2013年5月21日火曜日

庄内と映画、庄内の映画、庄内で映画


 いま庄内を訪れるのであれば庄内映画村に行かずに帰ると「鶴岡まで行って何をしに行ったのか」と問い詰められるであろうほど現在の庄内地方において庄内映画村の存在は大きいと思います。
 映画村という言葉のイメージからなんとなくテーマパークのような想像をされている方も多いのではないかと思いますが、庄内映画村はテーマパークとは大きく異なるものです。私は太秦にも日光江戸村にも行ったことがないので単純に比較することはできませんが、本質的には巨大な野外のセットであります。月山山麓の広大な敷地を切り開き、実際に「村」と呼べるほどの規模の町並みを再現したもので、これまでに数々の映画作品が撮影されてきました。
 スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ(2007年9月15日公開)
 山桜(2008年5月31日公開)
 おくりびと(2008年9月13日公開)
 ICHI(2008年10月25日公開)
 山形スクリーム(2009年8月1日公開)
 スノープリンス 禁じられた恋のメロディ(2009年12月12日公開)
 座頭市 THE LAST(2010年5月29日公開)
 必死剣 鳥刺し(2010年7月10日公開)
 十三人の刺客(2010年9月25日公開)
 デンデラ(2011年6月25日公開)
 赦免花(2013年3月16日公開) 
   (wikipedia【庄内映画村】の項より)
 あの映画で見たあの場所この場所、実はこの庄内映画村で撮影されたものが少なくないのです。
 そしてこの“巨大野外セット”を一般に開放し公開しているため、現在鶴岡市における一大観光スポットとして話題になっているというわけです。

 庄内映画村がオープンしたのは実はわずか数年前のことですが、実は鶴岡は以前から映画と深い関わりがある街でした。鶴岡市出身の作家藤沢周平の作品を映画化することが2000年以降多くなり、
 たそがれ清兵衛(2002年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:真田広之、宮沢りえ)
 隠し剣 鬼の爪(2004年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:永瀬正敏、松たか子)
 蝉しぐれ(2005年 配給:東宝 監督:黒土三男 出演:市川染五郎、木村佳乃)
 武士の一分(2006年 配給:松竹 監督:山田洋次 主演:木村拓哉、檀れい)
   (wikipedia【藤沢周平】の項より)
 などなど、鶴岡をモデルにした「海坂藩」が舞台の大ヒット作品が続々と世に放たれています。2010年には鶴ケ岡城の跡地である鶴岡公園内に藤沢周平記念館もオープンしました。

 まさかアカデミー賞で外国語映画賞を受賞しこれほどの大ヒットを記録することになるとは予想されていなかったであろう『おくりびと』(2008、監督 滝田洋二郎、脚本 小山薫堂、出演 本木雅弘、広末涼子 他)の影響により、撮影場所となった鶴岡・酒田両市には全国から非常に多くの観光客が訪れています。一種のコンテンツツーリズムですよね。
 ちなみに私は『おくりびと』を鶴岡に2010年にオープンした「まちキネ」で見ました。 まちキネは「鶴岡まちなかキネマ」の愛称であり、昭和初期に建てられた工場をリノベーションして映画館として新たに生まれ変わった鶴岡で注目されているスポットです。古くからあった小さな映画館が街から姿を消して行き、鶴岡に映画館が失われようとしていたその矢先に登場した話題の施設であり、世界的建築賞「リーフ賞(LEAF AWARDS 2010)」の商業建築部門に入選、平成23年度第21回「BELCA賞」ベストリフォーム部門を受賞するなど建築としても注目されているようですね。文化庁の近藤誠一長官も来訪されているようです。ちなみにまちキネの設計は藤沢周平記念館と同じく東大工学部出身の高谷時彦さんという建築家の方です。文京区千石にオフィスを持っていらっしゃるようですね。

 このようにですね、ここ10年ほどの間に庄内という地域において映画産業が著しく盛り上がっているんですよね。しかも全国、世界というかなりの規模で。歴史のある古い城下町であり、少子高齢化に悩まされる典型的な地方都市のひとつではあるのですが、いやいや文化資源は豊富にあるぞという潜在能力を近年富に活かしまくっている、ひとつの「成功した」地域でもあると思います。「文化政策の諸問題」というゼミ名を冠する私たちのゼミ合宿地として、文化政策の現場を見聞するという意味では庄内地方は最適な場所とタイミングであると思いますよ。

(志)

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