彼女は小劇場で女優をやっていたり、現代アート好きだったりのインドア派でしたが、40代からハイキングをはじめました。ことあるごとに登った山の写真を見せてくれてましたが、段々と「えっ、こんな断崖絶壁登ったんですか?」という感じで、登山熱がかなりエスカレートしていく様子がうかがえました。次に進んだのが「トレイルランニング」で、いわゆる山を走るハードなジャンルです。耐久レースにも出ていると話を聞いていましたが、今回の「ULTRA -TRAIL Mt.FUJI 」も山岳耐久レースのひとつで、富士山のまわり一周(約161㎞)を制限時間46時間内で走ります…。(http://www.ultratrailmtfuji.com/参照)
4月26日(金)15時スタートで、そこから黙々と走ります。夜になっても走ります。「熊鈴持参のこと」なんていう勧告もあり、熊まで出てくるのか!とびっくり。元上司は「今年は125㎞でリタイア、来年こそ1周するぞ!」と意気込んでいました。私にはあり得ない世界なので、ただひたすら話を聞くばかりでしたが…。
夜の闇の中に浮かび上がる月に照らされた富士山は、それはそれは美しいものだそうです。眠らずに走っているので幻覚も現れるそうで「地面にイラストタッチの人の顔が見えてくるよ~」と笑っていました。ランナーズハイこそが今の彼女にとって、とてもアーティスティックな究極の体験らしいのです。彼女はまた、自らのことを「現代の山伏」とも言っていました。肉体の限界をかけて、思考も何もかもかっ飛んでしまうような状態で山を駆ける行為は、まさに修行、まさに荒行。世界遺産登録でも「富士山信仰」がポイントだったようですが、仰ぎ見る我々ばかりでなく、山裾でぐるぐると現代の天狗とも見えるランナー達が走っていたりするわけで、さすが「霊山不二」だなあと登録ポイントから外れたところで?感心しているのでした。 (Mube)
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