書き始めると止まらずこのままだと大量の投稿になりそうな予感がしているM.Oです。
8/27
他の皆様が日本語ボランティアとソウル大学日本語専攻学生との交流を行っている中、私は一人ソウルの現代美術施設を巡りました。
まず朝から向かったのはヘイリ芸術村。
ヘイリ芸術村はアーティストたちが集まって暮らす街であり、おしゃれな雑貨屋さんやカフェ、ギャラリーや一風変わった美術館(陶磁美術館、昔の雑貨を集めた博物館、トリックアート博物館など)だけでなく、アーティストのアトリエが集結しています。更にアトリエをもつだけでなくそこで陶芸体験や料理教室などを開いている芸術家も多く、見るだけでなく実際に参加できるプログラムが人気を集めているそうです。その町並みは映画やCMの撮影にも使用されており、週末になると人でごった返すそうですが、私は平日の午前中に行った為かなり静か。それでも何組かのカップルが仲睦まじく歩いていました。
全体としてゆったりとした空間ですが、現在も拡張を続けているらしく工事がすすんでいました。あのような得意な空間に工芸を中心として集積させる事で販売や可視化の点で相乗効果が得られそうです。
一方コンテンポラリーアートという点で言うと、クムサンギャラリーという日本にも進出している韓国のギャラリーがここに居を構えたという事で気になっていました。そこを見るのが実は来訪の1番の目的だったのですが、あいにく現在は移転し跡地はミュージアムになっていました。やはり立地や客層から考えるとその場の瞬発力も重要である商売には向かないのかもしれません。
行った時間帯が悪かったのか、あまり見るべきものはなかったのですが、とにかく暑すぎたので韓国で初のパッピンスを食べて、もう一度ぐるっと一周し、昼過ぎには中央への帰路につきました。
その後江南方面へ移動し清潭洞にあるギャラリーを巡ります。
まずは、実業家であるヨ・ソンユン氏が1989年に立ち上げた基金が2010年にオープンした若手作家発信に力を入れる非営利のアートスペース「ソンユン・スペース」へ。
ちょうどYBAのジェイク&ディノス・チャップマンの個展「The Sleep of Reason」が開催中でした。イギリスらしいヒューモアで現代社会におけるモラルを切り取った作品群が十分なボリュームで展開されており、満足度の高い展覧会でした。
一階のカフェにはおしゃれなマダムや若者達がお茶をしています。
間髪入れず次へ、と思ったものの手元にあるのはギャラリーガイド冊子のかなり簡易な地図のみ(だいたいのギャラリーや美術館で無料配布しているしっかりした冊子なのですが、全て韓国語)。路地を歩き回り、漸く見つけたアラリオギャラリーは展示替えの最中でしたが、中を見せて頂きました。広々としているのは展示空間だけでなく倉庫も同様の様です。これまでやっていた展覧会はLandscape perceivedという結構ありそうなテーマで韓国人作家をフューチャーした物でした。幾つか支店を持つこのギャラリーではそれぞれにディレクターがいて個別に展覧会プログラムを組んでいるそうです。
その他、幾つか歩きながら見て回りました。
今手元に冊子が無いのでどの程度か正確な数字は不明ですが、このエリアには60件程度のコマーシャルギャラリーやアートスペースがガイドに掲載されており、「アートの新メッカ」などと呼ばれている訳ですが、行ってみると想像よりも寂しい感じでした。というのも行った時期の問題が大きく、閉まっているか展示替えをしている所が多かったためです。
ハイセンスなファッションが集積するアッパーエリアでどの様にアートが受け入れているのかが知れるかもと期待していましたが、ファッションブランドとギャラリーが同居しているビル(名前失念、ナム・ジュン・パイクのミュージアムあり)では閉店または移転してしまった所も多い様で、閑散としていました。ファッションへの感度が高い人が即アートを買い支えて行くはずという計算は、そう簡単には成り立たない様です。
仁寺洞や光化門付近にある大手ギャラリーは以前行った事があったので、今回はオルタナティブスペースを巡ります。
1999年にアーティスト、キュレーターや批評家の非営利共同体として誕生して以来、ソウルのアーティストラン・スペースとして名高いPoolは、2010年に「オルタナティブ」という枠から更に発展すべく新たに現在の場所でArt Space Poolという名前で再始動しています。
脇道に入った民家の中にひっそりと立つスペースの中では、ソウル・リヨン・バンコクのアートスペースで三部だてで展開されていたRunning on the Borders: Inter-cultural Negotiation and Adventures of Thinkingの第1部であるキム・キョンホによる「Magic Bullet Broadcasting Network」を開催していました。韓国でのオンサイトのデータとイランでの編集後のニュースビデオが並列されるビデオインスタレーションを通じてメディアにおいて行われる異文化間の表現の違いや在り方が見えてきます。
バスに乗ってソウル北部の高級住宅街平倉洞を進み、ガナアートセンターへ。
ここは、現代美術作品の展示は勿論、隣接する建物でオークションが行われる他、セミナーや体験教室などのプログラムが開催され、韓国の伝統工芸品や挑戦時代の家具などの展示販売をする工芸部やギャラリーショップを備える芸術の複合センターです。時間が遅かったので展示は見れませんでしたが、立派な建物でした。周りにも幾つか近代美術っぽいギャラリーがあった様に思います。
Poolと並んでもう一つ有名なオルタナティブ・スペースであるLoopにはたどり着いたものの、既に閉まっていました。
その後弘大に2007年にオープンした複合文化施設KT&Gサンサンマダンへ。若者で賑わう町の中に映画、ライブホール、ギャラリー、ショップ、アカデミー、スタジオを備えており、新人の表現の場として活用されているそうです。丁度私が行った時には韓国人の生活に関する様々なデータを集めた展覧会をやっていて、自分たちの生活を客観的な数値ではかれる事が面白いと若者で賑わっていました。
同様に時間の関係で回れなかったムルレは、開発が進み商業施設が並ぶ永登浦地域において昔ながらの町工場が残る鉄工団地で、時代の転換と共に空き施設が増えたものの住環境としては物音も酷く劣悪なため、市内相場からかなり安い賃料で借りられると言うこともあり、2000年代始めから鉄工場の上階にアーティストが作業場を求めてやってくる様になった場所。こうした動きを受けて2010年にソウル市が市の創作空間事業(詳しくはソウル文化財団部分で後述)の一環で「文来芸術工場」をオープンさせました。後から「工場の人達は昼働いて夜帰って行くけどアーティストは夜働きにくるよ」という至極真っ当なお話を伺い、遅くても行けば良かったと後悔。。。
こうしてソウルを縦断し流れ着いたのは、東大門。
市場で何か美味しいものを探そうと思っていたものの、気付いたら近くにあったチムジルバン(サウナ+健康ランド的なもの)に居ました。。。
おばさんがトドの様に岩盤浴で寝ている傍で、他のおばさんたちが話に華を咲かせています。
また共有スペースではおじさんやおばさんがテレビを見ていたり、若者がグループでおしゃべりしていたりと、社交の場であるという事がわかりました。
そこでスンドゥブチゲをすすった後、再びLさんと合流し、眠らない町東大門でファッションビルを視察しました。
東大門で露天を開いている人達は地方から行商で来て明け方のバスで帰って行くような人達だそうで、各地からやってきた様々なものが安価で手に入る場所だったそうです。現在は売値が上がってしまったと専らの評判だそうですが、それでも安い、安すぎる。
Doota!というファッションビルでは、地階にまだ若いエマージングデザイナー達が所狭しと居を構え、ここにはバイヤーも視察に来るそうです。日本ではデパートに入っているブランド=ある程度名の通ったものという感覚があったので、そうした人材発掘の現場にもなっているというのは驚きでした。
渡仏を控えていたため「洋服買って荷物を増やしたくない」という思いがあり目を瞑って歩きましたが、きっとじっくり見れば面白いものが沢山あったに違いないと残念に思います。
(M.O)
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