ブログを書くのがずいぶん久しぶりになってしまいました。meroeです。
文化資源学M1が準備中の文化資源フォーラムについての話し合いのなかで、食品サンプルの話題が出ました。
興味をもち、野瀬泰申『眼で食べる日本人ーー食品サンプルはこうして生まれた』(旭屋出版、2002)という本を読んでみました。
食品サンプル誕生のいきさつについては従来はっきりしたことがわからなかったそうですが、この本は自家出版の伝記、白木屋の社史、関係者の家族の聞き取りといった資料を通してその謎に迫り、食品サンプル発生の時期やその草創期を担った人物たちを明らかにしています。
食品サンプル需要の背景にあった日本の食生活の変化や、韓国や中国での日本の食品サンプルの受容についても触れられており、とても面白く読みました。
以上の内容については本を読んでいただくことにして、約10年前に書かれたこの本では、食品サンプルは「空気のように」存在しており、あちこちにあるのにもかかわらず誰も改めて考えてみたりしないものだとされています。
しかし、この10年の間に状況はずいぶん変わっているのではないでしょうか。
「元祖食品サンプル屋」(スカイツリーのふもとのソラマチにあります)の人気に見られるように、現在では食品サンプルというもの自体への関心が飲食店関係者を越えて一般の人々にも広がっているように思われます。もちろんそこの商品は、サンプルとしてお店に置くものではなく、雑貨(キーホルダー、マグネット、ペン立て、カード立て等)、あるいは観賞用のものが中心になっています。
(小学校の教員をしている方へのプレゼントにここでみかんのペン立てを選んだことがあります。職員室の先生の机の上にペンのささったみかんがあったら楽しいと思って!)
また、食品サンプル製作体験キットが商品として発売されているのに加えて、体験教室も開かれています。いまや、食品サンプルは「空気のよう」な存在ではなく、それ自体興味を引くもの、見て楽しんだり、一般の人でも作って楽しんだりできるようなものになっているのでしょう。
「元祖食品サンプル屋」は株式会社いわさきという、上記の『眼で食べる日本人』でも食品サンプル生みの親のうちのひとりとされる岩崎瀧三が設立した会社が運営するお店です。そんな「元祖食品サンプル屋」のウェブサイトで気になるのは、「伝統的な食品サンプルづくり」「伝統の技」などのことばです。
販促ツールとしてではなく食品サンプル自体への関心が高まると同時に、食品サンプルもある種の「伝統的」な「日本文化」であるという認識が生まれた、あるいは会社としてそれを打ち出している、そしてその技術は陶芸や竹細工、ガラス工芸のような(?)伝統工芸の色を帯びてきている、ということなのでしょうか。
私も食品サンプルづくりの体験をしてみたいです。
(meroe)
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