2012年5月31日木曜日

文化振興条例の現在

現在、国会に上程される予定になっている文化関連法規といえば劇場法案ですが、自治体でもまだ文化振興条例が制定されつつあります。埼玉県富士見市でも近々文化芸術振興条例を制定する運びだそうです。市長が記者会見を行ったというお話を伺いました。
文化振興条例は、2001年に制定された文化芸術振興基本法以降に、急増していますが、その前から先進的自治体では制定が進んでいました。私が把握している、神奈川県の逗子市や兵庫県の明石市以降にも、神奈川県大和市、長野県中野市、三重県松坂市、大阪府寝屋川市、兵庫県芦屋市、島根県出雲市、福岡県筑紫野市、福岡県宗像市、福岡県古賀市、福岡県朝倉市、埼玉県さいたま市などで制定されているそうです。福岡県でいくつかの自治体で相次いで制定されているところを見ると、近隣自治体が制定すると波及効果があるということなのでしょうか。真相はわかりません。
条例を制定するだけではなく、その理念を政策で実践していくことが重要になりますが、それこそが難しいところです。条例を制定したところがその後どのような動きをしていくのかはみていきたいと思います。
(M.K)

アートマネジメント、文化経営、文化政策、文化経済等々

この領域での研究を始めてからはずいぶんと時間も経ちましたし状況も変わりました。大学教員になってからも早10数年。自分の中では知識や情報は常に蓄積していくわけですが、学生は常に新しい人が入ってきます。当たり前のことなのですが、それに対して、「いろは」から情報提供をしていかなくてはならないわけです(それが教育というものですが)。さらに、まだこの分野が十分に知られているわけでもないことは、地方に行くと実感をします。また、他大学の学生から相談を受けることもあります。今まで何となく、「いまさら」という感覚をもたないわけでもなかったのですが、少なくとも誰でもアクセスできる情報を提供していく務めもあるだろうと考えて、追々そんなこともしていきたいと考えています。
この分野に関連する学会としては、古い順に以下のところなどがあります。学会は、会員になって活動することが基本ですが、会員でなくても参加できる場合があります。学会活動はボランタリーな活動なので、そんなにマメにホームページも更新されるものではありませんが、大会は、研究の最前線を知る研究発表を含めて関連の研究者や学生に会える良い機会ですし、当然学会誌も発行されています。
(今後、博士課程の学生からもさらに有益な情報が掲載されると信じています)。

文化経済学会<日本>
http://www.jace.gr.jp/
前にも書きましたが、6月21日〜24日に京都、同志社大学でこの学会の関連国際学会の大会が開催されます。国内の大会は、11月の24日、25日に熊本大学で開催されます。文化と経済、産業、政策等に関心のある人は是非チェックして欲しい学会です。

日本アートマネジメント学会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jaam/
今年は12月1日、2日に神戸で大会が開催されるとのことです。

文化資源学会
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/CR/acr/

日本文化政策学会
http://www.jacpr.jp/
今年度の大会は、2013年の3月10日、11日に鳥取大学で開催される予定です。

また、この分野に関心のある人たちで共有されているメーリングリストとして、文化政策提言ネットワークがあります。これは、文化芸術振興基本法が制定されるおりに、有志で立ち上げられたメーリングリストです。誰でも参加可能です。
http://groups.yahoo.co.jp/group/cpnet-info/

それから、アートマネジメントに関連して有益な情報を得られるサイトとしては、ネットTAM(トヨタ・アートマネジメント)があります。ボランティア、インターンシップ、求人広告なども充実しています。
http://www.nettam.jp/

企業メセナ協議会
http://www.mecenat.or.jp/

また、総務省の外郭団体、財団法人「地域創造」が運営するサイトにも、自治体が設置した文化施設に関連した求人広告があります。

財団法人地域創造
http://www.jafra.or.jp/

(M.K)

劇場法案

一昨日、ある自治体の方と打ち合わせのおり、また昨日、他大学の授業で、提出予定の劇場法案はどこで見られますかという質問を受けました。
たしかに、どのように探しても見つからない。変ですね。

以下のリンクの先が、現在用意されている、劇場法案だそうです。
ただ、これが本当に超党派の音楽議員連盟で用意されているものなのかどうかが、わかりません。


(M.K)

2012年5月30日水曜日

第30 回 ドイツ観光局交通広告キャンペーン Germany Heart of Europe 首都圏および京阪神にて実施中 2012 年5 月15 日~6 月1 日


折しも2010年の日独交流150周年記念、そして2011年のFIFA女子サッカートーナメントの興奮がまだ記憶に新しい中、先日東横線に乗車した所、第30回ドイツ観光局交通広告キャンペーンGermany Heart of Europeの広告が一面に掲載された車両に出くわしました。
フランス政府観光局が打ち出している電車車両内キャンペーンには何度か遭遇した事がありましたが、ドイツの物は私は初めてでした。
注目すると、「ビールとソーセージ」の代わりに「ワイン」がプッシュされていたり、古城等の美しい景観も出ており、「観光の国ドイツ」を猛烈アピールしている様です。
このキャンペーンについて調べてみると、ドイツ観光局(German National Tourist Office: GNTO)は、1994年11月以来在日ドイツ企業との大型コラボレーションとして、首都圏および京阪神にてドイツ ADトレインによるキャンペーンを実施、2012年5月に実施中の本キャンペーンは、30回目として、ヨーロッパ文化や消費財への関心の特に高い地域といわれる東急東横線、東急田園都市線、JR西日本の京阪神を結ぶ新快速をキャンペーン路線としているそうです。
東急東横線は、横浜と渋谷を繋ぐ路線なので、比較的文化関連広告事業のターゲットになりやすいのかなと思います。
これら観光関連のキャンペーンを行っているGNTOは、フランクフルト・アム・マインに本部を置く国営のドイツ観光振興機関で、経済技術省 (BMWi) の委託により観光の国ドイツを代表しており、ドイツ連邦議会の決議に基づき経済技術省から助成されています。 現在、世界各地 30 ヶ所に代表事務所があるそうです。蛇足ですが、英語のページに飛ぶと突然名称がGermany National Tourist Board(日本語では同じ「ドイツ観光局」)になっているのが少し気になりました。
(これは普通の事なのでしょうか?英語があまり得意ではないので御教授頂ければと思います。)
さて、ヨーロッパ旅行先と言えば日本人にとってはフランスとイタリアが真っ先に挙がるかと思いますが、GNTBの出しているレポート(2010年版)によると、現在ドイツは欧州連合内からの旅行者数が1位スペインに次いで2位との事でした。GNTBは今後BRICS、あるいは中国やインドからの旅行者の獲得を目標にしているようです。
ドイツ観光局 http://www.germany.travel/jp/index.html(2012年5月30日アクセス)
最後に、今年2012年のドイツの観光重点テーマは、以下の通りです。
・ライプツィヒ・聖トーマス教会少年合唱団創立800周年
・5年に一度の大型現代美術展dOCUMENTA(13)
・プロイセン王・フリードリッヒ大王生誕 300年
私は、個人的に二つ目のdOCUMENTA(13)に非常に興味があり、是非ドイツに行ってみたいなあと思いました。
dOCUMENTA(13) http://d13.documenta.de/de/(2012年5月30日アクセス)

(M.O)

偏り、差違

(い)さんが書いてくれた経験は、私自身もよくします。
それを「偏り」と表現すればいいのかどうかわかりませんが、私はやはり「差違」と「受容の仕方・あり方・歴史」のように考えています。
私も先週、あるクラシックの公演で、舞台は異常なほどに盛り上がっているのに、観客が冷静なのに違和感を持ちました。ただその場面が終わった後には、大きな拍手が起きたので、観客が喜んでいたり、満足していたのは間違いありません。ただ、おそらくその団体の本拠地で公演したら、観客も一緒になって熱狂的に盛り上がっているのではないかと思います。実際に本拠地で観客として経験することは、引越公演の場合は、まず体験できません(だからこそ現場に行くのです)。そもそも周りの観客と箱が違うから当然なのです。美術の方ではサイトスペシフィックということが言われますが、生きた人間が舞台にのって観客と交流しながら公演をする舞台芸術こそがまさにそうものであると私自身は思っています。
そこで、こういう問題を考えるときに、いくつか考える視点があるかと思います。たとえば、日本における西洋芸術の受容の在り方を考える視点、たとえばクラシック音楽は「お勉強的」に受容されてきたのではないか、という見方です。たしかに、明治以降日本は西洋から導入された芸術ジャンルについて、教育で受け入れてきた経緯はあります。ただ、日本でも舞台というもの自体を「楽しく」「盛り上がって」受容してきた歴史は十分にあるので、やはり演目の内容それ自体に今ひとつ盛り上がれない文化的差違があるのではないかという視点。いや、内容は十分に共有できているのであるが、受け止めた感情を外に向けて表現することが日本人は下手なのではないかといった日本人論の視点、あるいは一人で来ている観客が多くて、隣の人と交流できないのではないかと観客行動の視点。いやいや、本来そのようなタイプの公演は、もっと観客と舞台とが交流しやすい規模の密度の濃い空間を必要とするのではないかという視点、そもそも国で補助をされて低額で公演が供給されている現地と、日本において引越公演のチケットを購入してくる観客とでは、観客(階)層が異なるという視点。引越公演として行うことと、文化交流で行うこととの違いという視点等々。実はまだまだあるのですが、考え出すと面白くて止まらなくなります。
(M.K)

2012年5月29日火曜日

ミューザ川崎シンフォニーホール現状

工業地帯としてのイメージの強かった神奈川県川崎市が、まちづくりの指針として打ち出した「音楽のまち・かわさき」。そのコンセプトの中核となる施設として平成16年に完成したのが、現在のJR川崎駅西口に位置する「ミューザ川崎シンフォニーホール」です。

1,997席の観客席・パイプオルガンを持つ「音楽ホール」と、練習室等の「音楽工房」を備える本格的な施設でしたが、平成23年3月11日の東日本大震災でホールの天井が崩落し、長期の修復休館に追い込まれることとなりました。

現在は、他の施設を借りて音楽事業を行っていますが、先日平成25年度4月1日リニューアルオープンが決定しました。「川崎市文化情報サイト:市民・子ども局市民文化局」では、震災以後修復の進捗がアップされています。

ミューザ川崎シンフォニーホール
http://www.kawasaki-sym-hall.jp/

川崎市文化情報サイト:市民・子ども局市民文化局
http://www.city.kawasaki.jp/25/25bunka/home/top/index.html

(mio.o)

2012 OME ART JAM EXHIBITION

現在開催中のアートイベントのお知らせです。


2012年5月19日(土)から7月1日(日)まで、東京都青梅市で「青梅アート・ジャム」が開催されています。


「青梅アート・ジャム」とは、自然豊かな青梅・御岳エリアを舞台として
「アートがこの地に出来ること」を合い言葉に、青梅市在住のアーティストたちが中心となって発足した美術の催しです。
毎年 日本画、彫刻、陶芸、漆、鍛金、 書、型絵染など様々な分野のアーティストが日本国内外から集まり、展覧会やワークショップ、ライブを通して地域交流・国際交流の場を作り出しています。


6回目となる今年は「森から響く祈りとくらし ーAll Relationships 」がテーマ。
すべての命のはじまりである森を見つめ直し、世界各地で綿々と受け継がれてきた文化を一つの大きな輪につなげたい、という作家たちの思いが込められています。
青梅市立美術館や吉川英治記念館での展覧会や、気軽にアートを体験できるワークショップなど、多彩なプログラムが用意されておりますので、
ぜひこの機会に、生き生きとした初夏の自然のなかでアートと触れ合ってみてはいかがでしょうか。


■展覧会
@青梅市立美術館
会期:5月19日(土)〜7月1日(日)
開館時間:午前9時〜午後5時
休館日:月曜日
観覧料:大人200円、小中学生50円


@吉川英治記念館
会期:5月19日(土)〜6月3日(日)
開館時間:午前10時〜午後5時
休館日:月曜日
観覧料:大人500円、中高大学生400円、小学生300円


@ゆずの里 勝仙閣
会期:5月19日(土)〜7月1日(日)
開館時間:午前11時30分〜午後4時
休館日:なし
観覧料:無料


■今後のワークショップ&ライブ情報
□御岳山ワークショップ「山の神を描く」
日時:6月9日(土)、10日(日) 午前10時〜午後4時
内容:御嶽山頂付近の写生と批評会
参加費:一泊15,000円(御嶽神社宿坊での宿泊費込み)


□ギャラリートーク「森から響く祈りとくらし ーAll Relationships 」
日時:6月24日(日) 午後2時より
内容:参加作家全員によるギャラリートーク
会場:青梅市立美術館


□ライブコンサート 吉川英治へ捧ぐ・能楽らいぶ
「高時曼荼羅〜『私本太平記』より〜」
日時:6月17日(日) 午後2時〜午後4時
出演:中所宣夫(観世流能楽師シテ方)
内容:『私本太平記』の中の「高時曼荼羅」の一説より新しい作品を書き下ろした能楽らいぶ
料金:3,000円(入館料込み)




申し込み方法など、くわしくは
青梅市教育委員会/ 2012青梅アート・ジャム
http://www.ome-tky.ed.jp/bijutsu/schedule_2012exhi02.html


(杉)

横浜セントラルタウンフェスティバル


今週末6月1日~3日、横浜では「横浜セントラルタウンフェスティバル」(http://www.y151-200.com) が開催されます。
横浜セントラルタウンフェスティバルは横浜開港150周年(Y-150)が2009年に終了した後、2010年から民間(馬車道、関内、 山下公園通り、横浜中華街、元町、山手)が中心となり、 新たな横浜を共に構想しY-151」「Y-152」と毎年フェスティバルを開催することで、次の世代へ「Y-200」(横浜開港200周年)をつなげていきたいという思いのもと始まったものです。
期間中はそれぞれの街の特色を活かした様々なイベントが催されます。馬車道、関内、山下公園通り、横浜中華街、元町、山手それぞれ異なる歴史や文化をもった地域が協力し、横浜の魅力を伝えていくことは、横浜の土地に新たな文化を生み出す原動力になるのではないでしょうか。
M.H

ズレから見えてくるもの。


こんにちは。社会人学生(い)です。
インターゼミで発表した後、その経験をつらつら反芻していたら、すっかり出遅れてしまいました。
先日のインターゼミは、一応文化政策というくくりはありながら、バリバリに実務的な内容から、霞を食うような問題設定まで、実態は多様で、他流試合に近いものがあったと思います。私は、学部は比較的方法論が確立している分野を専攻しており、職場でも日々の問いの立て方や範囲はおのずと限りがありますから、インターゼミで思いもかけぬ方面から飛んでくる質問は、新鮮な体験でありました。
インターゼミの経験から感じたことは、共通のバックグラウンドを持たない人同士での意思疎通の難しさです。日常生活においては、共通のバックグラウンドを持たない人と議論する機会は必ずしも多くありませんが、ひとたび何か問題が生じれば、私たちは否が応でも見知らぬ人たちと意見を交わさなければなりません(誰かが何とかしてくれるのを待つなら別ですが…)。そしてこのような場合、どのように議論を進めていくかを決めることが、すなわちある主張の立場を強化する可能性があることも、考慮しなければなりません。
何だか堅くなってしまいましたが、これは別段赤の他人同士の議論に限るものでもなかろうと思います。例えば、私はこの週末、とあるヨーロッパの伝統音楽のコンサートを聴きに行きました。会場はすばらしいホールで、聴衆は椅子に深々と腰をかけ、音に臨んだのですが、演奏されたのは美しくも湧き立つようなダンス・チューンだったのです。トラッド好きとしては、ここで踊らないまでも、リズムを取って奏者に応えたいところです。けれどもクラシックの愛好者の中には目を閉じて音に没入せよという意見の人もいるでしょう。実際、大多数の聴衆は身じろぎもしませんでした。
これを、ある音楽との関わり方が、会場の構造によりある特定の方法に偏ることになった例と考えることもできます。で、その偏りは前向きの椅子席という会場の構造だけでなく、「どのように音楽と関わればよいか(聴けばよいか、ではすでに偏りです)」という教育や一般常識によっても生じているに違いありません。その偏りは、「ふさわしい関わり方のワンセット」の中では目立ちませんが、どこかにズレが生じると、目に見えるようになります。私としては、そういったズレから見えて来る文化の偏りをうまく捉えられればなあと思っているところです。

2012年5月28日月曜日

長野県大鹿村・村歌舞伎

昨日放映された「小さな旅」、長野県大鹿村の村歌舞伎について紹介していました。
文化は守ろう、やろう、という人の気持ちと意思が大事なわけです。それを小さな山間の村で行っている様子がわかる、とてもいい番組でした。
再放送があるようですので、文化政策という分野に関心のある人には是非見て欲しいと思います。

6月2日(土) 午前 5:15
6月7日(木) 午前11:05


(M.K)

もうすぐ「ふじのくに⇔せかい演劇祭2012」―静岡県舞台芸術センター

もうすぐ「ふじのくに⇔せかい演劇祭2012」。静岡県舞台芸術センター(Shizuoka Performing Arts Center : SPAC http://www.spac.or.jp/)から、”「東京―静岡」劇場直行往復バス6/2(土)、6/10(日)の増発決定”というメールニュースがこの週末に届きました。

専用の劇場や稽古場を拠点に、芸術監督のもとで俳優、舞台技術・制作スタッフが活動する公立文化事業集団SPACについてはゼミや授業でもたびたびとりあげられてきましたが、演劇祭は実際にこの劇場に足を運ぶよいチャンス。劇場を地域内外に開くことを強く意識していつも手まねきしてくれるSPACは、未知の世界につながる扉のような存在だと思います。

3月に東京で行われた演劇祭記者発表では、芸術監督の宮城聰さんが、昨年の震災を経た実感を「これまでは、演劇・劇場のイベントっぽさや日常の裂け目のようなものというイメージが注目されてきた。しかし、日常の裂け目が災害で現れると、逆に常にコミュニティの中にあるアーティストの家のような劇場があること、みなが忘れているときにも劇場が存在していることの重要性を感じるようになった。」と語られました。

そして演劇祭について、「国旗を背負った国どうしの交流ではなく、人の交流が国際交流だと思う。(劇場という)変わり者の住む家に世界から友人たちが訪ねてくる」とも。

地域のなかにある開かれた芸術の「家」、さらにそれが世界とつながる演劇祭は、先週のゼミで言及された「議論の場をつくる」ことを想起させます。

一緒に行きませんか。

(ykn)

重要伝統的建造物群保存地区の新選定

文化審議会は5月18日、新たに5地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定することを文部科学大臣に答申しました。まだ官報告示はされていないようですが、これにより重要伝統的建造物群保存地区は累計98地区となる見込みです。

報道発表「重要伝統的建造物群保存地区の選定について」(文化庁/平成24年5月18日)

ちなみに、山形県・宮城県・東京都・神奈川県・静岡県・熊本県の6都県には重要伝統的建造物群保存地区がありません。このことに関連してちょっと興味深い情報を見つけましたが、それはまた今度。はい、たんなる出し惜しみです。

(peaceful_hill)

次代を担う子どもの文化芸術体験事業

大学進学を機に上京し、初めて生の芸術に触れ、勢いで大学院で文化資源学を学ぶまでになった私ですが、地元にいた頃は、好き・嫌いという以前に、アートに触れる機会は皆無といって良いほどありませんでした。日本の地方は、機会が非常に少ないという点において、ほとんど同じような状況であると思います。

「次代を担う子どもの文化芸術体験事業」は、文化庁が全国の小中学校を主な対象として行っている事業です。芸術団体が学校を訪問し、ワークショップと公演を行うというものです。
URL:http://www.kodomogeijutsu.com/

生の芸術に初めて触れた時の子どもの表情って、どんなものなのでしょうか。
子どもたちだけでなく、学校の先生やアーティストの方々にとっても、貴重な出会いと発見の場なのではないかと思います。

(sweetfish)

博物館利用とパス・情報サイト


文化資源学研究室に集う方々は、分野やアプローチに多様性が見られるものの、総じて文化施設やその活動に大きな関心があるという共通項があり、私も日々皆様から刺激を受けていますが、一度外に出れば「芸術は敷居が高い、そもそも関心が無い」と言う声を聞く事があります。市民の博物館利用頻度に関して森ビルが行った2007年の調査によると(古いデータで申し訳ありません)、東京は年に平均1.9回で、世界の5都市中最下位だったそうです。
asahi.com「美術館に行く回数は? 東京が最下位 世界5都市調査」2007年12月22日
その一方で、特定の展覧会では週末には黒山の人だかりに遭遇する事があり、また来館者の中には年配の方だけでなく幅広い年齢層の方を見つける事が出来る等、文化やその施設が人々の生活の中で何かしらの位置を見出しうる、その可能性の萌芽を期待する機会も少なからずあると言えます。
その背景として様々な点を指摘する事が出来ますが、その一つとして東京都内の「パス」及び情報サイトに今回は着目してみたいと思います。
芸術に関する情報媒体は、文字ばかりで取っ付き難い専門書的な色彩の強かった美術雑誌から、気軽にアクセス出来るアート関連ウェブサイトへ、急速な移行を遂げています。口コミやチェックイン機能でより身近に共有できる情報が増え、「おしゃれな余暇の過ごし方としての美術館やギャラリーでの芸術鑑賞」が容易になって来たと言えます。
そんな中、黄門様の印籠(?)のごとき学生証を持たない人々の間で特に重宝するのが「パス」です。各施設が提供している会員パスを超え、スマートフォンの普及と共に近年利用者を増やしてきたのは割引券アプリです。
アートイベント割引券アプリ「ミューぽん」は、NPO法人GADAGOが運営するアート情報バイリンガルサイトTokyo Art Beat(以下TAB)が管理しており、2011年には18000ダウンロードを超えました。TABは、3人のコアスタッフと翻訳スタッフ、そしてインターンスタッフによって2004年より運営されています。
「ミューぽん」の特徴は、「面倒な登録なし」で「話題」の展覧会やアートイベントの割引券を「適度な数」「順次アップデート」し掲載している点であると思います。
利用者は、割引目的だけでなく回遊候補の検討にもこのアプリを使っており、その適度なピックアップ感が受けている様です。こちらには常設展の割引情報は掲載されませんが、企画展チケットに常設展観覧料も含まれている場合も多いので、「ついで利用」が可能です。
展覧会単位で割引情報が得られるミューぽんに対し、より広範な博物館単位での割引を得る事が出来るのが「ぐるっとパス」です。
東京都文化行政との密接な連携の下、東京都庭園美術館等9カ所の文化施設の運営管理や諸文化振興事業を行う公益財団法人東京都歴史文化財団が提供するチケットブックで、2003年より発行されており、利用出来る文化施設数は2012年版で都内75カ所に拡大しています。使用期限が初回使用時から2ヶ月という規則があるものの、割引に留まらず入場券となるチケットも多数あり「お得感」がある事、またメトロ等公共交通機関の一日乗車券と「抱き合わせ」のセットもある事で、今まで行った事の無い文化施設に行く機会を提供しているのが特徴として挙げられます。
その沿革については下記ページにて詳しくまとめられていました。
「今までぐるっとパスに参加したミュージアム一覧」(http://www18.ocn.ne.jp/~toku2/denno/price_new.html#page-top)(2012年5月27日アクセス)
こちらは紙媒体であり連動性があるという訳ではありませんが、東京都歴史文化財団のHP(http://www.rekibun.or.jp/index.html)には丹青グループが運営する博物館・美術館・イベント情報サイト「Internet Museum」(http://www.museum.or.jp/)がリンクとしてついています。こちらのサイトは全国の展覧会情報や掲示板だけでなく、文化関連のニュースや学芸員募集掲示板等もついています。
その他全国各地に様々なパスがありますが、今回は東京で特に代表的な物を二つ取り上げました。
実際の使用に際する細かな改善点だけでなく、
・特定の対象の無い情報検索がアート情報サイトやそのコンテンツを通じて容易になる事でかえって偏った情報収集をしている事
・パスに参加している文化施設の傾向やパスの割引内容の特徴
等について考える余地が多分にあるように思われますが、NPO、インターン(ボランティア)、財団法人や株式会社が中心となって文化施設と協働し、それを利用する不特定多数の市民を巻き込んでアート情報ネットワークとその活用法が近年形成された事は、大きな意味を持っているのではないかと思います。


まとまりのない長文、失礼致しました。
(M.O)

2012年5月26日土曜日

国際文化経済学会(6/21~6/24)


今年、6月21日〜24日まで、京都の同志社大学で国際文化経済学会が開催されます。
会員でなくても参加できますので、国際学会の様子を覗いてみてはどうでしょうか。
文化「経済学」ということで、敬遠をされる人もいるかもしれませんが、文化経済学の研究領域は拡大し続けていますし、意外な発見があるかもしれません。
文化政策関係の発表も多く行われるようです。
詳しいプログラムは以下のリンクを見てください。



(M.K)

2012年5月25日金曜日

ながのアートプロジェクト

今回は、「ながのアートプロジェクト」について書きます。私の「今度訪問してみたいプロジェクト」ランキング上位のひとつです。

これは、「美術を好きになってもらいたい」という思いから、美術教諭・中平千尋氏が発案し、「中学校を美術館にしよう」を合い言葉に2004年から活動を行っているアート・プロジェクトです。
生徒を「キッズ学芸員に変身させ」、中学校の一角にアートスペースをつくったり、作家とコラボレーションをしたりして、学校の内外で様々なプロジェクトを行っているようです。

面白いと感じたのは、ひとつひとつのコンセプトがはっきりしているところと、あくまで「学校教育」という範囲のなかでプロジェクトを実行していることです。
コンセプトについては、各プロジェクト全体のコンセプトがはっきりしているのはもちろんのこと、生徒がつくった作品に対するインタビューを見ても、生徒がきちんと色々と考えて、制作を行っていることが分かります。
自分で考えて作品をつくった経験があれば、美術館等に行って作品の前で作家に思いを巡らせたり、「これはなんだろう?」と面白くじっくり「鑑賞」するもとになると思います。そういう意味で、この「作品」制作はよりよい鑑賞にもつながってくるのではないかと思います。
「造形/発想/技能/鑑賞」から成る学習指導要領をもとに、各教師の個性にしたがって授業運営をする、という少なからずハードルの高いタスクに苦しんでいる先生方が多いように見受けられる中、以上のような自由な発想で生徒もノッてくる内容をもった美術教育が展開されていることは注目に値すると思います。
私は、学校での美術教育の指導要領は以上のことが最終目標である(と解釈すると面白い授業になる)と勝手に解釈しているのですが、ながのアートプロジェクトでは(美術部の活動でない場合)あくまで美術科教育のカリキュラムとして種々の活動を行っていることもあり、まだまだ続けて活動し、面白い図工・美術教育を発信していってほしいなと思います。

URL:http://www.gakko-bijutsukan.com/

(竹)

2012年5月23日水曜日

現在の法案の通過状況その①


劇場法に関する現在の法案の通過状況ことですが、
平田オリザさんが、ご自身の授業で発言しました。

「国会に劇場法法案を出しているので、今月中に衆議院を通れば、参議院にでる、そこで問題なかったら通ります」と。

bangulより

日経新聞の記事

直接劇場法関係の話題ではありませんが、2012年5月19日(土)の日本経済新聞の文化欄に「独歌劇場、地域密着に光:市民意識し『町の顔』を磨く」という記事が載っています。
ドイツの都市には、教会や学校や病院と一緒に、劇場が必ずあるということがいわれて、日本でも地域に文化ホールが建設されてきました。そのドイツにおいても、自治体の財政難で劇場運営に苦しい状況になっています。書き手の江藤光紀さんも「小さな地方都市にも必ず劇場があり、舞台を通じて人々が触れあう場を大切にする姿勢に学ぶところが多い」と書いていますが、まったく同感です。地域の社交の場(私はカフェ同様、公論形成の場だと思っていますが)として機能している状況は、あまり日本では見られないものです。
劇場や文化ホールの価値はなかなか社会の中で目に見えて理解されていないようではありますが、やはり活用の仕方にかかっていると思いますし、活用の方法は一様ではないと思います。今回の劇場法は人材育成を目的としているとのことですが、どのような人材育成なのでしょうか。作品を作る人なのか、劇場を運営していく人なのか、それとも観客なのか。
(M.K)

国分寺市芸術文化事業補助休止

東京都の国分寺市は、平成19年度から芸術文化事業補助を公開の審査で、行ってきましたが、今年度は予算の都合上で休止となってしまいました。
補助の決定は、公開の審査をした上で、1年後に成果報告会を開催するというもので、審査や報告会の会場で、活動団体の情報交換やネットワークが構築されていくことを期待して運営されてきました。昨年度の報告会が5月19日に開催されましたが、ようやくそれぞれの団体が情報交換をしたり、審査員側と「対話」できるようになったりしていただけに、今回の休止は残念です。
行政では企画できないような、市民の発想力豊かな企画には毎年圧倒されましたし、それが仲間を増やしながら広がっていく様子は、すばらしいものがありました。いったん休止してしまうとなかなか復活がかなわないことが多いことから心配ですが、地域の中での文化活動はコミュニティの形成にもつながるので、是非とも早期の復活を望みたいと思います。

(M.K)

2012年5月22日火曜日

劇場法をめぐる最近の動きのおさらい

先週の授業で触れられた、劇場法をめぐる最近の動きをおさらいするリンクです。
今月初めに法案内容が明らかになった後も、現時点では今期国会の議案リストに表示されておらず、その後の進展の情報が出てきませんが、引き続き注目していきます。



5月2日朝日新聞記事:「劇場、カラオケより芸術を」 超党派議員が活用法原案 
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201205010162.html

4月26日:音楽議員連盟第37回総会 劇場法制定及び国会請願採択を目指し決起
http://www.cpra.jp/web2/plazaweb/news/2012/120508.html
http://www.motto-bunka.com/nakami/news/20120426.htm

3月28日:音議連総会
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-03-29/2012032915_02_1.html

3月23日朝日新聞記事:音楽ホールは「人材育てる機関」 劇場法案を国会提出へ 
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201203220358.html


(ykn)





インターゼミ感想

インターゼミ感想

まず、2012年第二回四大学合同インターゼミに参加頂いた先生の方々及び学生の皆様、協力して下さった関係者の皆様に厚くお礼を申し上げます。

2012年、第二回四大学合同インターゼミに参加させていただき、どうも有り難う御座いました。沢山の方々にお越しいただき、学校や地域という枠を超えた交流ができてとても勉強になりました。M2の皆様の発表や先生の方々の貴重なご意見を聞かせていただき、今後自分の研究における注意点や新たな気づきなどは沢山ございました。

また、今年の新入生の皆様と一緒になって、インターゼミの運営を担当したことによって、一気にM1同士の相互理解が深めることができたと感じております。正しく、早い段階からの「市民参加型」「市民協動型」(ここでは「ゼミ民」かな?)を実験し、参加することのよる自己成長と意識の変化を感じられました。また、ここでの先生の関わり方にとても関心を持ちました。

インターゼミの運営にあたって幾つかの反省点ありましたが、もし、次回の運営担当の皆様に参考となれればと思い述べさせていただきます。

     プログラム作成(誤字や時間割などのチェック)
     当日受付を一人(1ヶ所)でする場合は時間が取られ、着席するのに時間がかかる。
     交流会参加の確認は受付と一緒にする場合入場券として名札を使える。
     交流会の参加者を事前に確認できないため、飲食物の注文について量的配分は
    難しい。     (今回、お酒類は大量に残りました。)

以上 
(B・S)

2012年5月21日月曜日

川崎市民ミュージアム ボランティア募集

初めまして。
普段は歌舞伎や舞踊といった芸能について勉強している者です。

わたしは現在、神奈川県川崎市の武蔵小杉というところに住んでいるのですが、
駅からバスで10分ほどのところに、「川崎市市民ミュージアム」という施設があります。

このミュージアムは、美術館と博物館と映像資料館の機能を兼ねており、
さらにスペースを使って定期的にコンサートを行っているようです。

個人的には時々訪れる程度だったのですが、先日ふと駅のいつもと違う出口を使ったところ、
壁面いっぱいにミュージアムの巨大な広告が出されていることに気づきました。



JR武蔵小杉駅北口/2012522日、本人撮影)

よく見ると、画面左下に置きチラシがあるようなので、近寄ってみました。
すると、展覧会の広告に混ざって下のようなチラシが置かれています。


(「ボランティアスタッフ募集」のチラシ/2012522日、本人撮影)


後にインターネットで調べたところ、現在当ミュージアムでは、
ボランティアを募集しているとのことでした。


川崎市市民ミュージアム
http://www.kawasaki-museum.jp/


ボランティア募集種(チラシに記載された情報より)

A スクールプログラムサポート【15名】

B イベントサポート【15名】

C チャイルドサポート【5名】

D 企画・運営【5名】

E 展示ガイド(博物館部門)【10名】 

F 展示ガイド(美術館部門)【10名】

G ワークショップ【10名】


応募資格(チラシに記載された情報より)

18歳以上で健康な方。ミュージアムとの連絡のためにメールアドレスをお持ちの方。
ミュージアムの事業を理解し応援したいと思っている方。
年に2回以上の活動ができる方。任期は1年で更新可能。」


これまで、ボランティアの存在は知っていたのですが、
改めて募集要項を見てみて、募集種の広さや、
応募者を川崎市民に限定していないことなど、おもしろいなと感じました。

近隣に住んでいるという縁を生かし、
今後もこのミュージアムの活動に注目していきたいと思います。

mio.o

2012年5月17日木曜日

2012.5.13<四大学合同修士論文ワークショップ>

2012年5月13日(日)、慶應義塾大学、静岡文化芸術大学、東京藝術大学、東京大学による四大学合同の修士論文ワークショップを開催しました。当日は東京大学、本郷キャンパスの法文2号館二番大教室で、17名の学生による発表がありました。
終了後は、簡単な懇親会を開催しました。
各大学の特色が出ているところが大変興味深く、学生にとってはとても意義深いワークショップになりました。







2012年5月16日水曜日

インターゼミ感想


皆さん、

こんにちは。M1のMPです。

岡村さん、竹内さん、南雲さん、

ブローグを作って下さって真にありがとうございます。

今回のインターザミの感想については

今年にはインターゼミは東京大学に行って本当に良かっただと思います。
今回のインターゼミにはスッタフに関わりまして、M1同士で準備をしてとても楽しかったです。

いろんな人の発表を聞いてとて勉強になり、また自分の興味と近い人の話を聞いて面白かったです。それから自分の勉強不足もすごく感じました。興味深いことがあて質問しょうと思った時に「なにが質問すればいいかな」という疑問が私の頭に浮かんだ。。。もっと勉強しないといつも頭が混雑に続ける。これから自分の経験と実際の勉強の繋がりについてもっと考える必要があります。

また皆さんの発表を見ながら最初は「自分でそんなに発表することが出来ないな」と思いましたが結局すぐその感じは「私も発表したい」に変わり、それを出来るかどうか分からないが頑張ります。

でもその感じは他の大学のM1の学生にも出ましたから懇親会の時に知り合いの学生と話して結局M1の勉強会をしましょうということを考えてる。

よろしくお願いいたします

ペルシチ・マルコス

インターゼミ感想


インターゼミに参加されたみなさま、お疲れ様でした。
また、今年はホスト校でいろいろ大変だったと思いますが、
M1のみなさま、ありがとうございました。

以下、発表&インターゼミ全体の感想です。

4月に学内で発表した内容とほぼ同じような
構成でしたが、自分が思っているより、
問題意識や研究目的がしっかり伝えられていなかったと反省しました。
それは同時に、自分の中でまだもやもやしていることがそのまま出てしまった
ことの反映でもあると思いました。
土本君とは逆で、問題意識よりも、調べた内容 が大きい比重になってしまい、
単なる「小京都研究」のように捉えられてしまったかもしれないと思いました。
質問タイムにご提案頂きましたが、実は「ブランド論」的な話には
あまり持っていきたくないなと感じました(もちろん参考文献は読みますが)。
どちらかといえば外向けの「ブランド力」よりも、
市民の意識や行動に目を向けていきたいです。
その辺の意識をきちんと整理しなければと思います。
同時に、初見の方にもきちんと意図を伝える事が出来るよう、
表現や文章構成には意識的に気をつけようと思います。

また、今年は昨年より懇親会が充実していて、
いろんな方から研究に対するフィードバックや、
ご自身の研究との類似点などをお話し する機会がありました。
また、昨年のインターゼミで知り合った芸大のM2の方達と
再び交流できて楽しかったです。
松本先生もおっしゃっていましたが、こういった場で積極的に繋がりを増やしていくことの
面白さを改めて感じました。

(sweetfish)

インターゼミ感想

どうも、町並み保存をテーマに発表したpeaceful_hillです。

このたびは貴重な機会を設けていただきありがとうございました。準備をしてくださったM1のみなさんもお疲れ様でした!!
以下、インターゼミに参加しての感想をそこはかとなく書きます。

今回の発表準備をするなかで、いろいろな論点に目移りしてしまっている自分に気付き、修士論文で何が言いたいのかをもう一度冷静に振り返っておく必要があると思いました。「この時期になって何を言う……!」感もありますが、そこがしっかりと固まればその後に続く調査もよどみなく進めていけるのかなと。
また、他の発表者に対するコメントでしたが、先生が「問題意識と研究目的が混同していないか?」とおっしゃっていたのが、私の研究にもそのまま当てはまるように感じ、密かにわなわなしていました。「馬なりの時期は終わった」というお言葉にも、同じく。

さて、自分の発表に対する最大の反省点は、短い発表時間の中に内容を詰め込みすぎたということ。というか、正確にいえば詰め込みきれなくて時間をオーバーしてしまいました。私の研究は、自分自身がどのような認識に立つのかを明らかにすることがまずは大事になると考えているので、いつも研究背景や問題意識の説明に時間がかかってしまうことがちょっとした悩みです。
参加者からいただいたコメントにより、町並み保存の機運が高まった社会的背景を考えるうえで、遺跡保存や公害問題など広く同時代の環境意識を押さえておく、横のつながりを見過ごさないでおくことは大事かなと改めて思いました。

これは完全に余談ですが、ある発表者のイントネーションを聞いてそれっぽいなと思っていたら案の定、名古屋出身の方でした。「なごやん(名古屋人)」の私にはすぐにわかりました。その地域の方言や言葉の感覚を共有していることは、フィールドワークの局面で大きなメリットがあると思っていまして、実は私が事例研究で名古屋市有松を取り上げようとする理由のひとつにも挙げられます。
とにかく、これから事実関係をしっかりと把握し、本格的には夏以降になるかと思いますがフィールドワークを進め、納得できるような論文を書き上げ、さらにそれが自己満足に終わらないようにするためにも学会発表に参加したいです。

(peaceful_hill)

劇場法(仮)に関する情報

この間授業で話があったように、音楽議員連盟から国会に劇場法案が提出されました。
http://www.zenkoubun.jp/gekijyouhou_houan.pdf

それに加えて、今まで劇場法(仮)についてどのような動きがあったのか、まずセゾン文化財団が2010年度を通じて19回開催しました講座について紹介したいと思います。
その講座は、「劇場法(仮称)」について、地域における劇場の役割、演劇教育と劇場の役割、国際交流、公共性についてなど、テーマに応じた講師をお招きして開催したものです。
以下のウェブサイトで「創造型劇場の芸術監督・プロデューサーのための基礎講座」の抄録が公開されているので、ご興味のある方はどうぞ!http://www.saison.or.jp/search_past/search_past_02.html

bangulより

インターゼミに参加してー所感

2012年5月13日開催のインターゼミに参加させて頂き、どうも有り難う御座いました。
私にとって、修士課程そして小林ゼミに入学して初めての複数大学間のワークショップであった今回、皆様の発表や議論から刺激を受けるとともに、改めて自分自身の研究の在り方や方向性について考えさせられる部分が多くありました。

まず、この度御参加頂いた各大学の先生方及び学生の皆様、並びに運営面で中心となって尽力してくれたM1の二人等、関係者の皆様に御礼申し上げます。

以下、具体的に「運営」と「内容」という二点について簡単に所感を述べさせて頂きたいと思います。

<運営>
「ゼミ中の進行」
司会の先生方のイニシアチブの下、発表時間の若干の長短はあれ、機材のトラブルも無く、インターゼミ中の進行を大きな滞り無く進める事が出来て良かったと思います。
一方ハンドアウト等資料については、他大学発表者で用意が済んでいない方が数名いらした他、部数が足りていない方もいらっしゃった様でした。

「懇親会」
事前に懇親会の人数を把握する事が出来なかったため予算が確定せず、飲食物の手配やセッティング、会計計算等で運営の中心となってくれたM1の二人が、あまり発表やディスカッションに集中出来なかったのは、主催校として仕方の無い事とは言え、少し残念だったかもしれません。
参加者は女性が大半でアルコールよりも食べ物やソフトドリンク消費の割合が高かったと言う事は、次回のこうした懇親会準備において考慮すべき点であると思いました。
また、出欠や会計は完全に分担した方が後の混乱が少ない様に感じました。

「その他」
先生/先輩方から全体的にM1の発言が少なかった、という御意見を賜りましたが、知識不足や遠慮以外の理由として、例えば以下が挙げられるかと思います。
・口頭発表内容を補足するパワーポイントやレジュメ(文章ではなく、図、データ、写真等)が充実していないと、その日初めて触れたテーマに関して議論するのが難しい。
→発表側:他者に伝えるための補足資料の充実
→オーディエンス側:ゼミ日前に発表題目のキーワード等から自分の関心を探し、必要があれば簡単に調べてみる


<内容>
内容については、既に発表者の方々がMLに投稿した感想文でも触れられている事を多く感じました。
「テーマ」
・自分の専門分野と違っていても問題提起の方法が参考になり「面白い」と思えるものもあれば、一方で「そもそもその問題提起/テーマ設定は成り立つのだろうか」と疑問に思うものもあった。後者の「主観的な印象等に基づく問題設定」は、とりわけ自分が関与している団体や施設等を研究対象としている場合に起こりやすい様である。
・何度か指摘されていた「研究目的と手法、あるいは仮説と序論的位置付けの物との混同」は、自分自身も常に注意しておかなくてはならないと思った。

「発表」
・内部での発表ではすんなりと入ってくる部分も、公の場では伝わらない場合がある。
・ある課題について初見に近いオーディエンスにどのように関心を持ってもらうかは、論文作成の際も重要な点である。

「とても個人的な印象」
現在私が携えている問題関心を研究する場として考えた際の文化資源の特色を改めて感じました。その内容は以下の2点です。
・各大学間でのテーマ設定、アプローチの仕方が異なる。その中でも東大文化資源(文化経営)は、文化を「利用」「活用」「マネージメント」すると言う側面に比重を置き過ぎず、正に「領域横断的」である事が、今回のインターゼミを通じて改めて客観視出来た。
・社会人学生が半数以上を占めており、実際の現場の視点や経験を博く応用した的確なフィードバックが返ってくる。他大学は発表者であるM2を中心とした参加者構成ではあったのに対し文化資源はDの方もいらっしゃっていたという事を考慮に入れたとしても、実際、今回のインターゼミで質疑応答の中心となったのは文化資源の方々だったという印象がある。私自身も、自分の研究に閉じこもるのではなく広い視野で文化を捉え、貪欲な好奇心を持ってこのフィールドに参加していくべきだと思った。

以上です。
(M.O)

インターゼミの感想

今年初めてインターゼミに参加いたしました。
近代少女雑誌に関する歴史研究の発表をさせていただきました。
コメント等くださったみなさま、色々とお世話をしてくださったM1のみなさま、ありがとうございました。

内容的に、私がこの場で発表を行うのは完全に「他流試合」でしたが、だからこそ、自分の研究の意義や面白さをきちんと伝えるにはどのようにすればよいかということについて考えさせられる機会でした。
結果としては、他大学の方から内容に関してコメントや質問がいくつもいただけたわけではなかったです。他分野視点からのコメントを引き出すまでの発表ができなかったのは悔やまれます。
が、自分の研究の面白さや特色をはっきり打ち出そうとする過程で自分自身がそれを意識すれば、研究のフォーカスが一層クリ アになります。このような視点から自分の研究について考えてみることができたのは大きな収穫でした。

あとは、みなさまの発表を色々聞いて、いま現在進行中のナマなモノを研究することはとても難しいのだなぁという感想をもちました。
現在存在しているものなのに、研究論文にして公表するとなるとすべてをさらけ出して書くことが実はできないというジレンマがあるし、またそもそも、インタ ビューと少ない文章くらいしか資料がないという制約的状況もよくあることのようでした。(このような状況の中で対象を文章としてまとめることは、構成能力 と自己抑制力と配慮の賜だなと思いました。)
以上のことを考えると、プログラム・企画等の実践者も積極的に記録をとりかつそれをこまめに発信していければ、研究者にとっては資料が増えることになるし、実践者にとっても有益な記録が蓄積されていくことになって良いのではないかと思いました。
実際に働いている方々から「そんな暇はない」と言われるようなことを書いているのは分かっていますが、「まだ実践を仕事としていない、実践者になりたい者」としては、そのような意識ももっていきたいと思いました。
(竹)

2012年5月15日火曜日

地域・アート事業・文化政策:最初の情報収集

地域でアート事業や文化政策に関わる仕事をすることになったとき…

たとえば、
・新しくその町の文化施設の職員になった
・巡回公演で訪れたまちで市民参加ワークショップをやることになった
・縁あってその町でアートプロジェクトを企画することになった
・公務員生活○年目にして、新たに文化行政担当部署に配属になった
・その町の文化活動を研究対象に論文を書くことになった

こういうとき、まず、その地域について、どんな情報が必要でしょうか?
ケースバイケースで関心も様々だと思いますが、
自分だったら最初の情報収集ではこんなことを調べるな、という方法を
以下、いくつか挙げてみます。

最初の情報収集なので、インターネットベースで誰でもできるものを紹介しますね。

---
●まず、自治体のホームページに行く
・人口・面積・地図を確認する
↑地図では特に、鉄道と幹線道路、地形、官庁街や繁華街の位置などから、
どの辺が人が集まる地域の中心エリアか、あたりをつけてみます。
・その町への主要交通手段を確認する
↑近くの都市からの交通手段と所要時間もみてみます。
・そのほか、ホームページに掲載されている
「概要」「紹介」「観光案内」「歴史」といったカテゴリもチェックする
↑ネットサーフィンしながら気になったキーワードを拾って検索すると、
さらに詳しい情報を得ることができます。
<キーワードの例>
文化施設やミュージアムの名前、イベントの名前、名産品、文化財、などの固有名詞
↑自治体HP内検索と通常の検索、それぞれやってみると面白いです。
・公立の文化施設やミュージアムの活動をチェックする
↑独自のホームページにリンクが貼ってあることも多いです。
・市町村合併の歴史を確認する
↑合併前の自治体のウェブサイトが別途アーカイブで残してある場合もあります。

●自治体ホームページでさらに詳しい情報がほしいとき
・「市勢要覧」「統計要覧」「市税概要」も見てみます。
↑産業、人口分布、税収などがわかります。 
・行政とかかわる場合は、「例規集」を開いて、文化や芸術に関する条例がないかも調べてみます。
・ある程度雰囲気がつかめてから、漏れがないか確認するために、自治体ウェブサイト内検索で
「文化」とか「アート」とか、キーワードを入れて検索します。
↑最初からいきなりこれをやると情報が多くて結構大変なので要注意です。
・自治体のホームページ以外に、ウィキペディアも最初のきっかけには便利です。
(ただし、掲載されている情報の出典を確認してから使います)

●最近のニュースをみてみる
・yahoo!ニュースなどのニュースポータルサイトで、町の名前を入れて記事を検索してみます。
↑ニュースの内容に加えて、ニュース提供元もチェックして、なるべく地元のメディアを探します。
・新聞社のウェブサイトで、町の名前を入れて記事を検索してみます。
↑地元新聞社のウェブサイトで検索すると、より細かい情報が出ていたりします。
・可能なら図書館等で使える検索サービスで数年分まとめて検索してみると、かなり雰囲気がつかめます。
↑量が多くてたいへんな時は、見出しを流し読むだけでも参考になります。
気になるものはもちろん中身もチェックします。

●画像検索・動画検索をしてみる
・google画像やYouTubeで、自治体名を入れて検索します。
↑検索の精度は荒いですが、風景、街並み、名産品など、
「山が多い」「雪深い」など、ざっくり雰囲気をつかむことができます。

●検索のコツ
・google,yahoo,bing・・・検索サイトを変えて検索すると、違う情報に出会えることがあります。
・「○○市」「▽▽町」など、市区町村までつけて検索します。
(でないと、「銀座」とか「中町」とか、全国各地からヒットして大変です)
・上記の調査の過程で、その地域の情報を発信している個人ブロガーがいたら要チェックです。

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・・・以上、はじめての数時間でできる情報収集の方法をピックアップしてみました。
もちろんこれだけがすべてではないので、ほかの方法をご存知の方は教えてください。
なお、あくまでネット経由の間接的な情報<現地の生の情報であることはお忘れなく!

(mihousagi_n)