今回は「ピサノ展」の案内をいただいて行ってみました。エデュアルド・ピサノ(1912-1986)は、スペイン内戦でフランスに亡命するものの収容所に送られ、戦時下のサン・ナゼールでドイツ軍の基地をつくる強制労働に就きます。戦後はパリを拠点に、故郷スペインの風景や人物をモチーフにした作品を多く描きました。前述の「戦争における芸術」展にもつながる内容でしたが、60点ほどの展示作品はどれも力あふれる魅力的なもので、これまであまり紹介されなかったというのが不思議です。
レセプションで隣にいた女性は、初めてこの美術館を訪問したそうでした。子どもの時にフランスに移住した彼女、活動しているスペイン出身者コミュニティのアソシアシオンあてに招待が届いたそうです。「私はアソシアシオンを代表して来なければいけないから。ずっとパリに住んでいるけれど、知らなかった場所。思いがけない発見だった。」自分のアソシアシオンへの誇りが素敵でした。美術館は関係者を招くだけでなく、ゆかりのコミュニティを新しく巻きこむ働きかけで現実に交流の場をつくりだしている訳です。後半は満員の会場でサングリアがふるまわれ、盛り上がりました。
1970年代の文化政策についての文章でたびたび引用されていた、ポルトガルの詩人ミゲル・トルガによる一節「普遍とは、壁のない場所 l’universel, c’est le local moins les murs」を思わせる光景に2013年のパリで出合ったと思います。とはいえ、忙しく走り回っていたスタッフを別にすると、会場の平均年齢がかなり高めだったのはちょっと気になるところでした。
(ykn)
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