2013年8月3日土曜日

幽霊のアトリビュート ―常呂から日本橋へ―


 無事東京へ帰ってまいりました、(志)です。

 常呂滞在中に近隣の博物館見学の機会を多く与えていただきました。知床の自然とかアイヌ文化とか地域の特徴を生かした展示が多く非常に勉強になったんですがね、その中のあるひとつの展示物を見て考えたことをさくっと書きます。
 その展示物は「むかしの暮らし」的なコーナーの江戸か明治くらいの一般家庭の生活空間を再現した展示の中に置かれていた1本の「ひしゃく」です。
 そのひしゃくを見て思い出したのは船幽霊の一種で「ひしゃくをくれ~」言う幽霊です。ちゃんとしたひしゃく渡しちゃうとそれで船に水を汲まれて沈没させられてしまうから穴のあいたひしゃくを渡さないといけないよ、っていうヤツですね。あの幽霊が想像(創造)されたのってやっぱり「ひしゃく」っていう道具が生活の一部にある身近な存在だった時代だと思うんですよね。でも現代の日本の生活様式ではひしゃくってそんなに身近なものじゃないですよね。神社行ったりした時たまに使うくらいで。だとしたら現代の幽霊って何持ってるかな~?って考えたらですね、例えば貞子は呪いのビデオ(VHS)に映ってて最終的にテレビ(ブラウン管)から出てくるし、『着信アリ』は携帯電話(ガラケー)だし。そう考えていくと幽霊が持ってるものって進化してるんだな~と思ったわけです。逆に100年後の幽霊って何持ってるんだろうなって考えると面白いですよね。要するに幽霊の持ち物には僕らの生活が反映されるわけですからね。空飛ぶ自動車に乗ってたらおばけにヒッチハイクされてびっくり、とか、火星旅行に向かうロケットの窓に手形が!!とか。その状況のせいで全然怖くないですよね。時代時代における「幽霊」像を考えることって人びとがその時代に何を持っていたか、何を知っていたかによって変わってくるんだろうなあ~ということをそのひしゃくを見つけた瞬間考えたわけです。2秒くらいで。

 そんなことを展示を見ながら考えてみたい方は日本橋・三井記念美術館にて開催中の『大妖怪展―鬼と妖怪そしてゲゲゲ―』に足を運んでみてください。江戸時代の百鬼夜行絵巻から水木しげる氏が描いた妖怪たちが出迎えてくれます。時代によって幽霊とか妖怪とかの“もののけ”の類がどんな想像力で描かれているかが明確に反映されていて面白いですよーっと。
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

 真偽のほどはわかりませんがスタジオジブリの名作『平成狸合戦ぽんぽこ』には百鬼夜行のシーンをはじめ随所に水木しげる先生がデザイン協力をされているそうですな。

(志)

1 件のコメント:

  1. この記事を書くに当たり「本当にひしゃくは古い道具だと言えるのか?」と疑問に思いネット検索をかけたところ“ステンレスひしゃく”とか“テフロンひしゃく”とかのコンテンポラリーひしゃくがいろいろ出てきて戸惑ったのですが「まあいいや」と思い押し通したというのは事実です。
    (志)

    返信削除