2013年4月25日木曜日

4月20日・21日に岡山大学で行われた、考古学研究会大会でポスターセッションを行ってきました。

・<講演-現代社会と考古学->「現代社会と考古学の交錯-科学論の観点から-」小野 昭
・調査報告「自然災害痕跡研究と考古学」斎野裕彦
・研究報告1「遺跡調査と保護の60年-変異と特質-」坂井秀弥
・研究報告2「朝鮮古蹟調査事業と「日本」考古学」吉井秀夫
・研究報告3「時空間情報科学・サービスとしての遺跡調査と情報統合-ドキュメンテーションとローカルナリッジベース-」津村宏臣
・研究報告4「パブリック・アーケオロジーの観点から見た考古学と埋蔵文化財と文化遺産」松田 陽

 この大会で特に関心を持ったのは、以下の点です。
(1)考古学研究会の会員数が減少
 考古学研究会は、1950年代の市民参加によって行われた月の輪古墳の発掘を契機として結成されました。一時は5,000人余りの会員数を誇っていたものの、現在は3,500人程度にまで減少しています。団塊世代が第一線を退いた、この学会以外の分野別学会が立ち上げられ、それが受け皿となった等々、様々な要因が考えられますが、重要なのは、この学会の構成メンバーが、大学の研究者だけでなく、自治体職員や小中高の教員、一般の市民であるという点です。私が思ったのは、こうした多様な階層がひとつの組織に寄り集まることのできる場が失われつつあるのではないか?そして、その先にどのような未来が待っているのか?ということです。市民の参加という側面でこの現象を捉えてみる必要がありそうです。

(2)文化遺産と文化財
 文化資源のOBである松田陽氏が文化遺産と文化財の違いについて指摘されました。私なりに解釈すると、文化遺産は、ちまたの人々が地域のアイデンティティとして捉えているもの、文化財は行政側が行政手続きとして指定するものというものです。多くの人は両者をごっちゃに捉えていますが、実際には、文化を捉える立場によって全く異なるものです。
 面白いのは、文化財保護行政の担当職員の多くは、この両者を分けて捉えていないということです。いや、両者を分けると文化財保護の制度上、都合が悪い。行政が文化財に指定したモノは地域のアイデンティティを象徴するものでなければならない以上、文化遺産と文化財はイコールである必要があるわけです。ここに行政の無謬性が存在しているのではないかと私は考えています。
 一応、文化財保護審議会などの有識者会議の答申を受けて、行政によって文化財指定されるため、行政の独断ではないことになっています。しかし、地域の象徴と市民が捉えているものが、必ずしも文化財指定されないように、指定に関わる少人数の人たちによって、文化財として相応しいものとそうでないものが選り分けられているのが実情です。
文化遺産と文化財を分けて考えることは、文化財保護行政とは何かを問う際にとても面白い試みだと思いました。

(ま)

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