2014年5月12日月曜日

聖地・ロケ地・GMT

だいぶ書いておりませんでした、pugrinです。

先日、OBで富山県高岡市でお勤めのTさんからおすすめいただき
『月影ベイベ』というマンガを読みました。
作者は小玉ユキさんという方で、
自身の出身地長崎をベースにした『坂道のアポロン』がヒット作です。

『月影ベイベ』は、富山県の八尾町に伝わる
「おわら」という踊りをテーマに描かれる青春ストーリーなのですが、
すごいのは綿密な現地取材と関係者監修による富山弁の表現です。

観光客向けにポスターやパンフレットで連呼される「まいどはや」(ありがとう)や
「富山に来られ」(富山にいらっしゃいよ)といった語彙だけではなく、
日常的な「~ながいちゃ」(~なんだよ)や、
「なーん」(いいえ)、「~だねか」(~じゃないですか)のような表現が
フキダシの中の文字にばっちりはまっていて、
富山市出身のわたしも自然に読むことができました。

方言の表現でいつも気にかかることは、地元の情報番組やCMでも
「誇張しすぎてうすら寒い」ことです。
例え他の地域の人には「そういうものなのかな」と思うものであっても
個人的には、「それはちょっとやりすぎでは」と思うことが多かったです。
この作品は、そうした懸念点もすんなりと飛び越えて楽しめる良作ですので、
ぜひお勧めしたいと思います。

自分の研究でも今いろいろと調べているのですが、
やはり最近はこの作品のように、特定の地域でロケーションを行う
映画・アニメ・マンガ作品が続々と増えています。

背景モデル獲得により制作スピードを上げるため、
物語のリアリティの追及、
移動コスト削減等利便性の重視、
逆にそうした動きから、官民あげての誘致活動を行う地域や
むしろ近場に眠る人材とノウハウを活用して作品を制作する地域が増えてきたことも
そのような作品増加の要因でしょう。

その結果、今日本は聖地・ロケ地の玉手箱となりつつあります。
確かに地元が全国の映画館やテレビで、広く他の地域の人の目に触れられれば、
地元住民の誇りや経済効果につながることもあると思います。

しかし、もし内容が「わざとらしい」とか「未熟・稚拙」な出来であったり、
嫌悪感を催すようなものであった場合には、
まず地元の人が敬遠してしまう事態というのもあるのではないでしょうか。
もし、安易に上記のような狙いを持って映画製作を進めるのであれば、
単なる場所貸し以上に、その内容や完成度に厳しくならなければ
ただの自己満足・自我自賛に終わってしまう可能性は否めません。

地元の人々が納得するような出来になって初めて、
全国の視聴者に提示したい、と思わせるような作品になるのではないでしょうか。

文化政策や計画の策定、文化活動の普及と同様に、最初に必要なのは
内側にいる人々の愛情ある承認なのではないか、
と思いながら今は東京から作品世界を見つめています。

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