『スクール・アート』という、去年出版された本を読みました。
この本は、学校や教育を題材とした美術作品を、いくつかのテーマに分けて紹介したものです。
例えば、自身を多彩なメイクや服装で変えて写した写真作品が印象的な澤田知子の、集合写真を模した《School
Days》。藤阪新吾の、教員としての自分の経験を反映した《よいこの学習》。必ず「指導案」を書いてから、子どもたちとのワークショップ形式でつくる山
本高之の作品の数々。バラエティに富んだ作品が掲載されています。
作家に直接聞いたり、作品を直接見たりすることに重きをおいて取材がなされているので、作家の声が聞ける(読める)という点で貴重な資料でもあります。
演劇や建築も一部取り入れており、「アート」を幅広く考えています。
図版もカラーが結構あって良いです。
しかしなんといっても、テーマが新しくて、興味深く読みました。
というのは、「教育の中での美術のあり方」とか、「学校と美術の連携の仕方」みたいな本はたくさんあるけれど、学校・教育をテーマとした美術作
品を集めるというのは、展覧会としても本としても意外と語られてこなかったモティーフだからです。よくありそうだけど、意外と考えないよね、こういうこ
と。
現在進行形の現代美術を扱っているので、網羅性という面では難しい面がある(しそれは当然のこと)なのですが、それでも十分な作品数と取材。
美術を見る新しい視点を得た気がしました。
その中で、ひとつ紹介。みかんぐみが設計した小学校と中学校が、印象に残りました。
みかんぐみは、4人の建築家をコアメンバーとする建築家グループ。様々な建築物をつくっていますが、学校空間の作品も多いです。 今回紹介されている学校では、空間構成を工夫することで、殺風景になりがちな学校の空間を変えています。
それによって生徒がのびのび生活できるように、ひとつの空間をその都度それぞれ彼らなりに使えるように、空間の中で考えさせるように、しています。
学校って、同じ教室が並んだ形式が当たり前だと思っているけど、そうでないあり方もあるんだ!と思えました(図書館の壁をなくしちゃうとか!)。
学校ってのも、ただ「ある」だけじゃもうダメなんやよね。きっと、子どもたちがその中でどのような行動・感情をもって生活して伸びていくか、というところまでデザインすべき
である、という要請が出るような時期にきているのだと思います。
関連して、本で取り上げられている作家のひとりによる、「人類は、教育というものを無条件に信頼し続けて今まできている」という意味のことばも記憶に残っています。
今まで「教育」って当然のように存在したけど、その「当然」を、紀元前とかからある意味盲目的に信頼してこれからも続けそうだ…って、考えてみれば結構すごいことしてるな人類。
それを学校や図書館のデザインから変えるという動きが、この例も含めて最近出てきているけど、これは教育が揺れている現代の要請なんやろな。
…というわけで、変わった視線で色々考えさせられる、面白かった本の紹介でした。おわりです。
(竹)
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