前回の直島レポートの続きです。
宿泊者専用のため自転車では行けないと言われ、折角借りた自転車を地中美術館に置いたまま、一行は(私の猛烈プッシュにより)李禹煥美術館へ。
美術館概要
現在ヨーロッパを中心に活動している国際的評価の高いアーティスト・李禹煥と建築家・安藤忠雄のコラボレーションによる美術館。半地下構造となる安藤忠雄設計の建物のなかには、李禹煥の70年代から現在に到るまでの絵画・彫刻が展示されており、安藤忠雄の建築と響きあい、空間に静謐さとダイナミズムを感じさせる。
海と山に囲まれた谷間にひそりと位置するこの美術館は、自然と建物と作品とが呼応しながら、モノに溢れる社会の中で我々の原点を見つめ静かに思索する時間を与えてくれる。
(以上、ベネッセアートサイト直島HPを参照 http://www.benesse-artsite.jp/lee-ufan/index.html)
広々とした屋外展示を眺めていると、掃除をしていた男性が作品の解説を始めてくれました。この方、東京から直島へ移り住み、アルバイトとして午前中に庭の手入れをしながら訪れる人にお話をしているそうです。
「この作品が大好き、見てくれる人も作品との対話で何かを感じ取ってくれたら嬉しい」と仰っていたのが非常に印象的でした。
私はこの直島の一連のプロジェクトについて「巨大資本の投下」という印象を持っていたので、この様に地元の方にも受け入れられている様子はある意味意外でした。
李禹煥美術館は非常に緊張感があり静かで美しい作品が並んでいて、見応え充分です。
こちらのスタッフはグレーの上下で精神病棟感は薄れていましたが、建物自体は半地中で作品の神秘性が際立っています。
続いて、ベネッセハウスミュージアムへ「バスで」移動。
ベネッセハウスミュージアムとは
「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、美術館とホテルが一体となった施設として1992年に開館。「ミュージアム」、「オーバル」(1995年)、「パーク」「ビーチ」(いずれも2006年)の4棟からなり、全て安藤忠雄の設計による。
美術館部分にあたる「ミュージアム」は外に向かって大きく開かれた構造をもち、室内にいても常に外部の自然を感じることができる。館内には収蔵作品に加え、アーティストたちがその場所のために制作したサイトスペシフィック・ワークが恒久設置されている。アーティストたちは自ら場所を選び、作品を制作。作品は展示スペースにとどまらず、館内のいたるところに設置され、施設をとりまく海岸線や林の中にも点在している。 館内を鑑賞するだけでなく、瀬戸内の豊かな自然があふれる周辺を散策しながら思わぬ作品に出会うこともこの施設の楽しみ方の一つである。
(以上、ベネッセアートサイトHPを参照 http://www.benesse-artsite.jp/benessehouse-museum/index.html)
こちらは所蔵作品やその展示方法から、より「美術館」という感覚が強い施設だと思いました。とは言え非常に開かれた印象があり、明るい造りである事も印象的です。
現代美術好きなら楽しいコレクションの数々ですが、宿泊者でないと鑑賞出来ない作品もありますのでご注意を。
「直島=かぼちゃ」というイメージが強いかと思いますが、かぼちゃを置いている訳ではないハウスミュージアムのショップでもかぼちゃグッズがこれでもかと売られています。
ミュージアムより更に先に進むと、コテージが並び作品が点在しています。
潮の香りを感じながら浜辺を進むとその先に、黄色のかぼちゃがぽつんと置かれており、その向こうにはビーチが広がっています。
リゾートとしての直島のブランディングを感じさせます。
宿泊者専用ゾーンの出入りを管理している地元のおじ様方が、頼んでもいないのに「手乗りかぼちゃ」の写真作成を手伝ってくれます。
バスで自転車のある地中美術館へ。
私は帰りの飛行機の時間があったので、家プロジェクトを見る事が出来ず泣く泣く帰路へつく事に。
残りの二人は自転車で家を巡る事になったので、自転車を託したものの、地中美術館から港へは直行バスが無い!
困っていると、地中美術館から戻る途中であったスタッフの方が車に乗せて下さるとの事。
有り難い申し出に乗っかり、地元出身の男性が運転する軽トラにスタッフの女性と私で乗り込みました。
道中、一連の直島プロジェクトについて少しお話を伺う事が出来ました。
スタッフの女性は「いい点もあるし、悪い点もある。それでも、私達は地元の皆さんもいらして下さる皆さんも、全ての人がもっとこのプロジェクトを愛して下さり、長い間続く様に努力している」と仰っていました。
いい点としては、「地元のお年寄りの方々がこれをやってみよう、あれをやってみよう、と積極的に案を出し活動しているので、家に引きこもる人が減った」という事。
悪い点としては、「リゾートであるため、はめを外してしまう外来者がいて、うるさいなどの問題がある」との事。「はめを外すのは良いが、それにもやり方や限度がある」と仰っていました。
ご好意で乗せて頂いた軽トラにて港に到着した後、フェリーまで少し時間があったので、直島銭湯「I♥湯」を見に行きました。
I♥湯とは
アーティスト・大竹伸朗が手がける実際に入浴できる美術施設。直島島民の活力源として、また国内外から訪れるお客様と直島島民との交流の場としてつくられたこの銭湯は、クリエイティブ集団grafの設計協力を得て、外観・内装はもちろん、浴槽、風呂絵、モザイク画、トイレの陶器にいたるまで大竹伸朗の世界が反映されている。また地域との協働として、施設の運営はNPO法人直島町観光協会、宮ノ浦自治会が行っている。
(以上、ベネッセアートサイト直島HPを参照 http://www.benesse-artsite.jp/naoshimasento/index.html)
港から一歩進むとそこには民家や民宿が建ち並んでいます。
地中美術館へ自転車で向かった時には「この島は裕福なんだな」と思わせる立派な造りの家屋が並んでいましたが、こちらは一転、非常に古い木造建築が所狭しと並んでいます。
銭湯へ向かう道の途中に、地元のおじいさんとおばあさん方が涼んで(飲んで)いらっしゃったので、声をかけてみました。
お話によると、夏は非常に混むとの事。とりわけ来年は瀬戸内芸術祭があるので、その時は本当に大変だそうです。
温泉を見に行くのだと言うと、「一人なの?一緒に行こうか?」と言って茶目っ気を発揮して下さったおじいさま方。
総じて、お話しさせて頂いたご高齢の方々は皆さん元気な印象がありました。
温泉自体は、中に入っていないので外観を眺めるだけでしたが、古い木造建築の中で一つだけ異質な空気を漂わせていました。周りには観光客がいて、地元の人も入りに来るって本当なのかなあと言う感じでした。
そこから更に奥に進むと、本当に静か。
ひびのはいった窓、洗濯物のかかる軒先・・・これが元々の島の姿なのではと感じます。
まだ少し時間があったので、実は気になっていた007記念館なるものを見に行きました。
007のシリーズの中で直島を舞台に扱ったものがあるそうで、その記念館です。
行ってみると、記念館と言うよりお化け屋敷のような寂れた感じ。手作り感満載です。
おそるおそる中に入ると、ストーリー紹介やビデオ上映、またその際のグッズや地元の学生の創作物等が薄暗く蒸し暑い部屋に陳列してあります。
ビデオ鑑賞をしている男性がいてびっくりしました。
新しいボンドがこちらにも来たそうで、サインとそのときの新聞の切り抜きが誇らしげに飾ってありました。
そろそろフェリーの時間と言う事で、港に戻りました。
ちなみに、こちらの総合案内所では地元の方も働いていますが、大半は外から派遣されている方らしく、話を聞こうと思っても「自分は外の人間なので分からない」という答えが返ってくることが多かったです。
以上、直島レポートでした。
次回機会があれば、瀬戸内の時に他の島も合わせてじっくり見てみたいと思います。
(M.O)
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