文化経済学会前に貼り逃げ、M.Oです。
プログラムを眺めていたら、分科会の発表題目の中に面白いものを見つけました。
Curators
TVです。
2012年4月13日より大阪市立大学都市研究プラザが中心となり公開しているプロジェクトで、キュレーターの「語り」に焦点を当てることでアートへのアクセシビリティを高め、クリエイティブ・ネットワークの構築を目指しています。
これまで各館で別々に内部記録として保存されて来た美術館のギャラリートーク、講演会やアーティストトーク(ギャラリーなどで行われるものは記録されていない場合も多い)を展示と共にアーカイブし、ウェブ上で公開するーこれはアクセシビリティ向上と「現代アートなんてよくわからない」と思っている人へのアプローチであると共に、研究サイドからすると非常に有益な試みです。
美術館で行われるトークは、比較的「館の公式見解」的性質が強いと考えられるため、他の資料(カタログなど)をあたると後からでも情報として部分的であったとしても補足が可能かもしれません。ところがそれ以外の「語り」や「出会い」であればどうでしょうか。
美術批評家で2011年よりパリの国立美術学校(Ecole nationale supérieure
des Beaux-arts, Paris)校長でもあるNicolas Bourriaudが1998年に「オープニング・レセプションの重要性が高まっている」と述べたように、展示されている作品だけでなく(時にはそれ以上に)、人と人の間にどんなシナジーが生まれるか(誰がどこの展覧会開場に居た、どこそこの人が誰と懇意か、その場で誰がどんな発言をしたか等)が現代美術界の動きの中では重要なファクターであることは否定出来ません。
しかしながら、世界的に同時並行的におこっている全ての会場に足を運ぶなんて身体が幾つあっても足りないし、もしも仮に沢山の協力者が世界中にいて皆で分担して行けたとしてもそれをどうやって論理的に依拠出来るソースにする事が出来るかと言えば、難しい所です。
そもそも、そんなものを記録したらプライバシーの問題や秘匿権、著作権の問題など(誰がどこで何を幾らで買おうとしているなど絶対表に出ないし知っていても出せない情報ばかり)色々あるので実際問題として不可能だというのは分かっていますが、そんな中で、限定的ではあれ「語り」を記録・保存・活用しようというCurators TVのような活動は、今後の研究環境に発展をもたらしてくれるのではと思いました。
学会では、Curators TVを運営する一般社団法人WORLD ART DIALOGUE
のCEO・クリエイティブディレクターの鈴木大輔氏が分科会でご発表をされるとのことです。私は別の部屋の担当なので残念ながらご発表を拝聴する事が出来ませんが。
先日別の学科の先生が「批評や議論が巻き起こる事でその産業・業界が発展していく」と仰っていました。今日から始まる学会が、アートを取り巻く様々な取組みを学問的に議論する場としてアート環境の発展に繋がり、またいらっしゃる皆様にとっても有意義なものになるよう、私もその一助となれるよう努力したいと思います。
(M.O)
参考文献:Nicolas Bourriaud, Relational
Aesthetics, Dijon, Les presses du réel, 1998.
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