2012年7月10日火曜日

子どもと劇場


日曜午後、キラリ☆ふじみの「サーカス・バザール」に足を伸ばしました。準備から片付けまで手伝われていたM1の方々には、ご苦労さまでした。「おつかれさま」と声をかけに行く間もなく、「かぼちゃサーカス」のクラウンに案内されてフィナーレ・ショーが始まる劇場に着席してしまったのですが、周囲は子ども、こども。就学前の小さな子どもたちとその両親も多かった。隣席では、1歳にもなっていないのでは?という赤ちゃんみたいな子が、バナナのたたき売り、マイム、ジャグリングなどが繰り広げられる舞台を一心にみていました。あんなに小さくても、舞台上の異空間に惹きこまれるものなのか、舞台をみつめる集中力は強靭でした。(仮称)富士見市文化芸術振興条例(案)に「次代を担う子どもたちの感性や創造性」という部分があったことを思い出し、これから富士見市の子どもたちはどんな体験をすることになるのか期待しています。

もうひとつ思いだしていたのは、パリのオペラ・コミックで日曜午後にリュリの「カドミュスとエルミオーヌ」を観たときの光景です。窮屈な3階桟敷席(それでも65ユーロ)から身を乗り出すようにして観ていたので、劇場内全体がよく見えました。観客の年齢層がかなり高い一方、アフリカ系が多い小学校高学年くらいのグループが引率されてきているな、学校の行事かしら?と開演前に思っていたら、彼らはかなりの上席にばらばらと一人ずつ座っていたのです。劇場が高価な残席を贈ったのだろうと思います。ルイ14世時代の演出を再現した舞台の鮮やかな色彩をとり合わせた豪華な衣装、白塗りのお化粧、宙乗りで登場するダンサーの軽妙でアクロバティックな動き。舞台上に蝋燭が並んだ照明や、火を使った演出、ハリボテの蛇や龍のコミカルさ、バロック独特のリズム感や、端正で可愛らしいバレエ・・・。両親や祖父母と一緒に来ている子たちよりちょっと緊張気味に見えた子どもたちは、プロフェッショナルが力を尽くした舞台をじゅうぶん楽しんだかしら、この経験をどう持ち帰るのかしら?と興味を惹かれました。このプレゼント、劇場側の判断に加えて、おそらくお世話役のボランティアの手がたくさんはいってはじめて成り立つと思われます。オペラ・コミックは国立劇場(TN)のひとつだけれど、独自の歴史をもつ独立した一劇場としての矜持をみた思いでした。

劇場全体をある日公園のような空間にして、大道芸で客席を子どもたちに開くのはきっと長い歴史のはじめの一歩。そこで創られる舞台作品を愛する人が増え、作品をより多くの人に体験してほしいと考える人が地域に増えるとき、劇場と子どもの関わりもまたさまざまに変化を遂げるのでしょう。
(ykn)

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