さる1月26日は「多主体共働・共生のまちづくり 少子高齢・人口減少社会における持続可能な社会形成にむけて」というテーマによる工学部のまちづくり研究室教授の小泉秀樹先生の講義を小林ゼミ生数名で聴講してきました。
小泉先生のアプロ―チは工学系なので、ハード面の要素が強いですが、「ハードとソフトは一体で考えなければいけない」という考えのもと、小泉先生が関わった東日本大震災の被災地である陸前高田の仮設住宅のコミュニティ・デザインの事例が紹介されました。仮設住宅に路地的なスペースやコモンスペースを設けることや、全体として地域を見守る体制づくりとして「商業者組合」「連合自治会」「サポートセンター(メンタルケアもふくむ)」による見守りの輪を形成し、いかに高齢者や子どもや失業者家庭を包摂していく仕組みを作り上げていったかが語られました。音楽ホールもなくなってしまった地域のなかでは「りくカフェ」が拠点となり、イベントが開催されるなど、復興とは何かを模索しながら、ゼロからの地域再生をめざした足取りが紹介されました。
もうひとつの事例は「次世代郊外まちづくり」として、急増していく高齢者と郊外離れしていく若い世代という問題を抱えた、たまプラーザ駅北側地区をモデルに「地域住民」「横浜市」「東急電鉄」「大学」「民間プランナー」の連携によって郊外を住みながら働けるところに変えていく地域再生が紹介されました。
家に帰って先日の大町市のビジョン策定委員の昭和電工の傘木さん、市野屋酒店の福島さんへのインタビューを読んで、改めて大町市の地元企業がまちづくりに参画することの意義や可能性ついてもっと考えなくてはいけないなと思いました。ある意味、昭和電工の農業用水や生活用水、防火用水の地域への供給など小泉先生のいったこれからの企業の地域貢献の先行例と考えられなくもないわけです。
戻りまして、さらにTさんの質問②では、コンパクトシティ的な中心性もなく、大町市には人が集まりにくい現状があり、すでにハードとしての施設は分散してしまっている。それに対してどうしたらいいのか?という問いに対し、すでに「コンパクトシティ」という発想は、中心にハードを集中させることに社会コストがかかりすぎることから工学系の世界ではすでに死語と化しており(!)、地域をよく見てプラス要素を探ることや、エリアごとの特性を見極めることが大事であること、大町市の問題はむしろハード面よりも「コミュニティそのものの問題」であるようなので、今までにないような活動で新しいコミュニティを形成し、古いコミュニティに刺激を与えていくことが大事といった指摘をいただきました。まさにそれは今年度行った「冬期芸術大学」や「文化資源策定ビジョン策定委員会」の組織、市民文化会議の開催がその役割を果たしているのだと、合点がいきました。
この講座を受けて、アプローチの仕方は違えども、すでに行政の役割は「コーディネーター」であり、市民や企業との連携なしには地域の活性化は進まないという認識は一緒だと痛感しました。そして、そのなかでも「文化」の役割に重点を置いている小林ゼミの特徴について他学部のアプローチとの比較でこそ見えてくるものがあった気がします。
自分自身のなかにはどこか「ある程度ハードが変わらないと機能は変わらないのでは?」というハード信仰が少なからずあったのですが、むしろハードが得意の工学部の先生からハードよりも「コミュニティそのものの問題」の解決に目を向けることを示唆され、目からウロコでした。そして、そのような「コミュニティそのものの問題」を「文化」でいかに解いていくのか。「大町でそれができなかったら地方の再生はない」と言い切った小林先生の言葉が思い出されます。大町市プロジェクトの意義の大きさを改めて思いました。
※当日のレジュメを何部かいただいてきたので、1月28日のゼミに持っていきます。興味のある方は是非ご覧ください。
(Mube)
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