2013年6月11日火曜日

文テクと釜山


先週金曜日、文化資源学研究室10周年記念の展望プロジェクトである分科会「文化資源学を支えるテクノロジー研究会」の第1回「記録や保存の「テクノロジー」を、文化資源学会とともに考える」(凸版印刷株式会社社内勉強会共催)に出席しました。
現場の方々とのオープンなディスカッションを通じて、デジタルアーカイヴやバーチャルリアリティの現状と展開、そしてそれを踏まえた私たちの生活・研究環境に生じる変化について考える機会となりました。
詳しい内容は後日「文テク」HP上に載る予定ですので、そちらをご参照下さい。

その金曜日まで、私はArt Show Busanのため韓国は釜山にいました。
このフェアは2012年に始まり今年で2回目という若いフェアで、BEXCOというコンベンションセンターのワンフロアを使用し90のギャラリーが集っていました。内容としてはまだどこも手探り状態(何が釜山で売れるのか分からないのでとりあえず様子見?)といった感じだったかと思います。
それにしても人が多いこと。
オープニングに人が集まるのは当然ですが、平日の日中の混雑具合が顕著で、オープニングの混み具合を凌ぐ程でした。
客層としては若い人や家族連れが多く、また街行く人の中にスーツ姿のビジネスマンをほとんど見かけなかったことから、地元の人が中心というよりはむしろ、夏のビーチリゾート地として釜山にやってきた国内外の人がついでにアートフェアも見に来てみた、という感じでした。
あるギャラリストの方の言葉が印象的でした。
「ここには子供連れや若い人が多いでしょう。彼らはこのアートフェアに、日本でも流行ってたスーパーカーのショーに来るのと同じ感覚で来ている。釜山にもお金持ちは多いけど、今はソウルの方が美術の市場規模としては釜山よりも5倍も10倍もある。でも考えてみて、この子供達はこんな小さい時分から生のコンテンポラリーアートに触れる事が出来る。彼らが成長した時、きっとここは優れたマーケットになる、そういうポテンシャルを持ってる所だと思う。」
思い返してみると、以前行ったKIAF(Korean International Art Fair:ソウルで開催される韓国で一番大きなフェア)には、混雑はしていたものの、確かにこのような光景はありませんでした。
そしてふと、昨年末に行ったフランスのアートシーンを思い出しました。元来あちらでは外食の席に小さい子を連れてくるのはマナー違反とされるなど、子供の世界と大人の世界は分断されていると言えると思います。そんな中にあって、文化施設は一つの例外でした。
美術館に子供が居るのは勿論、ギャラリーでも見かけたし、展覧会のオープニングにも居ました。パリの北西部の郊外都市ジュヌヴィリエ(Gennevilliers)にある文化施設(http://www.ville-gennevilliers.fr/culture/)で開催された展覧会のオープニング・レセプションに行くと、大人たちが談笑する傍ら6人程、子供達が遊んでいました。また、帰りはパリまでシャトルバスが出たのですが、そこでは展示内容(例えば、若い男女がひたすら樹木の皮を口で剥ぐビデオなど)からはあまり想像出来ない高齢のご婦人方を見かけました。
アートフェアにおいては、流石にParis Photoには子供の姿はほとんどありませんでしたが、若い学生たちが多く押し掛けていたし、同時期に開催されていたOFFには地元の家族連れが集まり思い思いの時間を過ごしていたため、「ここは見本市会場ではないのでは」と錯覚してしまう程でした(でもそれなりに売れている)。
先述した通り、釜山の場合来場者の中には観光ついでに寄った一過性のパッセンジャーも多く居たはずなので、どの位あの場所が育っていくのかは今後の展開次第だと思います。それでも、何より短期的な利益の有無だけではなく中・長期的なビジョンでマーケット及びアートシーンを考えていこうとする、内容自体は至極当然で目新しい意見では無いけれど、だからこそそれを口に出して言える人が参加しているということは、このフェアにとって明るい要素なのではないかと信じます。
(M.O)

0 件のコメント:

コメントを投稿