2013年3月6日水曜日

こんな文楽、知らなかった。

 お久しぶりです。M.Hです。

 先日、文楽の人形遣いで人間国宝の吉田簑助さん、桐竹勘十郎さんが遣う人形に焦点をあてる「人間・人形 映写展」に行ってきました。この映写展では、近松門左衛門の代表作『曽根崎心中』をテーマに、主人公お初と徳兵衛の人形が動く様子をハイスピードカメラや3Dカメラで捉えた映像作品と、曽根崎の森をイメージした風景写真、オリジナルBGMとともに、お初と徳兵衛が心中にいたるまでの展開、『曽根崎心中』の世界が鮮やかに表現されています。

広告写真の分野で活躍する渡辺肇氏、映像作家の堀部公嗣氏によって撮影された映像「人形編」(15分)「人間編」(5分)には、文楽特有の「語り」はなく、従来の舞台写真と異なる角度からの撮影、そして高速度カメラによって人形の表情の微妙な変化を見ることできます。
 
「人形編」では、最先端の撮影技術で人形の表情を高速度カメラで撮影し、静止画ではなくスローモーションで美しい瞬間が捉えられています。お初と徳兵衛の動き、表情から死に向かう二人の感情を感じることができ、特に曽根崎の森で徳兵衛がお初を刺したあと、自分自身の首を斬る場面では胸が締め付けられるような気持ちになりました。そして徳兵衛に殺されながら、静かに目を瞑るお初の表情は優しく、穏やかでとても印象的でした。
 
「人間編」では、簑助さんや勘十郎さんが人形を遣わず、体を動かす様子だけを撮影した映像を見ることができ、人形の緻密な動きの秘密が鮮やかに解明されていきます。人形に魂を吹き込んでいく技など、文楽の魅力を新たな視点から捉えなおすことができました。
 
私は『曽根崎心中』を鑑賞したことをきっかけに、日本の文化や古典芸能に興味をもつようになったので、『曽根崎心中』は今でも私にとって大切な作品の一つです。今回の映写展では、古典芸能の世界を最新のビジュアルテクニックで表現することで、今までとは全く異なる文楽の新たな味わい方、『曽根崎心中』の魅力が生み出されることに感動しました。異なる視点から光をあて、古典や舞台芸能の新たな魅力を引き出す試みを通して、それらの魅力を認識し共有する機会、場が今後さらに増えていくといいなと思います。
 
今まで文楽にはあまり興味がなかった人、文楽が大好きな人、たくさんの人に見ていただきたいなと思った映写展でした。
 39日(土)まで東京・表参道のギャラリー5610で行われています。
 
M.H

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