2012年12月23日日曜日

フランス便り(8)現代美術の未来


フランスの文化シーンにおいて高待遇な層、それは18から25歳の人々。
ほぼ全ての文化施設で割引あるいは無料という絶対的優遇措置の枠からもうすぐ外れるという事実に愕然としているM.Oです。
とは言え、学生ならまだ受けられるサービスも多いですし、国鉄のチケットが3割引くらいで買える若者枠も若干延長されたので、まだもう少しは大丈夫(?)!か?

この前の日曜日、MAC/VAL(Musee d’Art Contemporain du Val-de-Marne : ヴァル・ド・マルヌ現代美術館)に行きました。

県の文化政策のシンボルとして、現代美術の普及・大衆との距離を縮めるという県議会の20年以上にも及ぶ努力の結晶として、2005年にヴィトリー・シュール・セーヌ市の中心にオープンしたこの美術館。

フランスにおける1950年代から現在までに創造・制作された1000点以上の芸術作品を収蔵しています。

1万3千平米に及ぶ館内では、その3割強が常設・企画展示にあてられ、残りは映画・音楽用の映写室(150席)、様々な世代・社会階層の人々のニーズに応えるマルチメディア閲覧室、ミュージアムショップ、レストラン、国内外のアーティストを迎えるレジデンスが含まれます。

私が訪れた時には、企画展として、フランスを代表する現代美術家の1人、Fabrice Hyber(1961-)の作品がこれでもかという位贅沢な空間のなかに展示されていました。
この滞在期間中に他の文化施設でも彼の作品を見る機会がありましたが、その中のどれよりも凄い。

また、従来の美術館的年代別展示法にとらわれない、質・量共に充実した常設展示も、その頻繁な入れ替えが嬉しい限り。
どこから何を見てもいいんだよ、と言う風に言ってくれている様な自由な動線の作り方。
また、現代美術の一つの魅力である「作家が現存である」という点を活かし、館内には作家自身が展示作品や自身の創作について語っているインタビューを流している箱(床に箱が置かれていて、そこにテレビ画面とオーディオガイドの聞く部分の様な耳に当てる機械が置いてある)が点在しています。

常設展示の中に、Julien Prévieux(1974-)のLettre de non-motivation(モチベーション無しレター:求人欄に掲載された求人・そこに提出したモチベーション「無し」レター・その返答を展示した作品)があったのが個人的には嬉しかったです。
現代社会のシステムとその弊害をクリティカルに描きながらもくすっとさせてくれる素敵な作品だと思います。学生の身分だからこそより染み入る、のかも。

ところが、人が、いない。
本当に、いない。
日曜日の午後一番に行ったのにガラガラ。
その後、博物館学においては何かと話題だったケ・ブランリーへ。
こちらはすごい人。観光客も多い。でも正直、なんだかもやもやする美術館でした。
バンリューと中央の差、現代美術とそれ以外の美術の差。それは現地に住む人の認識の差だけでなく、周りに住む人々の認識の差でもあるように思います。
私は、それに加えて、「美術界(とりわけ現代美術)が美術館なり単体のイニシアチブではもはや動いていない、社会に繋がっていかない」という事を如実に現している例だと感じました。
とは言え、それは良い事であり、よりこの社会の構成員がどのように美術をコンテクスチュアライズしていけるのかという希望と課題を顕在化させているのだと思います。
皆さんは美術の未来をどのように考えますか?

ところで余談ですが、パレ・ド・トーキョーの新館長しかり、ポンピドゥー・メッスの館長しかり、なんだか現代美術の館長は面白いおじさまが多いですね! とは言えもちろん教養漂ってますが。
フランスの現代美術施設の未来は明るい!か?!
(M.O)


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