2013年3月15日金曜日

大町市訪問感想(2)懇親会と二日目の見学


連続投稿で失礼します、大町市訪問感想(1)の続きです。
フォーラムの後開催された懇親会は、市長や行政職員、市民団体の方々など50名程の方にお集まり頂いていたかと思います。
私は主に、地方紙である大糸タイムスの社長及び記者の方、市の保育施設に勤務されている保育士(行政職員)の方のお話を伺う事が出来ました。


大糸タイムスの方は、「今回集まってくれた市民の方達のほとんどに取材にいったことがあるが、それを今まではばらばらに紹介していた。メディアはこれらの繋がりに貢献しなくてはならない。」と仰っていました。実は皆が「繋がりたがっている」けれど、その具体的な方策を市民や一企業レベルだけで果たすのは難しいのだと思います。
文化とまちづくりの関係について熱心に考えていらっしゃるようで、特に記者の方は熱っぽく語って下さりました。
一方で、「東京から見てー」「東京と比較してー」といったキーワードが多かった事から、自分たちのまちを相対的な視点で見る事に関心があり、また「安曇野・白馬」といった長野県で有名な他地域名や「大町のことを皆知らない」といった話題の頻出から、大町の事を外の人(特に都会の人)に知って欲しい、もっと来てもらいたいという思いがある事がわかりました。
大糸タイムス記者の方は、あるアニメのロケーションに木崎湖が選ばれて以来、年間100回も訪れた人がいるという話をして下さり、文化は「自分たちのまちの風景をそれぞれの人の中で特別なものにする力」があるのだと思うと仰っていたのが印象的でした。
そして、生徒数の激減により閉鎖寸前の美麻地区の小学校や、高齢者の外出を阻害する冬の厳しさ、産業の衰退など、現実の厳しい課題にも直面しており、そちらの方も文化面とは別に解決すべき問題であるとの認識を持っておられました。
これらの点から、原始感覚美術祭の神原さんが「私達も行政と同じ事を考えている」と仰っていた様に、行政が課題として捉えている事は民間の間でも一定程度共有されている様子が分かりました。

他方、市の保育士の方も同じ様な問題意識を共有しておられましたが、大町ラボラトリの配布資料の中に商店街の真ん中を小川が流れ、左右に緑化した道が広がるというイメージ図をご覧になった時に「これすごい、これを是非実現させたい、これがあればお年寄りもみんな日中外で楽しく過ごせる」と目を輝かせていたのが特に印象的でした。


二日目は、私たち小林ゼミ生が鳥取で行われた日本文化政策学会(3月9日-10日)のポスターセッションに向けて作成したポスターを用いて、市長に私たちの活動をプレゼンし、学生はそこから市内見学に向かいました。
訪れた場所は下記の通りです。
1)わちがい http://www.wachigai.com
2)麻倉 http://asagura.com
3)西丸震哉記念館 http://nishimarukan.com
わちがいは古民家を改修し出来たとても風情のあるカフェレストランで、暖房設備がない代わりに薪を焼べたりとあたたかな心遣いが感じられる場所でした。東京でこんなお店があったら流行るだろうな、と感じました。一方でそれぞれが独立した部屋として存在している一部を市民開放としたギャラリースペースに見に来る人はどのくらいいるのだろうと思いました。

ヒッピー運動や半農半工ブームを通じて、長野県(特に松本の方)でクラフト文化が根付いていた中、たまたま同じく工芸の盛んなメンドシーノ(アメリカ)と国際交流を行うに至ったという経緯を含め、 麻倉ではプロジェクトリーダーの小田さんにお話を伺う事が出来ました。「全体の方向性を規定するのはディテールなので、連携しようと言うだけではだめ」というお言葉は、やはり実践者の視点として重要だと思います。
倉自体が物語るものが多いだけに、下のギャラリースペースが白いパネルで覆われているのが少し残念でした。とは言え、大事な倉に直接釘を刺したり穴をあけたりするわけにもいかないので、こういう選択肢になったのかと思います。

西丸震哉記念館では、写真や標本記録など面白いものを見る事が出来ました。立地条件や施設の規模的に、単体で大きな集客を見込むのは難しい部分があるかと思いますが、原始感覚美術祭が行われる地域に相応しい資料館だと思いました。個人的には館内に展示されているイラストがとても良かったです。

最後の山岳博物館は、良い意味で予想を裏切られました。展示している資料自体おそらく貴重で、しかもそれぞれにドラマがあり面白かったです。山を楽しむ/山と共存していく上で意義のある展示資料だと思います。また、併設された動物園は山の斜面をそのまま用いて飼育展示をしており、特にカモシカについては限りなく自然の状態に近いと思われる状態で見る事が出来ます。駅から若干遠い(徒歩25分)ですが、ちょっとした工夫でもっと楽しんでもらえる施設だと思いました。

そんなわけで、あっという間の長野県大町市の訪問が終わりました。
ちなみに、初日の懇親会で出た信州リンゴ、二日目のイタリアンレストランで出た信州リンゴピザがとても美味しかったです。特にピザの方は、りんごとはちみつ、胡椒とチーズだけというとてもシンプルなものでしたが、りんごの柔らかな甘さと胡椒・チーズの組み合わせがマッチしており、皆大絶賛でした。
私にとっては今回が初めての大町市訪問でしたが、実際に現地に行って行政・市民の方達とお会いしまたまちに触れる中で改めて一年間の活動を振り返る機会になりました。
今回のフォーラムを受けて「今後どうしていくのか」という事を今一度真摯に考える一つのターニングポイントに大町市は来ていると思います。市はどのような方向へ進んでいくべきで、そのためにはなにをすべきなのか、また小林ゼミ生としては何ができるのかを私達も再考するときにあると感じました。
(M.O)

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