
「ヤバげなもの」が具現したときに、それを「奇妙」と感じる人々との間に何が起こるのか、
初めは拒絶があるかもしれない、けれどなにか化学反応が起こり根源的なことに光を当てるかもしれない、
という「不思議な場」の作用にも私は関心を抱いているように思います。

原始感覚美術祭についてはまだまだ勉強不足で、そもそも現物を見ていません。
ドイツでの発表に向けて、問題意識を持ちながらこの美術祭を掘り下げていきたいと思います。

(risaia)

情報源についての補足

情報源とデジタルアーカイブを少しと」で書いたものへの補足です。
追加情報ではなく若干の解説のようなものです。

東京大学で利用できる各種データベースを探せるところ。資料タイプや主題などの条件を設定して検索すると、その条件に合った資料を検索できるデータベースを見つけることができます。データベースのデータベースと言うとわかりやすいかもしれません(わかりにくい人にはわかりにくいかも)。個人では利用しにくい有料のデータベースも、大学で契約しているため使えたりするので所属している間に有効活用すると良いと思います。注意点としては、データベースによって学内限定の利用となっていたり、同時に利用できる人数が制限されていたりもするので、利用条件を確認してから利用しましょう。ECCSのアカウントをもっていれば学内限定のデータベースを学外から利用できるものもあります(http://www.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gacos/faq/gakugai.html)。

東京大学OPAChttps://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/
東京大学で所蔵しているすべての雑誌と1986年以降に収集された図書を検索できるところ。“1986年以前に収集された図書のデータも随時入力中”とされています。1986年以前の図書に関してはOPACでは検索しても出てこない場合があるので、紙の目録カードで調べる必要があります。
ヘルプ(https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/help/c_jp/index.html)を参照しつつ、ざっくりと説明します。
論理演算を使った検索では、AND検索とOR検索、NOT検索ができます。AND検索は単語の間にスペースを入れます。つまり「A B」と入れるとABを両方とも含む資料が検索できます。OR検索は単語の間に「+」を入れ、+の前後にはスペースを入れます。「A + B」と入れるとABのいずれかを含む資料が検索できます。NOT検索は単語の間に「-」を入れ、-の前後にはスペースを入れます。「A - B」と入れるとAが含まれる資料のうち、Bを含まないものを検索することができます。()でくくることで複数の論理演算を組み合わせて使うことができ、詳細検索画面ではプルダウンメニューを使うことで著者名やキーワードなど異なる検索項目の間でも論理演算を使った検索ができます。
(こういう検索方法は知っている人も使っている人も多いとは思いますが、最近自分の常識が通じないことが多いので基本的なことも丁寧に説明することを試みています)。
前方一致検索を使うと、単語の途中までの入力で検索できます(東京大学OPACでは中間一致と後方一致、語中変化の検索はできないようです)。簡易検索画面で検索する場合と詳細検索画面で「全ての項目から」で検索する場合は、特別な操作は必要なく、単語の途中までの入力で検索することができます。詳細検索画面の「全ての項目から」以外で検索する場合は通常、単語の途中までの入力では検索できませんが、後ろに「*」をつけることで単語の途中までの入力でも検索できるようになります。その場合、*の前後にはスペースを入れず、「j*」などの形で検索します。ヘルプで応用例として提示されていますが、雑誌の略称から検索したい場合などに利用すると便利です。
(丁寧に説明すると言いながら論理演算や前方一致検索という言葉を説明なしに使うのは不親切な気もしますが、あまり事細かに書きすぎても煩雑になるだけなので、分からない場合はヘルプを参照するなり自分で調べるなりしてください)。
どのような検索が可能で、どの記号を検索に利用するかはデータベースによってそれぞれ異なるため、ヘルプなどを見て確認して使うと良いかと思います。
MyOPACを使うと、貸出中の本を予約したり、借りている本の返却期限を延長したり(返却期限内で予約者がいない場合などの条件はあります)、他のキャンパスの本を所属している図書館に取り寄せて借りたりすることができます。

国立国会図書館のOPAC。国立国会図書館は納本図書館のため、国内で発行された出版物をすべて収集していることになっています。国内で発行された出版物に関して、資料の存在を確認したいときなどに使うと良いかと思います。ただ、資料収集の方針(http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/collection.html)があり、外国語資料や専門分野の資料に関しては大学図書館の方が充実していることもあるため、場合によってはCiNii Bookshttp://ci.nii.ac.jp/books/)やそれぞれの図書館の蔵書検索を使った方が良いかもしれません。また、雑誌記事索引は、一定の選定基準の下に採録誌が決められているため(http://www.ndl.go.jp/jp/data/sakuin/sakuin_select.html)、一般誌に関しては大宅壮一文庫(http://www.oya-bunko.or.jp/)など他のデータベースの方が良い場合もあります(大宅壮一文庫の雑誌記事索引は条件付きですが学内で(ECCSのアカウントをもっていれば学外からも)利用できます。詳しくはGACoSなどで利用条件を調べてみてください)。

国立国会図書館 リサーチ・ナビ(http://rnavi.ndl.go.jp/
調べものをするときに使える資料やウェブサイト、データベースなどを、本の種類や分野などに分けて紹介しています。統計資料の調べ方や地図資料の調べ方、ビジネス情報の調べ方などがあります。分野や資料の種類によって参照するべき情報源が異なることもあるので、不慣れな分野や使ったことのない資料で情報検索をするときに参照すると、まずどこをみれば良いのか、どのような情報源を参照すれば良いのかが分かるので便利かと思います。

国立国会図書館サーチ(http://iss.ndl.go.jp/
国立国会図書館が所蔵する資料だけでなく、他の連携機関が所蔵しているデジタル情報などを検索することができます。前方一致検索と後方一致検索、完全一致検索が使えます。前方一致検索は検索するキーワードの後に「*」をつけ、後方一致検索はキーワードの前に「*」をつけ、完全一致検索はキーワードの前後に「/」をつけることで検索できます。詳しくはヘルプ(http://iss.ndl.go.jp/help/help.html)を参照してみてください。

CiNii Bookshttp://ci.nii.ac.jp/books/
大学図書館の本を探すときに。検索結果の詳細表示画面からその資料を所蔵している図書館のOPACのページに行くことができるので便利です。検索対象については“全国の大学図書館等で所蔵している図書・雑誌のうち,各図書館がNACSIS-CAT/ILLシステムにデータを登録したものだけが収録されています。大学図書館で所蔵されていない場合,古い本等オンラインで目録データが入力されていない場合,NACSIS-CAT/ILLシステムを利用せずにデータを作成した場合など,CiNii Booksでは検索できないことがあります”(http://ci.nii.ac.jp/info/ja/books/service_faq_org.htmlとされています。どんなデータベースであれ、所蔵していてもデータベース上に入力されていなければ検索しても出てこないので、収録範囲を確認することは大切です。

CiNii Articleshttp://ci.nii.ac.jp/
日本の論文を探すときに。CiNiiに本文が収録されているものや機関リポジトリなどでオープンアクセスのものは本文を無料で閲覧できます。有料のものも学内からであれば(ECCSのアカウントをもっていれば学外からも)閲覧できる場合があります。

どのようなデータベースを使うにせよ、そのデータベースの検索対象(収録範囲)がどのようなものなのか、どのような検索方法が可能なのかなどを把握して、自分の調べたい内容や探している資料の種類に合わせて使い分けることが必要かと思います。TREE (UTokyo REsource Explorer)http://tokyo.summon.serialssolutions.com/)は、そういうデータベースの使い分けを意識しないで情報を探せる、というのが特徴のようですが、個人的にはほとんど使っていないので便利なのかどうかよくわかりません。(どうしてこういう情報源や調べ方について何度も書いているかというと、一つのデータベースで適当なキーワードを入れて調べるだけで十分だと思っている人がいたので、きちんと調べようとしたら考慮しないといけないことがたくさんあるのだと示したかった、という理由だったりします。自分で「調べられている」と思っている人はこういう文章を読んだりしませんし、ここで書いているものも不十分なものなので結局何の意味もないのかもしれませんが)。

こういうデータベースの使い方や情報源の探し方というものに興味がある人がいれば、司書資格科目でその関係の授業があるので取ってみても良いかもしれません。司書資格科目の授業は隔年開講のものが多いので、今年度開講されているかはわかりませんが、興味があって時間割の都合が合う人がいましたら是非。


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