2013年2月3日日曜日

JAZAシンポジウム


公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA) 主催、 300名の定員が1週間弱で満員になった注目のシンポジウム「いのちの博物館の実現に向けて──消えていいのか、日本の動物園・水族館」に行ってきました。

【概要】
動物園や水族館の最大の魅力は、生きた本物の動物に向かい合い、体感できることです。
しかし、近年、動物園・水族館をとりまく環境は厳しく、新たな未来像が求められています。
このシンポジウムでは、動物園・水族館を「いのちの博物館」ととらえ、その果たすべき役割、課題などについて考えます。
◎開会・問題提起 「消えていいのか、日本の動物園・水族館」 山本茂行氏(JAZA会長、富山市ファミリーパーク園長)
◎基調講演──1「動物園の現状と飼育動物繁殖の問題点」 日橋一昭氏(JAZA生物多様性委員長、埼玉県こども動物自然公園園長)
◎基調講演──2「水族館の現状と問題点」西 源二郎氏(東京都葛西臨海水族園園長)
◎パネルディスカッション 
 コーディネーター 木下直之先生(JAZA広報戦略会議委員、東京大学教授)
 パネリスト:大橋民恵氏(JAZA広報戦略会議委員、NPO法人市民ZOOネットワーク代表理事)、林良博先生(JAZA顧問、東京農業大学教授)、西源二郎氏(東京都葛西臨海水族園園長)、日橋一昭氏(JAZA生物多様性委員長、埼玉県こども動物自然公園園長)、山本茂行氏(JAZA会長、富山市ファミリーパーク園長)

「消えていいのか」というタイトルの裏には、「消えてはいけない」という意識と危機感がある訳ですが、それをより深く、
・どういった経緯でこのような危機感が芽生えたのか
・何故消えてはいけないのか
・どういう部分を消したくないのか
・消えない様にするにはどうすればいいのか
といった具合に掘り下げて行く、刺激的なシンポジウムでした。

パネルディスカッションでの主な議題は、
・飼育展示動物の減少、入手、保全、繁殖の問題
・ 動物福祉
・これらの施設(主に動物園)を取り巻く構造上の問題
・公共財としての生物及び施設
・社会的地位や存在意義の不安定さ(娯楽施設か教育機関か)
・動物園、水族館の理念を示すための法律、制度の整備の必要性
などがあり、フロアからも様々な立場の方からの御意見や質問が飛び交っていました。

個人的に印象的だったのは、動物園の方々が「戦後型」動物園(復興の装置として各自治体に作られた)のシステムの限界とそれ故直面する挑戦について多く言及したのに対し、水族館は種の保全・館の運営といった側面において多少異なる立場にある、という点でした。
水族館が1987年以降、新規開館あるいはリニューアルを数多く果たし、大人も楽しめるテーマパーク化していったのに対し、動物園の方は近年そうした事例がほとんどないというデータに驚きました。
域外保全や人間形成において動物園・水族館の果たしうる役割をアピールして行く事と同時に、それらをマネジメントして行く事の重要性を改めて感じました。

「JAZAが全体のシステムの中で動物園・水族館に関する共有できる価値を広め、責任を負って行く」という山本会長の力強いお言葉もあった通り、このシンポジウムは今後日本各地を巡回して開催されます。
私達が一回限りではなく継続的な関心を持って、「いのちの博物館」の未来を議論し、より良い未来を模索する事が大切である、と林先生がおっしゃっていましたが、自分たちの社会に関心を抱く姿勢は、この「いのちの博物館」に限らず、あらゆる方面において現代社会に生きる人達が育んで行くべきものであると考えます。

今回参加された方も、残念ながら出来なかった方も、是非JAZAのウェブサイトをご覧下さい!

そういえば、日橋園長の講演の最後に出された、キジの飼育保全上の優先順位の答えは結局・・・?
(M.O)

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