2013年9月4日水曜日

大町でのプリミティブな一日

 先日、小林先生と研究室のメンバーと共に大町市で開催されている原始感覚美術祭へ行ってきました。私はゼミ生の有志メンバーの一人として美術祭に関わってきたため、今年の夏は三回美術祭を訪問しているのですが、今回は小林先生、研究室のメンバーと一緒に作品を見て回ることができました。

 朝から電車運転見合わせの影響で予定していたあずさに乗ることができず、京浜東北線、湘南新宿ライン、京浜急行、横浜線を乗り継いで(突然ですが、私は横浜市のチベットと呼ばれる場所に住んでいます。)やっと辿りついた大町は、生憎の雨。雨の木崎湖は晴天の日とは異なる雰囲気でとても新鮮でした。

M.H、無事稲尾駅に到着!

 原始感覚美術祭は稲尾駅で降り、西丸震哉記念館でパスポートマップをもらって、各作品を回りスタンプを集める、という仕組みになっているのですが、とにかく作品に辿りつくのが難しい!!途中には赤い目印があるのですが、非常に分かりづらい場所に設置されているため、集中して探さないと見つけることができません。

 一人で回った時はマップ上ではこのあたりにあるはずの作品がない!と炎天下汗だくになりながら、泣きそうになったこともありましたが、今回研究室のみなさんと回る中で、作品を見つける楽しさ、大町の自然と対話しながら作品を探し出していく、という美術祭の魅力を再確認しました。

何もない場所でも「ん?なんかこの先、作品がありそうな気がする!この匂い、作品ありそう!」と自分の五感を駆使して作品を見つけ出す、という東京での日常生活では忘れてしまった感覚を思い出すことができるのです。これこそ原始感覚!?
 
私は他の小林ゼミ生のようにアートイベントなどを研究しているわけではないので、他の美術祭と比較できるほど知識はないのですが、この原始感覚美術祭は限りある時間の中で効率よく作品を見て回る、という美術祭ではありません。帰りのバスの時間が迫っている中で、効率よく作品を見て回ろうと焦っていると、「どうして、そんなに急いでいるの?」と木崎湖に問いかけられた気がしました。帰りの時間も忘れて作品を探して彷徨う、それがこの美術祭の魅力の一つなのです。
 
いきなり話が逸れますが、小林先生のブログを読んで、新歌舞伎座のバリアフリーに関する十二代目市川團十郎さんの言葉を思い出しました。確か『文蓺春秋』でのインタビューだったと思います。そこで彼は、100パーセントのバリアフリーではなく、90パーセントまでにしてほしい、最後の10%はお客様の力で、自分の座席に行っていただくことが大切だと述べていました。また、バリアフリーではないからこそ、お互い助け合おうという気持ちが生まれる、またお客様も自分の力で三階席に辿りつくことでより満足した気持ちで歌舞伎を鑑賞することができる、と。今回の美術祭も全く同じで、すぐに作品が見つかっていたら、「おー!!あった!」という喜びを感じることはできなかったですし、作品を探す中で、道端に生えている東京では見たこともないような植物や草むらの中に潜んでいる小さなカエルに気付いたり、少し気味が悪いお堂など大町の不思議スポットを見つけて観察することもなかったでしょう。作品探しが実は大町の魅力探しに繋がっていたのです!
 
「自然との対話」「宝探しのドキドキ感」「みんなとのんびり見て回る」、これが今回の訪問で感じた美術祭のキーワードです。今後、作品の見つけづらさを全て解消してしまうのではなく、3つのキーワードをコンセプトとして強調することでより多くの人が美術祭を楽しむことができ、またそれが大町の魅力に気付くきっかけとなればいいなと思いました。そのために、残り半年間どう関わることができるか考え続けたいと思います。

東京から片道約4時間かけて大町に通うことができたのも、美術祭を通して得られる解放感、そして木崎湖や大町という土地が刻むリズムが心地よかったのだと思います。一緒に回ってくださった先生、研究室のみなさま、ありがとうございました。
 
原始感覚美術祭は今週末までです!9月7日(土)、8日(日)には、「原始感覚美術祭プレミアムツアー」と称して、田口ランディさんがコーディネートする原始感覚体験型ツアーも行われます。

 (論文執筆が進まないM.Hでした。どうしよう、再来週中間発表だ。)

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