先日、世田谷美術館にて教育普及系学芸員が4名集まったシンポジウムに行ってきまして、その感想を書きます。まず、以下に概要をコピーしておきます。
ボランティア・シンポジウム「誰かと一緒に作品を見るということ~対話を介する美術鑑賞について」
多くの美術館ではボランティアによる対話を介する美術鑑賞を取り入れています。「誰かと一緒に作品を見る」ことはどういうことか検証します。
日時:10月8日(月・祝) 午後1時30分開場、午後2時開演
出演:一條彰子(東京国立近代美術館主任研究員)
郷泰典(東京都現代美術館教育普及担当学芸員)
森山純子(水戸芸術館現代美術センター教育プログラムコーディネーター)
モデレーター:東谷千恵子(世田谷美術館主任学芸員)
高橋直裕(世田谷美術館教育普及課長)
会場:世田谷美術館講堂
定員:当日先着150名 ※当日午前10時より整理券を配布
参加料:無料
朝一番に整理券をもらいに行ったのに、私の番号は60番台。この日は世田谷区制80周年記念で無料入館日だったとはいえ、すごいペースで整理券がはけていったようです。
内容は、学芸員さんたちがまず各々の活動を紹介した後、会場からの質問への回答も交えながら各々の活動のポイントをまとめてくださいました。
感想は以下です。まず、前提となる用語から説明しつついきます。
「VTC(Visual Thinking Curriculum)」は、1980年代にMoMAで開発された美術鑑賞の方法です。その開発に携わったアメリア・アレナス氏が「対話式」鑑賞としてVTC的な方法を日本に紹介すると、日本の美術館における鑑賞プログラムに大きな衝撃を与えました。
「美術作品を見て考える力をつけると、生徒の学力や社会的なスキルも向上するというハーバード大学による研究結果もあり、世界各地で行われるようになりました。」と、岡山県美のサイトにもあります。
今まで「美術館では喋っちゃいけません」なんて言われていたので、対話式が影響力をもったのは当然です。図工・美術の学習指導要領にも、「鑑賞」が要素として入り、「学校と美術館は連携すること」なんて書かれるようになって、先生たちは「カタクルシイ」美術館に子どもを連れて行ったりしなければならない。そのような中で、楽しみながら、考えながら美術鑑賞ができる可能性をもつ新しい方法として注目されたわけです。
当然、日本の美術館は自館のプログラムを実行するにあたって、対話式を意識せざるを得ない状況になっていて、それが今回のシンポジウムのタイトルにもにじみ出ているし、話の内容も質問の内容もそのような要素が必然的に入ってきました。
日本の美術館でも色々な世代・来館者層に対してプログラムを行っていますが、対話式を無批判に受け入れて実行することは片手落ちです。「都会」にあるMoMAと日本の地方では来館者層や美術館の浸透度は違うし、館によって方針も様々です。また、まだまだ美術館は敷居が高いと感じている人が多い日本では、「まずは初めての美術館を楽しんでもらう」などのプログラムには、対話式はちょっとハードルが高いでしょう。今回参加していた4館は対話式を参考にしながらも、各館の方針・個性に合わせてアレンジしたり無視したり(笑)していました。これもまた館によって違って面白かったのですが、こういうことを考えていくことが館の「教育普及」の個性になっていくし、実践者には必要になってくることなのだと思いました。
いやぁ、「現代美術は難しい」イメージ、そろそろ払拭にかかりたいもんですなぁ。
まだ話せますが(笑)長くなってきたので、この辺で。
このとき、各館のプログラムをまとめたキレイな冊子群を資料としていただいたので、もし見たいゼミメンバーがいれば私までご連絡くださいませ。
(竹)
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