2015年2月27日金曜日

切り刻んだ布は花びらになって

2月22日「大町冬期芸術大学第1期生成果発表パフォーマンス」を終えて、数日が経ちました。

むしろ、数日しか経っていないことが驚きです。

当日どれほど熱気がこもり、大盛況だったかは
以前のAIさん・RAEさんのブログを読んでいただければと思います。


地元アーティストと市民による公民館の装飾
地場野菜を使った手料理
プロ指導による市民の手作りの衣装
プロ演出による市民によるコンテンポラリーダンス

文字のうえだけだと、いわゆる「アートプロジェクト」と変わらなく見えます。
一定の専門家の力や名前を背景にしたものであって、一定の成功が約束されていて当然のように見えます。
それは今や、あぶくのように消費されてしまうブームの一つかも知れなくて、
そのような「地域おこし」にも「芸術振興」にも批判的な視線を投げかけられるかもしれません。
そういった鋭い指摘やコメントがなされることは重要なことなのだろう、とは理解しています。

でも

雨の日も雪の日も遅い時間も準備に通い詰めたひとたちを知っています。

誰かから断られても叱られてもめげなかったひとたちを知っています。

まったくやったことのないことに初めて踏み切ったひとや

他の大事な予定をパスしてこの日に賭けたひとや

どうすればいいかわからなくてもとにかく取り組んだ人を知っています。

「こうしよう」というストーリーがぼんやりとあったとしても結局実現するのは生きている人間です。

わたしたち小林ゼミ生はプロジェクトを通して、そんな人たちを見つめ続けることができました。
少しでも、役に立ちたくて、這いつくばったり走ったり闘ったり喚いたりしました。

どんなことでもいいから「やった人」でなければ分からない、言えないことがあると思います。
そして「やりつづけるため」の仕組みをつくる準備とともに、大町市は脱皮し始めています。

2月22日、大町市は確実に「やった」。どんな誰にもそれは覆せない事実です。

(pugrin)

2015年2月25日水曜日

Yes, I'm dapping! 当日レポート

ゼミ生のAlです。

冬期芸術大学成果発表のお手伝いのために、大町にやってきました!本番当日はとてもいい天気でした。 春並みの暖かさだったそうです。これでお客さんもたくさん来てくださるのではないかなと、期待していました。

午後に平公民館に着いた時、正面玄関にある託児室は可愛らしく飾られていて、まるで子供の遊園地のようになってました。舞台になっている講堂を覗いてみると、舞台はすでに完成していました。天井から釣っているちょっと変わった形のオブジェ、塩で積んだ小さな山々は青いライトに照らされていて、会場は不思議な雰囲気が漂っています。こんな素敵な舞台で一体どんなパフォーマンスを見せるのか、興奮していました。

一方、その時こたつカフェの作業も着々進んでいました。今回出される料理はびっくりするくらいに豊富です。飲み物のほか、暖かい豚汁、五種類のディップ、オリジナルのパイ、チーズケーキなど、企画プロデュースコースのみなさんの心を込めた料理がいっぱいです。こんな料理を茶室に設置されたこたつで召し上がったことで、きっと体と心は一層温まったことでしょう。

開演時間に近づくとパフォーマーがリハーサルをし始め、スタッフも全力で臨もう!とい気持ちを抱えて、待機していました。開場の17時の前から、お客さんが続々と入場

し、こたつカフェは大盛況でした。お客さんが食事しているところで、パフォーマーが会場を回ったり、座布団を使ってパフォーミングをしたりして、開演前の会場の雰囲気を盛り上げてくださいました。

開演前、予想を上回る人数が来てくださって、スタッフは嬉しく思う反面、席が空いているかどうかを心配していました。(結局、立ち見をしていただくことにもなってしまいましたが)来場したお客さん皆さんにパフォーマンスを楽しんでいただけたらと思っていたからです。 

いよいよ本番が始まりました。私は開演間もなく、音楽と舞台とパフォーマーが一体となったこの独特な世界に夢中しになってしまいました。パフォーマーが身体を限界まで使っ
て、動くことは、なんて美しいんだろうと思ってしまいました。このパフォーマンスで、私は一番印象に残ったのは追いかけている男女のダンスと話し合っても会話がずれている二人の芝居でした。現実の社会では、人と人の付き合いはこのようにすれ違ったり、傷付けたりして生きていくものかもしれません。しかし、最後はみんながカラフルな特製の服を着て、まるでこんな黒白の世界に色付けているように見えました。「みんなが力を合わせれば、変えられる」、「個性を持っている人たちでも理解し合って生きていける」と訴えるように、感動を与えました。

こんな短時間でこんなに素敵なパフォーマンスができたとは、本当に感動しました。企画プロデュースコース、ファッションコース、空間美術コース、パフォーマンスの皆さんが協力し合って、ここまでやれたのだと思います。


ちなみに申しますと、なんと見込み以上の250人が来場していたという朗報がありました!

では、以下はRaeによる本番終了の報告です。

ゼミ生のRaeです。

とうとう、本番が終わりました!


本番が終わってからは、皆で片付け&大掃除。その後公民館内では打ち上げが行われ、企画
プロデュースコースの皆様が作ってくださった美味しいお料理が振舞われました。そこではお料理を堪能しつつも講師と参加者の皆さんからの感想をじっくりと伺う時間が設けられました。残念ながら時間の都合上、全員の感想を伺うことは難しかったものの、「おおまちでもこんなすごい人たちがいて、凄いことをやれるんだ」という意見や「皆の時間をもらって出来た舞台で、リハーサルや本番では感動して泣けてきた」「これからも芸術大学が続いて欲しいし、参加していきたい」という意見が私個人にとっては印象的でした。

一期生というのは常に手探りの状態ですし、そこでほとんど全員がアマチュアのメンバーで、ただでさえ「衝突」が起きがちな総合芸術をやる!というのはかなりの困難を伴ったことと思います。
そんな中で終演後、皆さんの達成感に満ち溢れた表情を見ているとこちらも幸せになりました。
二年目は何が起きるのでしょう? また違ったメンバー、違った企画で「衝突」が起きるのが楽しみです。

2015年2月24日火曜日

今日、大学構内で桃(?)の花が咲いているのを見つけました

Paweł Pawlikowski監督の『イーダ』が今年度のアカデミー外国語映画賞を受賞しました。この項目でポーランドの作品がオスカーを獲得することは史上初です。二年前、渋谷で行われた映画祭で観たときから夢中になった作品なので、今回の受賞はとても嬉しいです。
物語は1960年代、社会主義政権下のポーランド。修道院に暮らすアンナは修道女としての誓いを立てる前に、唯一の肉親である叔母ヴァンダを訪ねることになる。ヴァンダは姪に会うなり、彼女の本当の名はイーダであり、ホロコーストを生き延びたユダヤ人であることを告げる。そこから二人は過去を探る旅に出る…という感じの白黒映画です。同じく修道女を中心人物に据え、何より白黒の映像美が印象的であることからJerzy Kawalerowiczの『尼僧ヨアンナ』(1961)を思い出します。
国外では何十もの賞に輝き、国内でも概ね好評の本作ですが、扱う内容が内容なだけに一部では議論を呼んでいます。その際、問題になるのがホロコーストの描き方です。ネタバレになるためあまり詳しくは書きませんが、本作にはポーランド人しか出てきません。すなわちホロコーストの中で(ナチスドイツではなく)ポーランド人がどう行動したかに焦点が当てられており、歴史の古傷をえぐる作品でもあります。本作をアメリカで上映する際には、「ユダヤ人をナチスから救おうとしたポーランド人も第二次大戦時に沢山いた」という但し書きを本編前に流すよう求める署名が2万人分集まったという話も聞きました(記事)。
また、今回の国際的なヒットに関し、ポーランド映画はホロコーストを扱わなければこれほどまでに海外の関心を集めないのではないかといった意見も。『イーダ』はアカデミー撮影賞にもノミネートされたように、話だけが評価対象になったわけではありませんが、この指摘には考えさせられました。ホロコーストが20世紀史の中で最も激烈な出来事の一つであることはもちろんですが、その他のポーランド史、そしてそれを題材にした作品は国外に伝わりにくい気がします。
昨年こちらで話題になり、オスカー候補として推薦されるのではないかとも言われたJan Komasa監督の“Miasto 44”という作品があります。1944年に起きたワルシャワ蜂起の激戦を生きた若者たちが主人公です。首都が燼灰に帰した出来事を33歳の監督がどう扱うのかに注目が集まりました。こちらは蜂起についての基礎知識、そして何より現代ポーランドにおけるこの蜂起の意味といった背景を踏まえてはじめて楽しめる作品となっています。要は国外には「ウケにくい」ということです(個人的にこの監督には大いに注目しています)。
普遍性がすべてだとは思いません。しかし、この国では自分たちの歴史をどうやって芸術と繋ぎ、多くの人に届けるべきか格闘してきた人が多いのも事実です。ホロコースト表象をめぐる問題も昨今始まったわけではなく、『イーダ』のそれも予想外ではありません。ただ今回の映画は国内外で反響が大きかっただけに、それに対する疑問の声も多くなったということでしょう。どんなに優れた作品でも歴史のすべてを描くことはできないし、ましてや「正しい歴史表象」を義務付けるような考えはお門違いだと思います。ただ現実には、世界中の人がポーランド史に触れる機会は少なく、それこそアカデミー賞を受賞するような映画を通して初めて知ることもある。ここら辺はもはや映画制作者の手に負えるような規模の問題ではありません。

(N.N.)

2015年2月19日木曜日

大町冬季芸術大学第1回成果発表会が近づいています!

2月22日に迫った大町市成果発表会。pugrinです。

17日に行われたリハーサル風景の写真を少しおとどけします。

 これがファッションコースで制作している衣装です。
どんなふうに使われるのでしょうか・・・


キムさんの振りをどんどんつけていくパフォーマンスコース受講生。
会場の平公民館はすでにステージがリノリウム貼りになっています。


立ち姿も様になってきていますね。
吊るされているのは空間コース受講生が制作した舞台美術作品です。



キムさんの檄が飛ぶ!


空間美術コースはこちらのお部屋も全面的に装飾中…


講師陣と長野三光さん(ステージ制作会社)の打ち合わせ風景。

リハーサル後は演出について全員が納得するまで話し合います。


週末に本番を控え、準備も大詰め!
入場料は無料ですが、どんなお客さんが来てくださるのかドキドキして待っていますので、
みなさまよろしければぜひお誘いあわせ・ご予約の上いらしてください!!



以下、Facebookの「大町冬季芸術大学」ページから抜粋。
(いいね!をおねがいします^^)
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〜少し未来へ〜と、題し。。...
テーマは『思い出の服』を使って…
『脱皮』『過去から未来へ』を身体表現と衣装制作、空間美術の技術を使って彩ります。そして『建物』全体をパフォーマンスとしてプロデュースしていきます!

当日はコタツ併用のCafeが憩いの場に✨

地元の皆さまを中心に沢山の お客様のご来場をお待ちしております!

どうぞ 宜しくお願いいたします。
http://www.city.omachi.nagano.jp/00025000/00025100/00025109_2_2.html

尚、同日開催の
第5回市民参加と協働のまちづくりフォーラム
〜ずく出せ大町 みんなが主役〜
映画上映『ふるさとがえり』+ミニワークショップ!
日時:2月22日(日)PM13:05 start
場所:サンアルプス大町 2F 大会議室
要申し込み。参加費無料

お問い合わせ お申し込み:大町市市民活動サポートセンター
TEL 0261-22-0420(代表)まで。

2015年2月10日火曜日

地域文化政策における文化振興の担い手に関する研究会を開催します。

「地域文化政策における文化振興の担い手」に関する研究会を開催します。

日時:223日(月)、224日(火)両日ともに13201800
場所:武蔵野プレイス・スペースCJR中央線武蔵境駅南口駅前)東京都武蔵野市境南町218
主催:科研費基盤研究(B)「地域文化政策における「新しい公共」の担い手の環境整備に関する研究」(代表:東京大学・小林真理)
申し込み:(参加を締め切らせていただきました)

趣旨:日本において「文化政策」という言葉が国や地方自治体で使用されるようになったのは2000年代に入ってからのことです。全国の地方自治体において文化振興のための条例を制定しているのは160あまりにとどまっていますが、その内容は、生涯学習活動と変わらない市民文化活動の支援から、芸術振興を視野にいれたもの、さらには都市の魅力の発信や産業の育成を視野に入れた創造都市論の実践等、様々です。文化と一口にいっても目指すべき方向性により、文化政策の実践を具体的に担う組織の形態は様々でです。文化政策の担い手はどのような組織であることが望ましいのか、地方自治体との関係はどのように構築されるべきなのか。二日間にわたって、これらの課題について抽出したいと考えています。
223日(月):地域文化政策における「財団」の役割と将来の課題
第一部:地域文化政策とこれまでの「財団」、その問題点(自治体との関係、役割分担等):お一人15分程度の問題提起の後にディスカッション
                司会:曽田修司
  高崎市文化スポーツ振興財団 神宮理さん
  須坂市文化振興事業団 小林宇壱さん
  浜松市文化振興財団 村瀬正己さん
  京都市音楽芸術文化振興財団 宮崎刀史紀さん
第二部:地域文化政策における望ましい組織形態:お一人15分程度の問題提起の後にディスカッション
              司会:阪本崇、藤野一夫
  東京都歴史文化財団における文化発信プロジェクト 佐藤李青さん
  アーツ前橋:地域における新たな美術館の役割を担う組織とは 住友文彦さん
  横浜市文化観光局文化課 鬼木和浩さん
224日(火):地域文化政策におけるNPOや芸術団体の役割と将来の課題
第一部:地域文化政策とNPO、その問題点(自治体との関係):お一人15分程度の問題提起の後にディスカッション
              司会:友岡邦之
  小金井アートフルアクション!(小金井市芸術文化振興計画の実施主体):宮下美穂さん(事務局長)
  座・高円寺(公立劇場の運営・指定管理者):桑谷哲男さん(館長)
NPOたけとよ(公立文化施設の授業運営・委託):高橋洋子さん(事務局長)
一般社団法人Torindo(赤煉瓦倉庫の事業運営):森真理子さん・豊平豪さん
まち映画制作事務所(映画制作を活用したコミュニティ再生事業):藤橋誠さん
第二部:NPOが地域文化政策の担い手になるためには(ディスカッション)
                司会 伊藤裕夫

(小林 真理)




2015年2月6日金曜日

北陸新幹線は加賀に行くから

「かがやき」っていうそうです。
口頭試問を間近に控えたpugrinです。

これからは乗り換えなしで帰省できて便利だなあ、と思う反面
終着駅へとひた走る超特急は途中停車駅に何をしてくれるのかと危惧する今日この頃。

3月末にはこのようなイベントが催されます。
http://enjin01-toyama.jp/

「エンジン01」なる分野横断的有識者のボランティア集団が行う一連の講座
「文化戦略会議オープンカレッジIN富山」だそうです。

冒頭のように「北陸新幹線は富山を幸せにするのか?」や
文化政策イシュー的な「「プロフェッショナルかアマチュアか」、
昨年度文化資源学フォーラムでも扱った「日本酒の話をしよう」など、
講座のタイトルはどれも刺激的で、かなりの著名人の講義が受けられます。

そう考えると私自身やゼミで扱っている事柄をギュッと凝縮したこの企画、
どうやって運営しているのか、エンジン01が何者なのか、ますます気になります。

HPでは相当に有名(かつ財力や人脈のある人)が関わっていることや
理念や提言はかなり明確であることは分かるものの、
設立経緯や事業体としての裏付けのようなものは見えてきません。

果たしてこの「ボランティア集団」は何を根拠に、そしてどのようにして活動しているのか?
挑戦的とも見えるこれらの講座は質実剛健な富山県人にどのような効果を及ぼしうるのか?

加賀へ向かう新幹線の到来とともに、妙な春一番が吹いてきそうな風向きです。