2014年1月31日金曜日

「体育館や、大ホールではやめましょう」

おはようございます、1月も終わりですね。
pugrinです。

先日、私がお手伝いをしております渋谷ハチ公サロンにて、
伝統芸能プロデューサーの小野木豊昭さんとお会いする機会がありました。

http://www.koten.co.jp/index.html

小野木さんは邦楽・舞踊・落語といった日本の舞台芸術の活性化をめざし、
公共ホールを中心に公演をプロデュースしていらっしゃる方です。

数々のお仕事の中でも、茨城県小美玉市の幼稚園・小学校に向けた
アウトリーチ活動のお話を伺いました。

小美玉市では毎年、市内の幼稚園・小学校合わせて58クラスで
プロの三味線・琴・太鼓の演奏に触れる授業が行われており、
それが10年近く継続しているそうです。

若手のプロの邦楽家たちが、
1クラス1クラスの年齢やこれまでの授業内容に合わせて
披露する楽曲や対話のプランを綿密に立てながら、
子供たちと一緒に、日本の音を楽しむ感覚を分かち合う機会を提供しています。

どんなに技術があっても、途絶えてしまう危険のある邦楽の世界と
どんなに吸収力があっても、触れなければ知らずに育ってしまう子供たちの感覚を
小さい年齢のうちに
小さな空間で
少人数で出会わせていくことで
両者に新たな活躍の可能性を生じさせていくこと、

この3つの「小」が、小野木さんのお仕事の大切な部分であるということでした。


教育の現場、プロの音楽家、それに市の行政といった
複雑になりやすい関係を調整していくお仕事は
そのうちのどのアクターにとっても非常に骨が折れることです。
それを理解し、このような授業を続けることが可能になった小美玉市は、
なぜこれほど文化に対して前向きなのですか?と小野木さんに聞いたところ

・2006年に市町村合併により生まれた新しい市で、
文化を大切にしなければ市としての発展が見込めないと市長以下職員が考えていること。
・市内の2つのホールの館長に文化振興の熱意があり、
彼らの意見を聞き入れる土壌が行政にあったこと。

というポイントを挙げてくださいました。

現状はここまでの情報ですが、こうした新しい市の姿勢と、
小野木さんのような民間企業の活動は注目すべき点が多くあると思いました。

ぜひ小林ゼミのプロジェクトにも取り入れていきたい事例と思い、
ブログで共有いたします。

ではでは。


2014年1月29日水曜日

小金井で「文化政策を考える研究会」が開催されます

※リンク等ミスがありましたので、訂正いたしました。申し訳ありません。

小金井 アートフル・アクション!では、現在行なっているプロジェクトを事例として取り上げ、
ゲストとともに様々なプロジェクトと文化政策のかかわりあいについて考える講座を開催しています。

2月1日(土)に第3回が開催されます。
今回はNPO法人クリエイティブサポートレッツの理事長の久保田翠さんをゲストに迎え、
個から共へ―つながりの可能性」というタイトルで、
アートプロジェクトを通じて個と公共について考えていくプログラムだそうです。

これまで(第0回も含め)3回開催された「文化政策を考える研究会」に私も参加しました。
市民スタッフとしてアートフル・アクション!にかかわっている方などが、
日頃から疑問に思っていたことやゲストの方々に質問したり、
ゲストの方々に現場での経験を熱く語ったりして、
どんどんと活発になっていく議論は、毎回大変勉強になっています。

お知らせが直前になってしまいましたが、ご興味がありましたら、ぜひご参加ください。 
http://artfullaction.net/index.php?itemid=203

(tantaka)

2014年1月7日火曜日

じゃまもの、のけもの、きわられもの、ですか?


あけましておめでとうございます、本日より授業再開ですね、pugrinです。

昨日は文化資源の名俳優、金世一さんの出演する舞台
「深川ももんが」を鑑賞してまいりました!
http://www.zenshinza.com/stage_guide2/z_next/



金世一さんはメインビジュアルのど真ん中、
鮮通信使の役です。

あらすじはこんなかんじ。(前進座HPより抜粋)
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江戸は辰巳の裏長屋に、奇妙なナリの生き倒れ…。
思いがけない珍客に、右往左往の長屋の面々。
江っ子花咲く井戸端には、人情、友情、おせっかい。
この珍客は、敵か味方か、はたまたただの変人なのか?
太田善也が描く、妖怪画家 鳥山石燕の誕生秘話!? 
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朝鮮からやってきた画家が、長屋の人々の毎日をがらりと塗り替えてしまう
というようなお話なのですが、
これって文化資源学でやってることと似てる!と思いました。

町を変えるものは「よそもの わかもの ばかもの」と言われることもあるように
「深川ももんが」でも、
他の土地から来た人にしか見えないものがあり、
そこのしがらみに関係のない人だからこそ話せることがあり、
その出会いから生まれた言葉や考えが
それまでの当り前を見直すきっかけになる
ということが、
江戸の町人と朝鮮人との遭遇を通して描かれていたのです。

その結果、長屋では朝鮮の漬物を販売できるようになり
大工仕事がはかどるようになり、お年寄りにはベンチができました。
ならず者が更正し、ロクデナシが働き者となって、2つの恋が実りました。

朝鮮人は日本が母国に劣ると思っていたけれど、
江戸にはゴミが無いどころか、
どんなものもぐるぐる回りながら人の役に立っていて
ゴミそのものが無いのだと気づき、日本を好きになりました。


もちろん物語だからこそトントン拍子にうまくいくのであって
現実はそうはいかないことが多いのですが、
2時間の中で笑いあり、涙あり、
登場人物が皆それまでのモヤモヤした思いに決着をつけて
幸せになっていく過程を見ていて、
わたしもスカッとさわやかな気分になりました。

本作の中でも「どっちが上かと言い争って喧嘩になりかける」
シーンがありましたが、
いつもいつも肝になるのは他者との対話だなあ、と思います。
舞台上ではこんなセリフがありました。(正確ではないですが・・・)

「サルというのはいつもどっちが上か下か、優劣をつけることばかり考えている。
私たちは人間なのだから、相手に寛容になって話をすべきだろ」

自分の立場に意固地にならずに、他者をまず受け入れる
ということは簡単ではありませんが、
とりあえず聴く、とか、相手はどういう視点でこちらを見ているのか想像する
ことはできそうです。

今年も「良きよそもの」の視点を忘れずに頑張ろうと思います!


よろしくお願いいたします^^

2014年1月6日月曜日

第13回 文化資源学フォーラム参加の前に…

みなさま、あけましておめでとうございます。2014年もよろしくお願いいたします。

久しぶりのブログ投稿になりますが、恒例の文化資源学フォーラムが来月の222日(土)に開催されます。今回のテーマは「酒食饗宴 うたげにつどう人と人」です。
(詳しい案内と申込方法は文化資源学フォーラムのHPhttp://www.l.u-tokyo.ac.jp/CR/forum/forum13.html にアップされておりますので、そちらをご覧ください)

 その前フリとしまして、今回は宣伝です。現在、上映されている『武士の献立』の時代考証をされた綿抜豊昭先生が今回のフォーラムのゲストです。『武士の献立』は加賀藩の料理役を務めた舟木安信をめぐる物語で、加賀藩で供された料理の数々が登場し、新藩主お披露目の大々的な「宴」も再現されているのが見ものです。これを観ていただくと、フォーラム参加がより一層面白くなるかと思います!

http://www.bushikon.jp/ →公開終了が近いかもしれないので、お見逃しなく!

 
そして加賀藩邸跡といえば、東大本郷キャンパスですが、昨年よりはじまった総合図書館前の発掘現場はちょうど溶姫の御殿の端にあたるそうで、藩邸の宴で使われた器や貝殻などが発掘され、たくさん宴会が行われていた様子がうかがえます。こちらも2月には閉じてしまうという噂ですので、お見逃しなく!


  左は総合図書館前の発掘現場。右はうたげに使われたかわらけ(使い捨て…)。

 
「食を囲んで人と人が向かい合う場」が、すなわち「宴」ですが、今回のフォーラムでは食の要素のみならず、そこで展開される人間模様、もてなしの工夫などを交えながら、古今東西において人間が絶えることなく続けてきた「宴」という営みについて考察していきます。美味しい計画も進行中です。ぜひご参加ください。                     
                                                                                                                                                   (Mube)