2013年1月21日月曜日

演劇界の宝

  今回は今年3月末で閉鎖されることになった名古屋の老舗劇場御園座、そして御園座演劇図書館に関するお話です。

明治29(1896)年に創業した御園座は、一度は戦災で消失したものの戦後1947年には名古屋の財界人たちの協力を得て再建され、それ以降名古屋人の戦後の復興にかける心意気を示したものとして地元の人に長く愛されてきました。しかし近年、業績不振が続き再開発される予定はあるものの、劇場の再建は白紙のようです。
その御園座閉鎖に伴い、同劇場に併設されている中部地方唯一の演劇図書館が閉館し、所蔵品が散逸する恐れがあるという記事を1月16日の東京新聞Webで発見しました。
 
【以下引用】
「御園座演劇図書館にはプログラムや台本がそろっており、役者の利用も多い。一八九七(明治三十)年五月十七日の御園座こけら落とし興行の一枚番付(プログラム)など「創業百十八年の老舗ならでは」の資料や、歌舞伎役者の化粧を和紙に写した隈(くま)取り、文楽の義太夫のレコードなど、古典芸能の資料も多い。
「ヤマトタケル」などのスーパー歌舞伎を手掛けた三代目市川猿之助(猿翁)は、図書館創設者で御園座の元会長、故長谷川栄一氏の追悼集への寄稿で、その価値を「数々の演出を手掛ける都度、今まで到底調べきれなかった究極の部分まで納得できる有益な勉強ができた。まさに演劇研究の宝庫」と記している。
劇場が入る建物の建て替え計画には、未確定の部分が多く、御園座の再開を心配する声もある。御園座は「稀覯(きこう)本や歌舞伎の番付、隈取りなど、貴重なものは残したい。地域の貴重な財産でもあり、行政などに保管や公開で助けていただければ」と話す。
実際、名古屋市文化振興事業団などが昨年一月に視察したが、市は「市としては一時保管しない。江戸時代のチラシもあるが、昭和以降の新しい物が多く、博物館の扱う範疇(はんちゅう)ではない」(博物館学芸課)との立場。保存への有効策が見当たらないのが現状だ。」

、、、、、!?

御園座の120年近い歴史を伝える資料や、歌舞伎や文楽の貴重な資料、プログラムや台本など演劇関係を中心に約29千冊もの貴重な資料、それは「演劇界の宝」です。それを「昭和以降の新しいものが多いから」博物館では保存しない。
近年では資料のデジタル化が進み、保存への取り組みは進んでいますが、もちろんすべてを保存することは不可能です。しかし明治、大正、昭和にわたり地域芸能の拠点であった御園座の歴史を考えた時に、ただ「新しいものが多いから」という理由で、これまで収集されてきた資料が散逸してしまうのは地域にとっても大きな損失でしょう。今は比較的「新しい」資料でも、何十年後には「過去を知るための貴重な資料」となるものです。何が保存に値するか、しないのか、それを現代の視点だけで捉えることができるのか、昭和以降の資料は価値がないと言い切ってしまっていることからも、同時代の資料に対する重要性が共有されていないように感じました。
今後のことを考え、資料をどのように残していくかという議論が行われることを願います。
 
御園座演劇図書館の閉館に伴う資料の散逸をなんとか防ぐことはできないだろうか、とホームページなどで調べてみましたが、未だ保存への有効策は見つかっていない状態のようです。
演劇界の宝の行方を今後も追っていこうと思います。
M.H

演劇界の宝 散逸か 老舗劇場「御園座」、図書館閉鎖へ
2013116日 夕刊
 
御園座演劇図書館

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