2013年9月18日水曜日

韓国体験プログラムで見て来たこと


とても久しぶりの更新となってしまいました。

この夏休み、本当に貴重な体験をいっぱいすることができたと思っています。
少し遅くなってしまいましたが、そこで見て来たこと、感じたことを少しずつお話ししたいと思います。

まずは、韓国でのフィールドワークのことです。
今回、先生が企画された学部生の体験プログラムに参加させていただき、ソウルと釜山における文化によるまちづくりの現場を見て参りました。
ここでは、様々な文化施設、取り組みを見せていただき、また現場で活躍されている方々のお話も伺うことができました。
観光では行ったら知ることのできない側面を見ることができ、いかに文化に対する取り組みを重要視し、うまく動かす仕組みを作ろうとしているかを見ることができたと思います。

その中で、印象に残っている取り組みをいくつかお話したいと思います。

まずひとつ目は、ソウル文化財団が行なっている「新堂(シンダン)創作アーケード」です。
東大門エリアの東側にある中央市場の地下にある商店街での取り組みです。
「新堂創作アーケード」
左手に見えるのは刺身屋。
中央市場は、90年代頃までは南大門市場、東大門市場に続く3大市場と言われ、とても繁栄した地域だったそうですが、だんだんと人が来なくなってしまい、2008年くらいには地下商店街は真っ暗になってしまったそうです。
そこで、2009年にソウル文化財団の「芸術創作空間」という取り組みの一貫で、元気のなくなってしまった空間を文化で生き返らせようということで、地下商店街をリニューアルしました。
400m弱ある地下商店街には刺身店が並んでいましたが、その空き店舗を若手アーティストの創作空間として提供することで、市場の活性化を図るとともに、若手アーティストを育成することも目的とされているそうです。
若手アーティストによる作品のひとつ。
作品を制作するだけではなく、展示もしていた。
入り口のひとつ。
天井もアートで華やかにされている。
2010年のオープンのときには、市場で働く人たちとアーティストが一緒になって伝統的な漢紙を用いて提灯を作り、市場のアーケードに飾り、また、オープニングパレードとして市場で働く女性がPSYの「江南スタイル」を踊ったりしたそうです。提灯づくりをしたことで、漢紙の伝統的な技術を身につけ、それが市場の女性の内職になっているということでした。また他にも、若手アーティストが市場のお店の看板を作ったり、アーティストと市場で働く人が交流も活発に行なわれているそうでした。
市場で働く人とアーティストによる提灯。
これから市場の通路を使ったミュージカルを作ろうとしてるそうですが、この「新堂創作アーケード」における目標はアーティスト自らが運営できるようになることだとおっしゃっていました。

また、そこでソウル文化財団の方がおっしゃっていたことで特に印象に残っている言葉があります。それは「BoomとTrendがある中で、Trendがいい」ということです。Boomでは一瞬のできごとになってしまうけれど、Trendになることで流れをつくって、他に影響を及ぼすことだとおっしゃっていたと思います。


またふたつ目は、釜山にある「映画の殿堂」です。
「映画の殿堂」外観。
釜山映画国際フェスティバルのためにつくられた映像複合文化施設ですが、CINE MOUNTAIN、BIFF HILL、DOUBLE CONEの3つの建物で構成され、3つの上映館と1つの劇場、映画教育センター、屋外シアターなどがその中にありあます。基本設計はオーストリアの建築家設計事務所であるコープ・ヒンメルブラウによるもので、とても芸術的ではありますが、少し不安になるような、そんな建物でした。
外観。
屋外シアター俯瞰。
一般の人に対しても映画に関する講座を開講していたり、視聴覚室を公開してアーカイブをだれもが触れることができたり、釜山市がアジアを代表する映画・映像都市を目指しているということがとても伝わってくる施設でした。


最後は、釜山の甘川(ガムチョン)文化村です。
「甘川文化村」入り口。
甘川というのは、しばしば釜山のマチュピチュと称されるそうですが、山の斜面に家屋が並び、路地が入り組み、集落を形成しています。現在0.62㎢の中に9677人が住んでいるそうです。この地域は、戦争によって避難して来た人が住み着いた場所でありますが、スラム化しつつあったそうです。例えば、未だに共同トイレであったり、通路が整備されていなかったり、また空き家は全体の5%の210万戸を占めていたそうです。そんな中で国による「村・美術プロジェクト」に応募し2009年から、芸術家たちによるプロジェクトがスタートしました。
「甘川文化村」を見下ろした風景。
芸術家が作品を設置したり、空き家をギャラリーにしたりすることで、観光客が集まり、店舗や駐車場ができたり、通路の整備も行なわれ、また工事によって仕事も生まれ、メリットも多くありました。その反面、観光客が集まったことで、住民たちはそれまでのように生活することができなくなってしまい、平和が失われてしまったそうです。観光客は多く集まり、地域は再生されつつあるとも言えますが、テーマパークなのではなく、住む人がいるということを忘れてはいけないと思いました。
路地を見ると、住民が歩いていることがわかる。
これは私たちが見て来たものの、ほんの一部ですが、内容が濃くとても勉強になる6日間でした。研究の糧になるとともに、個人的に大好きな韓国という国の、今まで知らなかった一面を見ることができたことは本当にうれしかったです。

今回のプログラムに誘ってくださった先生、道中サポート・通訳をしてくださった先輩方、本当にありがとうございました。また、体調を整えられず、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。

最後に番外ですが、釜山の友人が連れて行ってくれた「金蓮山(クムニョンサン)」からの夜景です。
「金蓮山」から広安大橋周辺の夜景。
(tantaka)

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