2014年9月27日土曜日

8月の大町訪問感想

遅くなったが8月の大町訪問の感想を共有したいと思う。

今回の大町訪問は意義深い出来事だった。大町を訪ねるのは3回目になり、見たことがない大町の様子を体験して改めて考えさせられることが多かった。
まずいくつかの文化施設を見学してすぐ分かったことは各施設の間には連携が殆どないことである。連携がなくて当然と思っている職員がいたことに、驚いた。
私自身は以前博物館に所属した時には全く逆の考え方で、博物館と博物館および文化施設の間に連携があることは当然だと思っていた。協働作業で人材教育するという側面は特に重要だと思い、連携があってこそ、考えたことがないまた無理と思ったイベントおよびプロジェクトが充分に出来るようになり、さらに職員として協働仕事に参加している間は他の施設はどのように働いているかが理解でき、自分が所属しているところの独自性をよりよく考えさせられる場合もあった。また自分のところで抱えている問題の解決はとなりの施設で発見するということもあり、協働作業を通じて学ぶことが多い。
もちろん公共施設は法律に従う必要があるため、他の施設と協力することは複雑である面が必ずあるが、その障害を乗り越える対策を考える作業は職員の一つの役割だと思う。さらに民間文化団体と協力する時には数も多いことから、最初から「無理です」という考え方は市民が文化行政に協力する権利に障害を設けることになる。

私が研究しているブラジルの文化政策の「Cultura Vivaプログラム」の一つの目的は積極的に社会にある複数の文化団体の間の連携、およびさらにその複数の文化に取り込んでいる社会の一員と公共施設との協力を作ることである。ブラジルにおいてもこの作業はすぐには、簡単に出来あがっていないが壁にぶつかりつつ進んでいる。最初に行政においても、市民においても知らない点は多いが協力しながら両方とも成長する。しかしそのためにはどちら側にしても高いレベルのコミットは必要だと思われる。
コミットといえば今回の訪問には非常に気になったところがあった。そこは民間の施設であったが、そこの職員は「もう行政には期待していない」と語ったことだった。大町市とこの団体は連携してなにかをすることは非常に難しいと思っているようだ。理由は複数だと思われるがこの全国的にも有名な団体は、大町市が特別な待遇をしてくれることを期待しているようで、かえって協力が難しくなっているように思った。
私がM2だった時は一度授業で文化ホールについて話題になった点がある。そもそも日本では劇場ということ、またいわゆる西洋からの演劇は昔からあったわけではなかったにも関わらず1980年代以降全国に文化ホールが作られ、そこで地域の住民の生活とあまり関わってない文化に日常的に重要性を与える一方で、その地域にもともとあった伝統文化は重視されない側面があり、それは人々が文化ホールに行かない理由の一つになるのではないかという議論が授業で起きた。従って大町にいくら有名な団体があって最初から「有名な団体」という扱いを受けようとしても大町の人々の文化には全く接触していないのであれば特別な関係は生まれないと思う。そもそもある団体がただ大町に拠点があるだけと考えるのならば、大町の人から東京の人と同じようにその団体の活動を称賛されることはなかなか難しいと思われる。そういうスタンスは市民としてコミットすることとは違うと考えた方がよいだろう。

最後に大町に住んでいるブラジル人についてすこし書きたい。私が知っている日本人は殆どだれも大町の存在をしらない(もちろんゼミの仲間は大町について詳しいが)。しかし日本にいるブラジル人の間では大町のこと知っている、また住んだことがある人がいる。その中には黒部ダムに行ったことがある人もいれば、大町の工場で働いた人がいる。それを頭に置いて、外国人の出稼ぎ者も大町の一員になっていることを思いながら長野県に行った。公民館を訪問した時に職員の方にどれぐらい外国人が利用するかを聞いたところ、殆ど公民館を使わない「興味がない」という答えもあった。確かに興味がない人もいると思うがそこには一つ理由が存在すると思う、例えばブラジル人には「公民館」という存在はとても分かりにくい、「自由に使える」と言われても分からない部分がある。なぜかというとブラジルではそもそもその公共スペースはそんなに提供されていないため公民館の存在が分からないと思う。多分適切な説明が必要だろう。ブラジル人の私には大町だけではなく日本の複数の地域に住んでいるブラジル人が多くの文化施設を使って、いつか帰国したらブラジル社会の一員として向こうでのその場所の必要性を社会に活かすことを願っている。

今回の3日間の大町訪問で改めてなぜ大町は元気な町になれるかと思った理由は、やはり出会った二人の元気な職員の方と二人に生きづいている文化。あの人たちは大町を今後担う力の一部になる可能性がある、また同じように大町のために頑張ろうとしている人は多くあるかもしれない。
(MP)

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