AAキッチン(写真提供 嘉藤笑子さん) |
AA キッチンはアートプロジェクト
昨年2013年の春、初めてフォーラム取材のためにAAキッチンの夕食に参加させていただきました。訪れたビルは東京日本橋大伝馬町にある地上6階・地下1階の複合ビル「Creative Hub 131」。夕飯時になるとその日のAAキッチン参加者が集まってきます。AAキッチンの運営について嘉藤さんは以下のように語っています。
「Creative Hub131」は、クリエイティヴな団体が複数入っている集合体で、縦型長屋のような大家族を形成しています。この古いけれどもユニークな共同ビルの3階はスタジオ内の人たちが通りすぎる空間で、コモンスペースの機能をもつ「社員食堂Lab.」になっています。「社員食堂Lab.」といっても、緩やかにつながるための機能であり、それぞれの担当者が自主的に運営しています。社員食堂Lab.は、担当者が曜日変わりで食事会を開催していますが、少額の会費制によって食事代を支払うかたちをとっています。さらに食品衛生管理者を置いて保健所の飲食業の営業許可を取得しています。
AAキッチンには、入居者のみならず、外部からの一般参加者が参加しています。「つくる、たべる、かたづける」を基本構成に、みんなが共同で作業をしています。毎週水曜日に定期開催することで認知度が高まってきました。<食>を通じて人たちが集い、<共同作業>を通じて心が通い合ってきました。斬新なことをしているというより、古くからあるコミュニティにおける潤滑油のような方法だと思っています。
AAキッチンを始めて感じたことは、アルコールではなくAAキッチンという<場>に集まり、それが自然になりつつあると思うので、短期的なイベントではなくて、日常的な出来事になるようレギュラーに食を囲んでいます。
江戸時代から現在に至るまで日本橋の旦那衆が地域を支え続けてきている文化の下地がここ(大伝馬町)にはあります。交流をしていくうちに昔からの旦那衆が「Creative Hub 131」の存在を認め始めています。彼らは「粋人」として目利きな人たちで、一見不思議な活動に見える私たちの試みに、自分たちの地域の将来的な活路を期待しているようです。アートと地域が一体になっての都市文化の再生が始まっていると感じますね。
AAキッチンでは、アーティストのトークや最新アート動向を紹介する機会を創発していきたい。それを食事の中で開催することでカジュアルな雰囲気を作れると思います。人は生まれた限り毎日食べ続けていくので、万人に共通する「食」を媒介にするコミュニケーションを探っていきたいですね。
(第13回文化資源学フォーラム 当日配布冊子より抜粋)先日久しぶりの再訪となりましたが、その日は1月からスタートした「なじょも十日町 by AAキッチン」第3弾の日で、大地の芸術祭の開催地である越後妻有・十日町市の、コシヒカリやへぎ蕎麦だけじゃない美味しいもののお披露目会でした。このシリーズでは、十日町の豊かな食文化を紹介しています。十日町の旅館のご当主が料理の腕をふるってくださいました。前宣伝以上に、当日の食事のおいしさといったらありませんでした!生の雪下人参にはじまり、菜っ葉のふきのとうがけ、サツマイモの石釜焼き、妻有豚の焼き肉、行者ニンニクを漬け込んだ特製の焼き肉のたれ、黒豆の入った葱の味噌汁…などなど、おいしいものは人々のテンションを大いに上げていくものです。
アーティストの立場からの意見が聞ける
今回改めて、「食」と「アート」を掛け合わせた主宰者嘉藤さんの嗅覚ってすごいなーと思いました。真の意味でおいしいもの、いいものを探し出して、どうしたらそれを共有することができて、新たな価値観をもって暮らせるのか?AA キッチンは実験的な場だなあと思いました。昨年の小林ゼミの鶴岡合宿の食文化創造都市のことや、「宴」における食をひとつの大きなテーマにした文化資源学フォーラムのことなど…どれだけ喰いしん坊なんだとも思いますが、原発事故も抱えた日本の中で、食って深いテーマだとこのごろつくづく思うのです。ゼミが関わる大町市では今年「信濃大町 食とアートの廻廊」もありますし。美味しいと安全が乖離する可能性もある揺れる価値観のなかで、自分たちは何を選び(選ばざるをえない場合もあります)、何を自分にとって最適の食とし、食の場を共有していくのか?「食」と「文化」をおきかえることも可能だろうかと思います。そして何より私たちは毎日食べ続けている!すごいことです。
(Mube)
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