2013年5月14日火曜日
皇居遠足と台湾映画
神田祭に参加されたみなさま、お疲れさまでした。
先月のことになりますが、文化資源学会の遠足に参加しました。「皇居一周今度は時計回りで」と題された第51回は、参加全員が蘊蓄なり思い出なり何か一言を語るという趣向。ランナーとすれ違いながらひたすら歩き、歴史、劇場、図書館、噴水、都市整備、植樹などなど、各コメンテーターの関心によって多様な視覚から切り取られた風景を共有する、味わい深い土曜の午後でした。「春風の遠足」のはずが本降りの雨で、とても寒かったですけど。
今もひときわ印象に残るのは、戦前日本における観光を研究テーマとされる方の解説です。植民地統治策の一環として、台湾からとくに原住民族の部族代表者を招いて日本各地の軍施設や名勝地を回る観光旅行が行われていたことを紹介され、「宮城を前にやはり涙した」旅行者の様子などが記されている当時の文献に言及されました。
というのも、偶然ですが、ちょうど前日に台湾映画「セデック・バレ」(魏徳聖監督作品2011年)を観たところだったからです。日本の植民地支配下にあった台湾中部の山村・霧社で、先住民が日本人134人を殺害した武装蜂起、「霧社事件」(1930年)を扱った作品に、未知の歴史をつきつけられて考えさせられました。この中で、誇り高く、常に猛々しく戦闘的なセデック族の頭目(主人公)が、躊躇と怖れをみせる唯一の場面が、「文明国」日本への招待観光視察旅行を回想するシーンだったのです。
ひじょうに上手い要を得た脚本だと思いました。「文」と「武」という風に対立させて語られるけれど、文化の認識の在り方は武力以上に他者を抑え込む力になるのだという一点が強く意識に残っています。ここからもう少し掘り下げたいところですが、またあらためられればと思います。ただ、見慣れた風景がちょっと違って見えてくるようなきっかけでした。
(ykn)
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