2015年5月6日水曜日

初夏到来。20時くらいにならないとネオンは夜に映えません

先日ネオン博物館に行ってきました。
第二次世界大戦で壊滅したワルシャワでは、戦後に復興と称して多くの社会主義的な建築が建てられました。一般的に高官向け施設は豪華絢爛で権威主義的、労働者向けの団地はひたすら真四角で素っ気ないです。今でも厳めしい労働者の石像やレリーフなどを見つけることができます。現在ではそれがお洒落なミニシアターやカフェバーに改装されていたり、レリーフの真下にケンタッキーフライドチキンがあったり、団地を地域コミュニティーとして見直したりとそれはそれで興味深いのですが、今日は別の話です。 
 


1956年のスターリン批判以降、ポーランドでも当局の締め付けが若干緩み、労働を讃美する怖い石像の代わりに資本主義に繋がる広告を設置してもいいだろうと判断されました。その結果、196070年代には社会主義国ながら広告の黄金時代が到来するというやや矛盾した現象が起こります。ネオンはその流れで重要な役割を担い、右の化粧品広告のように今も現役というものも結構あります。
問題は時代の変化に伴い、時代遅れや不要と判断されたネオンをどうするかです。かつては公共建築ではなかったからこそ栄えたネオンが、今度は公共建築ではないからこそ広告としての価値を失えばそのまま撤去や処分の道を辿ることになりました。そこにIlona Karwińskaという写真家が登場します。彼女は2005年よりポーランド中の面白いネオンを写真に収めるプロジェクトを始め、その多くが存続の危機にあることを知ります。そこで彼女はDavid Hill とともに2012年に本施設を開館しました。 
 

 
博物館はまさしく倉庫といった感じで、入館者が来る度に係員が主電源を入れる省エネ運営。ブーンという音を聞きながらネオンに添えられた説明を読むと、その多くが2000年代に元の場所から撤去されて本施設に寄贈されていました。閉店や経営難によりここにやってきた“作品”が多かったのですが、面白いところでは2012年に行われたワルシャワ中央駅の大規模改装に伴っていらなくなった古い電光掲示板などもありました。それでも寄贈品の全てに電気を通して壁に掛けるだけの場所はなく、床にもネオンの山。それでもデザイン性の高さを見るには十分で、運営側がこれを後世に残すべきだと判断した気持ちはよく分かります。元々の役割を失った物を一種の美術品として保存・活用しようという意味でも、ここは正統派の博物館といえるでしょう。
その設立経緯もあり、本施設はあくまで私営博物館として機能しています。それでも本館が街に残るネオンの整備を担当したり、新たにパブリックアート(≠広告)としてのネオンが登場したりと古い時代の物を見直す動きはネオンにおいても広まっている模様です。
(N.N.)
 

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