2012年11月18日日曜日
四言語対応の意見交換会@シンガポール
色々おしい!シンガポールの多言語対応案内板
フィリピンから言葉のお話があったので、シンガポールの様子もお知らせしたいと思います。
シンガポールは英語の国という印象があるのではないかと思いますが、シンガポールで話されている英語・Singlishは、日本人の思い浮かべる英語とはかなり異なります。また、街中では中国語(北京語)を耳にすることが多く、道路標識やTVには公用語である英・中国語に加え、マレー語(国語)、タミル語が用いられています。
そんなシンガポールで、アーツカウンシル(NAC)が多言語の意見交換会を開催するというお知らせを目にしました。この意見交換会はNACが主催するシンガポールの代表的な国際芸術祭Singapore Arts Festivalの見直しに際し、広く市民の意見を取り入れようと開かれたもので、10月29日から11月1日までの四日間に英語、中国語、タミル語のセッションを開催。それぞれのセッションには該当言語が堪能な芸術文化関係者(フェスティバル再検討委員会のメンバー)がファシリテーターとして名を連ねいました。地元紙によると、アーティストや教育関係者、学生など四日間で100名近い参加者が訪れたそうです。
英語の講演会の質疑応答でも、お年寄りが多い場合は「中国語でもOKですよ」と声がけされているのは見ていましたが、四言語対応の意見交換会とは!こうした形式の話し合いがシンガポールでどのくらい一般的なのかは分かりませんが、多言語の社会ならではの現象だと感じました。自分が心置きなく話せる言語での議論なら参加者も、表現活動に密接に関わる感情や世界観の微妙なニュアンスを伝えやすくなるのではないか・・・自分の方言(三重弁)で語り合ったほうが気持ちが入るし。そう思う反面、最初から言語別に分けて意見を集めたら、”母語や文化的背景が異なる人同士がつくり上げる表現”等にまつわる意見は取りこぼされるのではないか、という気もしてきました。複数の言語のセッションに参加した人が居たなら話は別ですが。
Singapore Arts Festivalについては、今年1月に発表されたThe Report of the Arts and Culture Strategic Review(ACSR)のなかで開催期間の見直しが提案されていました。多言語意見交換会に先立ち7月に開催されたアーツカウンシルと芸術文化関係者の意見交換会では、Singapore Arts Festivalの意義や目指すところが曖昧だとかなり厳しい意見が出ており、そもそもこの芸術祭に関されている”Singapore”とは何を意味するのか、という問いかけは今まさに「シンガポールらしさ」を生み出そうとしているこの国の文化政策の核心をつくものだと感じました。「中華系、インド系、マレー系、その他」という個別の文化的背景は残しつつ、それらが共存する姿が「シンガポールらしさ」なのではないか、そんな思惑で今回の意見交換会が多言語で開催されたと勘ぐるのは、ちょっと考えすぎでしょうか。フェスティバル見直しに関しては再検討委員会の提案とNACの回答が来年にも取りまとめられるそうなので、公開されたらどんな意見が吸い上げられたのかチェックしていきたいと思います。
(齋)
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