2014年4月22日火曜日

春休みのこと:文化施設めぐり

とうとうM2になったtantakaです。
もう新年度が始まって3週間が経とうとしていますが、春休みのことを少し書いてみたいと思います。

私は、春休みに10日間「建築・都市研修ツアー」というものに参加し、ル・コルビュジェの建築をメインに見てきました。
ニースから始まり、スイスに寄って、パリまでフランスを北上するという豪華なコースです。

ル・コルビュジェといえば、「近代建築の五原則」を反映させた「サヴォア邸」や「モデュロール」を用いた「ユニテ・ダビタシオン」、後期の代表作「ロンシャンの礼拝堂」などが有名ですが、建築だけではなく、都市計画の分野でも『輝く都市』を1933年に発表し、太陽と緑、新鮮な空気をだれもが享受できる都市を理想と掲げ、チャンディガールなどで実現させたことでも知られています。
今回の旅行では、そのル・コルビュジェのいくつかの代表作を見るとともに、それに付随していくつかの話題の建築や歴史の残る街などにも足を運んできました。

そのなかで印象に残っている、というよりも勉強になったものを3つここに書きたいと思います。

①Carré d’Art(カレダール)
「カレダール」と手前が「メゾンカレ」

フランス南部のニームという街にある現代美術センターとマスメディア資料館が併設された市の複合文化施設です。


1984年に行なわれた設計競技でノーマン・フォスターという建築家が選ばれ、1993年に竣工しました。


向かいには紀元前3世紀に建てられたMaison Carré(メゾンカレ)という寺院が建ち、また周囲にもヨーロッパの街並みらしい建物が並ぶ中、この「カレダール」は、鉄骨にガラス張りの外観で、とても異彩を放っていました。


しかし、実際にこの施設に入ってみると、利用者は絶えることなく、多くの市民に愛されていることがわかります。



本を読む人と話しながら作業しているグループ


この施設に入っていくほとんどの人が資料館を使っていて、何か調べものをしたり、本を借りたり、勉強をしたりしているようで、中には複数で作業しているグループもいました。







入り口前の階段でくつろぐ利用者たち

また、1階は少し地面より上がってあるため、入り口前は階段になっていますが、その階段には若い人たちがおしゃべりをしたりしながら過ごしている様子も見ることができました。











歴史的な街並みからは少し異質に感じられ、嫌厭されても不思議ではないように思いますが、利用者が空間をうまく使い、多くの人に愛されているように感じました。


②La Maison de La Culture et La Jeunesse(文化と青少年の家)

2つめは、ル・コルビュジェが設計したフィルミニの「文化と青少年の家」で、1965年に竣工しました。
「文化と青少年の家」外観と左側がスタジアムのトラック


フィルミニという街は、サン・テチエンヌという工業都市の近郊にある町で、工場で働く人が多く住んでいるそうです。








そこに、ル・コルビュジェは集合住宅である「ユニテ・ダビタシオン」やスタジアム、教会などを設計し、フェルミニのという新たな都市を構想しました。

横にあるサッカー場
スタジアムを隔てて反対側にある教会

ところで、「文化の家」とは、劇場や映画館、図書館や展示室などをもつ複合文化施設のことで、フランスの初代文化省大臣アンドレ・マルローによる「文化の民主化」政策の中核をなす事業でした。
フランス各地で「文化の家」は建設され、このフィルミニの「文化と青少年の家」もその事業の一環として建てられています。


施設内には、大小様々な階段状の座席の付いた部屋やスタジオ、ホールがあり、暖炉のある休憩室のようなスペースもありましたが、残念ながら私たちが訪れたときには、この施設を利用している人は全くいませんでした。

階段状の座席のあるスタジオ
暖炉のある休憩スペース


階段状の上から撮った部屋の様子
スクリーンではコルビュジェの
作品紹介映像が流れている


一部の部屋はル・コルビュジェの作品を展示したり、「文化の家」やル・コルビュジェの作品を紹介するための映像が上映されるために使われていましたが、それも本来の趣旨とはちがうのではないでしょうか。






入り口近くの様子


施設の横にある競技場ではスポーツを楽しむ青少年の姿が多く見られましたが、入り口のまわりには腰パンの若者たちがたむろし、施設自体に近付き難い印象さえ受けました。




サッカー場のようなスポーツ施設は多くの人に利用されているようですが、ホールなどを持った文化施設の難しさを目の当たりにしたように思います。
文化施設というものの意味、プログラムと設計の工夫について考えさせられる、そんな施設でした。


③Rolex Learning Center(ロレックス・ラーニング・センター)

最後は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校にあるラーニングセンターです。

ロレックス・ラーニング・センター外観


2004年に行なわれた設計競技で、日本の建築家ユニットSANAA(妹島和世と西澤立衛)が勝ち取り2010年にオープンしました。

88,000㎡もあるという敷地に、22,000㎡にわたる一層の建築から成り立っていますが、床面は緩やかに上下していて、とても独特な空間でした。




室内は図書館、学習スペース、カフェ、レストラン、ホール、フードコート、学生団体のオフィスや、キャリアセンター、ブックショップなどが、ほとんど仕切りなく配置され、大部分を自由に使うことができるようでした。

図書館入り口
学習スペース(私語厳禁のサインがある)










カフェ
レストラン


オープンスペースにはビーズクッションが置かれ、コンセントも配置されているため、学生たちの多くは、自分のスペースを確保して、床に直に座って、何かをしたり、寝ていたり、思い思いに過ごしているようでした。


自分の場所を確保して思い思いに過ごす学生達
スマートフォンを弄ったり寝ている人も多い


もちろんカフェや学習スペース、図書館を使っている学生も多かったですが、それ以上に圧倒的に床に座っている人が多かったように思います。

右側のガラスの部屋は予約して使う会議室
その外側では床に座って学生が思い思いに作業している
微妙なくぼみを自分のスペースにしている学生



床に設置されたコンセント
普段は蓋で隠されている

きっと椅子と机という形に縛られることなく自由に使えることが、学生たちの学習意欲をかき立てるのではと感じました。

私も、もしこの施設を使うことになったら、真っ先にコンセントとビーズクッションを確保して床に座って作業を始めると思います。




施設の外にも居場所を見つけて座っている学生たち

本当に「いろいろな」空間が揃っているために、学生たちは散り散りに自分の居心地の良い場所を見つけていて、話し合いをしていたり、個人作業をしていたり、空間が有効に使われていることがわかりました。
それは室内だけではなく、屋外にまで広がっているようでした。



あまりにも斬新な建築であるため、雑誌などで見たときには懐疑的に思っていましたが、実際に訪れてみて、こんなにも多くの学生が空間を活用していることにとても驚きました。
建築がこんなにもうまく利用されているのを見るのは、初めてだったかもしれません。


〈まとめ〉
このように、ここでは3つの施設について書きましたが、それぞれに気付かされたり、学べるものがありました。
このゼミに参加するまで、こうやって文化施設について考えたことは一度もなかったと思います。
先日ある文化施設を訪れた際に写真撮りましたが、その写真では雰囲気が伝わらないと一蹴されてしまいました。
確かに私の撮った写真は建物のデザインばかりを写していて、人がどのように施設を使っているか、この施設の魅力は何なのかが伝わるような写真ではなかったのだと思います。
今回は、その利用者のことを意識して写真を撮ることを心がけてみたところ、自然とその施設のプログラムや使われ方に目がいきました。
みなさんにも、写真から3つの施設の雰囲気が伝わっていることを願っています。
こうやって様々な施設を見ていると、自分の住むまちにもこんなのが欲しいとか、あそこはこうすればいいのにと思うことがしばしばあります。
5月にあるコンペにアイディアを出す予定でいますが、1年間ゼミで学んだことだけではなく今回の旅行で見て学んだことを盛り込めたらと考えています。



さて、最後は、フランスらしい写真で終わらせたいと思います。














(tantaka)


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