ただいま『マネキン人形論』という芝居より帰宅しました。
演劇が好きでちょこちょこ見に行く毎日、中でもポーランド演劇を専門にしようということで、関連する舞台にはなるべく足を運んでいます(とはいっても東京近辺に限りますし、まだ字幕なしでは歯が立たない状態ですが)。今日はそこから気づいたことを。
乱暴に言ってしまえば、日本の演劇(=日本で観ることのできる演劇)で描かれるポーランド像には、かなりの確率でユダヤ人問題が関係するということです。当然のことながら、観客にズシリと響く重苦しい舞台になる場合が多い!
この前の読売演劇大賞を受賞した文学座の『NASZA KLASA』は実際に起こったポーランド人によるユダヤ人虐殺事件を描いたもの。本日観た作品もポーランドの作家・画家ブルーノ・シュルツ(1892-1942)の短編をモチーフにしていました。彼はユダヤ系でありナチスに射殺されるという最期を迎えましたから、その作品から現代の演劇人が全体主義に関する考察を導き出すのは自然な流れかもしれません。
上記二作はポーランドの作品ですが、他にも去年観た『第三世代』 は東西ドイツ・パレスチナ・ユダヤを出自に持つ役者が実名で舞台に上がり、ホロコーストや中東戦争について論議するという内容、「ポーランドの人間は私たちユダヤ人に最大限の敬意を持って接してもいいはずだ」というような台詞が出てきました。また日本の劇団による『あの記憶の記録』はホロコーストを生き延びた「ポーランド南部、クラコフ近郊の村出身」の兄弟を軸にした作品でした。
人のことはいえませんが、「ポーランドといえば?」と聞かれたら、多くの人がショパンやキュリー夫人と答えるのではないでしょうか?でもそれ以上に歴史の時間でアウシュビッツ(ポーランド名はオシフィエンチム)について学ばなかった人などいません。
ポーランド文学(というより中東欧文学)におけるユダヤ人、これはあまりに大きな、そして現代的なテーマであり、実は私が籍を置く文学部の研究室ではよく聞きます。日本におけるポーランド演劇の紹介も、これと無関係ではないんだろうなあと思いつつ、「他にはどんな作品があるんだろう?」とますます気になり始めているこの頃。
というわけで、再来月静岡に来日する"Utwór o Matce i Ojczyźnie" は紹介文を見たところ、どうやら様子が違うみたいなので今からワクワクです!←これが言いたかっただけ
ちなみに、
「芝居を専門にしてます」と自己紹介すると相手から「カントールが有名ですね」というような返答が帰ってきます。『死の教室』を映像でしか見てない私の貧弱なイメージでいうのもなんですが、「演劇は基本的に言語芸術」(イギリス演劇研究者・喜志哲雄先生の受け売り)と考える私にとって、実は役者の身体性を前面に押し出した舞台はやや苦手です…。
(N.N.)
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